「好機を逃さず、行動する前には必ずよく考えるべし」と、日本のことわざは説く。今日の東アジアにとりわけ当てはまる言葉だ。
原油価格の急落は、同地域の大半の発展途上国にとって、自国経済の競争力を高め、続く世界経済の回復を生かす大きな好機となっている。
2014年半ば以降50%を超える原油価格の下落は、数年にわたる石油供給の増加、とりわけ北米での増産に加え、世界の石油生産をめぐる地政学的リスクの低下、OPECによる生産水準と市場シェアの維持に向けた取り組み、そして昨年の世界経済の成長が予想を下回ったことを反映している。こうした要因は続く可能性が高く、原油価格は少なくとも2016年を通じて低水準にとどまると見込まれる。
日本を含む東アジアの大半の国は、石油輸入国であるため、価格下落の恩恵を受ける。より速い経済成長、低いインフレ率、経常収支の改善が期待できる。
世界銀行の最新の『世界経済見通し』報告書は、昨年の不振を経て、日本の成長率は2015年に約1.2%、2016年に1.6%へ回復すると予測している。原油価格の下落が消費者の購買力を高め、賃金の伸び悩みや輸入コストの上昇を補う見通しだ。
石油輸入国であるタイでは、価格低下によって2016年の経済成長率がほぼ0.5ポイント押し上げられる可能性がある。
東アジアの発展途上国は、特に貿易と投資を通じた地域統合を促進し、この好機を生かすべきだ。
調査によると、適切に計画され、価格が設定され、規制されることを条件に、インフラ投資はGDP成長率を高めることができる。したがって、低・中所得国において中期的な成長を加速し、持続させる最も効果的な方法の一つである。
原油価格の低下により、政府は石油製品への課税を引き上げるとともに、燃料補助金を削減することで、インフラ支出に対する国民の負担分を賄えるようになる。インドネシアとマレーシアはすでにこうした措置を講じている。
昨年の世界銀行年次総会で、日本や他の先進国は、世界銀行および他の多国間開発銀行とともに、開発途上国がインフラ需要を満たせるよう、実現可能なプロジェクトの案件群の形成を支援することを目的とした「グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)」を立ち上げた。
日本の民間部門も最近この取り組みに加わり、三菱東京UFJ銀行が日本から初の民間GIFパートナーとして参加した。
地域経済統合の強化も、東アジアの多くの国にとってもう一つの好機である。2015年末までに発足するASEAN経済共同体は、人口で世界最大の地域貿易圏となる。これを通じ、ASEAN加盟国と日本などの国々は、貿易、政府開発援助、そして地域協力の強化を通じて、経済的な結びつきを深めることができる。
原油価格の低下がもたらす影響は、すべてが好ましいわけではない。マレーシアや東ティモールのような石油輸出国では、価格下落によって経常収支が悪化し、財政収入も減少する。ガスをはじめとする他の一次産品も原油と同じ傾向をたどれば、インドネシアなどの国々も打撃を受ける可能性がある。
こうした一次産品に依存する国々にとって、優先課題は、総合的な競争力を高めながら、時間をかけて輸出と生産の基盤を多様化し続けることだ。規制・法制度の強化、技能の向上、ビジネス環境の改善といった改革に特に重点を置く必要がある。
変動の激しい世界経済は課題をもたらす一方、東アジアにはつかむべき好機もある。それを実現するには、必要な改革を実行するリーダーシップが求められる。
国際協力も必要となる。世界銀行はすでに東アジアのパートナー国と協力してインフラ整備の課題に取り組み、原油価格の下落が生み出す機会を経済競争力の向上につなげている。
この記事は当初、世界銀行の 東アジア・太平洋 ブログに掲載された。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しない。
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著者:アクセル・ファン・トロッツェンブルクは、世界銀行の東アジア・太平洋地域担当副総裁。
画像:カリフォルニア州ベーカーズフィールド近郊で、日の出の中に見えるポンプジャック。REUTERS/Lucy Nicholson

