世界がまだ大きく隔たっているのは、ユニバーサル・ベーシックインカム、つまり地球上のすべての人が、生きているというだけで一定額の給与を受け取る社会福祉制度の実現だ。
しかし支持者によれば、米国は今年、重要な節目に到達する見通しだ。2018年は、ベーシックインカムが政治の主流になる年になりそうだ。
「2018年には、州や市のレベルに焦点を当てた具体的なベーシックインカム案が提出されるでしょう」と、サンフランシスコを拠点とするベーシックインカム専門家のジム・ピュー氏はBusiness Insiderに語った。
ベーシックインカムが主流になりつつある
世界各地の都市や国では、約12件の実験が進行中、または計画段階にある。ベーシックインカムのさまざまな形が、ケニア、フィンランド、カナダ、カリフォルニアで実施されており、近くスコットランド、インド、オランダでも始まる可能性がある。
誰もが最低限の所得を得られるようにすれば、人々が健康で豊かな生活を送れるよう政府が支援できる、というのがこの考え方だ。
経済学者やテクノロジー分野の専門家の中には、ロボットが社会を動かす未来を予想し、失業率が高まる状況で、失われた賃金を補う可能性があるとして、この考えを支持する人もいる。機械に仕事を奪われても、新しい仕事を探す間にベーシックインカムが貧困への転落を防いでくれると考えている。
2017年7月、ハワイ州下院議員のクリス・リー氏は、法案を提出した。州内でベーシックインカムを調査するための法案だ。その3カ月後、カリフォルニア州ストックトン市のマイケル・タブス市長は、発表した。2012年に米国で初めて破産を申請した同市で、ベーシックインカムの調査を始める計画だ。この2人に加え、バラク・オバマ氏やヒラリー・クリントン氏も、この考えに関心を寄せた政治家に名を連ねる。
「今、ベーシックインカムについて人々と話すと、選挙で選ばれた公職者を含め、ほぼ全員がその概念を知っています」と、支援団体ユニバーサル・インカム・プロジェクトの共同創設者であるピュー氏はBusiness Insiderに語った。
ベーシックインカムが政治課題に
ピュー氏や、Business Insiderが話を聞いたほかの少数の専門家は、2018年にベーシックインカムがより政治の主流に近い考えになると予測している。
「覚えておいてほしいのは、ベーシックインカムはひとつの考え方ではないということです。思考の方向性なのです」と、オランダの歴史家でベーシックインカムの提唱者でもあるルトガー・ブレグマン氏はBusiness Insiderに語った。「資格を得るための一定の障壁を取り除くなど、さまざまな方法で、現在の福祉国家をベーシックインカムに近づけることができます」と同氏は述べた。「そして、その方向性を支持する政治家は大勢います。主に左派ですが。」
スタートアップ支援組織Yコンビネーターの社長、サム・アルトマン氏は、同社のオークランドでの実験の第2段階が今年後半に始まるものの、UBIの進展は依然として遅いと述べた。
「関心は今後も高まると思います。今年、政策面で目に見える進展があるとは思いません」と同氏は語った。「しかし、この考えは共産主義とは異なる良い形で人々の意識に浸透していて、徐々に受け入れる人が増えていると思います。」
作家でベーシックインカムの提唱者でもあるスコット・サンテンス氏は、より楽観的だった。2018年に期待を寄せる理由として、ストックトン、スコットランド、インドなどのいくつかの試験導入を挙げた。また、ポーランド、メキシコ、日本でも議論が始まると予想した。
「次にUBIの試験導入を発表する3カ国がどこか、確実に言うことはできません」とサンテンス氏は述べた。「しかし、少なくとも同じ数の国が今年、新たに動き出すと期待しています。」
ベーシックインカムへの道は、脇道から開けるかもしれない
多くの専門家は、特にカリフォルニア州とコロラド州で、大規模な福祉改革の有力候補として勤労所得税額控除(EITC)を挙げた。
「福祉改革の議論が始まるとすれば、それは現金給付を推進する好機です」と、作家で元サービス従業員国際労働組合会長のアンディ・スターン氏はBusiness Insiderに語った。
EITCは大規模な税還付のようなもので、税の申告時期に低所得の労働者へ支給される。具体的な金額は本人の所得に応じて増減し、所得が少ないほど受給額が増え、年間約2,500ドルに達することもある。
ベーシックインカムの支持者の中には、EITCが本格的なUBIへの足掛かりになると期待する人も多い。
非営利団体CalEITC4Meの代表、ジョー・サンバーグ氏は、資格のある何百万人ものカリフォルニア州民がEITCの給付を受けられるよう支援することに取り組んでいる。有力候補の一人として2018年の米上院議員選挙への出馬が取り沙汰されるサンバーグ氏は、法案の成立を後押しし、カリフォルニア州でEITCの対象者を60万人から170万人へ拡大した。
ピュー氏らの専門家は、州がこうした取り組みをさらに拡大していくと考えている。
「今年のどこかの時点で、こうした政策を実施するための運動が始まると確信しています」とピュー氏は語った。



