過去10年間で、中国のいわゆるBAXT企業(百度、アリババ、小米、テンセント)は、米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)各社とともに、数多くの産業、とりわけテクノロジー、メディア、金融、消費者関連の各分野に変革をもたらしてきた。
これらの産業の既存企業の中には、その変革が瞬く間に起きたように感じた企業もあった。従来型の小売業者、銀行、メディア企業を揺るがした急激な変革こそ、確立されたブランドにとって最大の脅威だと考えがちだ。実際には、はるかに目立たず、緩やかな形の変革のほうが一般的であり、より巧妙に進行する。
炭素政策によって消費行動が徐々に変化しているエネルギー・公益事業分野を考えてみよう。社会の潮流により自動車を所有する需要が弱まっている自動車分野もある。通信分野では、音声サービスの収益が長期にわたって緩やかに減少している。
いずれの場合も、この「圧縮型ディスラプション」は、気づかれないうちに中核的なビジネスモデルを蝕んできた。その影響は壊滅的になりうる。多くの場合、「空洞化した成長」として表れる。売上高は堅調、あるいは極めて好調に伸びている一方で、利益率が低下し始め、新たな機会への投資に必要な資源が企業から失われる。うまく課題に対応している産業もある。世界の自動車産業では近年、売上高が伸びる一方、利益は横ばいとなっている。それでも業界の大半は、電気自動車、ライドシェアなどのイノベーションを積極的に試している。
しかし、資産集約型産業の多くの企業は、目に見える突然の変革の影響を受けないと考えたことで、自らを危険にさらしてきた。その思い込みが誤った安心感を生み、圧縮型ディスラプションによる緩やかな圧力への意識を薄れさせた。一見すると、安定という要塞は守られているように見える。参入障壁は高い。しかし脅威は数十年をかけて進行し、平均的なCEOの在任期間をはるかに超える。経営者が中核事業への段階的な攻勢に気づいても、通常はそこに固執し続ける。顧客にサービスを提供し、リーダーシップを確立し、長期投資を行ってきた場所が、まさにその事業だからだ。
企業は新しい分野を目指して競争するために、中核事業を捨てるべきなのだろうか。決してそうではない。新たな機会へうまく軸足を移す企業は、既存事業に閉じ込められた価値を見いだし、それを活性化する。その事業を成長させ、新市場の価値を解き放つために必要な投資余力を生み出す。意図を持って慎重に移行を進め、適切な時期を見極めて新しい分野へと転換する。
当社の最新のデジタル・インデックス調査は、中国企業450社を対象に、中国情報化・工業化融合サービス連盟(CASIII)と共同で実施した。そこから、世界各地の他の市場で確認されたものと同様の傾向が明らかになった。調査対象となった中国企業のうち、新たな事業活動から収益の大部分を得る段階へと移行を加速させた企業はわずか7%だった。こうした「ローテーション・チャンピオン」は、事業に閉じ込められた価値を解き放つことに成功している理由を説明する、二つの重要な特性を備えている。

第一に、デジタル技術を活用してインテリジェントなオペレーションを構築している。マーケティング・チャネル、人事機能、財務システムのデジタル化などがその例だ。また、インテリジェントなコネクテッド技術を導入し、製造オペレーションをスマートで機動的なものにしている企業もある。
中国のローテーション・チャンピオンは、まったく新しいビジネスモデルの創出や新市場の開拓を通じて、デジタル・イノベーションも推進している。目標達成を加速させるために新事業を立ち上げる。そして、まったく新しい製品やサービスを生み出し、デジタル技術を活用して両者を統合し、独自の顧客体験を提供する。
変化を促す要因はテクノロジーだけではない。消費者の新たな期待や社会の意識が、価値創造のあり方を再定義している。
「ニュー・チャンピオン年次総会2018」で、世界経済フォーラムは、第四次産業革命がより包摂的で、社会のニーズに配慮したものとなるよう企業に呼びかけている。人々に安全な身分証明の手段を提供して正規経済への参加を促すブロックチェーンの活用、視覚障害者が地域社会と関わるのを助ける画像認識、遠隔地の食料供給網を改善するAIなど、デジタル技術はすでに、世界の人々の暮らしや働き方を改善するうえで重要な役割を果たしている。
従来の事業を脅かすイノベーションを企業が受け入れるのが早ければ早いほど、自社市場で変革を起こす側に回るのも早くなる。イノベーションに注力するほど、株主とより広い社会の双方のニーズに応える価値を創造する力も高まる。



