熟練労働者が国や企業の間を円滑に移動するには、柔軟な移民手続きが不可欠である。しかし世界中で、移民を管理しようとする政府のニーズと、最も優れた人材を採用したい企業のニーズとの間には、ある種の緊張関係が存在する。人材獲得競争が世界的に激しくなるなか、この緊張関係を解消するための新たな政策が登場しており、その中には、特定の種類の労働者を対象とした優遇ビザ制度や割り当て制度が含まれる。
こうした課題への取り組みが遅れている地域の一つがアフリカである。一部の準地域協定では労働力の自由な移動が原則として定められているものの、その多くは批准されていないか、効果的に実施されていない。アフリカの多くの地域では、才能あるアフリカ人を含め、人の移動を妨げる過度に制限的で、時間がかかり、コストも高い障壁が存在する。これはイノベーションと競争力を阻害するだけでなく、熟練したアフリカ人を自らの大陸から流出させる「頭脳流出」を悪化させるおそれがある。
アフリカの多くの企業にとって、熟練したアフリカ人の駐在員を雇うよりも、熟練した非アフリカ人の駐在員を雇う方が容易である。全体として、アフリカの人材移動に対する障壁は、同大陸の成長と経済的成果の足かせとなっている。アフリカ各国が経済成長を促す政策を推進するなか、優秀な人材のより自由な移動は、ますます重要な課題となりつつある。
では、アフリカにおける人材移動の主な障壁とは何か。17のアフリカ諸国で事業を展開する複数の多国籍企業を対象に実施された最近のパイロット調査では、次の4つの課題が特定された。この調査は、 世界経済フォーラムの「移民に関するグローバル・アジェンダ評議会」によって実施された。
ビザ要件:調査対象企業は、多数のアフリカ諸国にわたる、ビザに関連する様々な障壁を指摘した。例えばコンゴ民主共和国では、必要となるビザの種類(入国、出国、就労開始)の多さが負担とみなされた。ナイジェリアでは、熟練労働者向けビザの資格基準が、就労経験よりも正規の学歴を重視しており、厳しすぎると考えられた。セネガルのある特定のビザでは、その後にどのような就労許可が発給されるのかが不明確であった。
割り当て制度: 調査対象となったアフリカ諸国の多くは、外国人労働者の数や業種に上限を設ける割り当て制度を通じて、国内優先制度を推進している。例えばガボンでは、企業の従業員の10%を上限とし、南アフリカでは「ネットワーク・サポート専門職」が対象となっている。割り当て制度は国内労働力の保護のためによく用いられるが、本報告書の調査に参加した複数の企業は、その制度が不必要に制限的であるか、あるいは一貫して適用されていないことを懸念していた。いずれの場合も、特に定期的な見直しが行われていない場合、割り当て制度は地域での雇用促進ではなく、企業への人材供給を減少させるおそれがある。
手続き: 調査対象国の大多数において、ビザおよび就労許可の申請、審査、更新に関する手続き上の障壁が報告された。申請段階では、ビザ要件に関する公表情報の不足(アルジェリア、ウガンダ)、異なる大使館や高等弁務官事務所の間でのビザ要件の不統一(ナイジェリア、南アフリカ)、学歴証明書などの添付書類に関する指示の不一致(エジプト、ウガンダ)といった問題が挙がった。アルジェリア、チャド、タンザニア、ウガンダでは、様々な理由から審査期間が過度に長いとの報告があった。例えばウガンダでは、移民委員会が就労許可の申請を検討するために会合を開いた場合にのみ決定が下されるが、その会合は不定期に開かれている。ガーナでは審査手数料が高すぎるとみなされ、他の二つのケースでは移民審査官の裁量権について懸念が示された。マダガスカルとスワジランドでは、回答企業が就労許可の更新に困難を経験したという。
人員または技能の不足:多くの国では、これらの障壁やその他の障壁は、必ずしも法的または政策的枠組みが存在しないために生じたのではなく、その枠組みを実施する能力が不足していたために生じていた。複数の回答や国々にまたがって、企業は人員不足、研修を受けた人材の不足、手続きの誤解、そして個々の担当者に与えられる裁量権の過大さを懸念していた。
これらの障壁がもたらす影響について企業に尋ねたところ、回答は実務面から事業面、そして国の経済面に至るまで多岐にわたった。実務面では、対応に時間とコストがかかるという回答があった。事業面では、優秀な労働者や企業内転勤者さえ採用できないという影響が挙がった。国の経済への影響としては、例えば割り当て制度により、地域で直ちに埋めることのできない労働市場の技能ギャップが生じているケースがあった。
これらの理由をはじめとする様々な理由から、才能あるアフリカ人の移動に対する障壁の撤廃は優先課題とされるべきである。国ごとの個別の知見に加え、本プロジェクトは以下の暫定的な提言を取りまとめた。
手続きを利用しやすく透明性の高いものにするためのオンラインシステムの構築
割り当て制度が存在する場合は、労働市場の需要により的確に対応するものとすること
ビザおよび就労許可の申請と更新手続きの簡素化
政府横断的な調整、特に労働省、経済省、外務省、移民担当省の間の連携強化
政府と民間企業との間のより効果的な協議
移民当局者および領事担当者に対する国レベルの研修の実施
これらの提言のいずれも、容易に実現できるものではない。「アフリカ人材移動プロジェクト」は、今後2年間にわたる同グローバル・アジェンダ評議会の活動の中心となる。我々は、大規模な多国籍企業と中規模から大規模のアフリカ企業の双方を対象とした調査を継続するとともに、調査対象をアフリカの各政府にも拡大し、協力的な解決策に焦点を当てていく。
アフリカの経済が発展するためには、同大陸が最も重要な資産、すなわち人々の潜在能力を引き出す必要がある。
当フォーラムの新たな報告書をご覧ください: Smart Travel (世界経済フォーラム 「旅行・観光の新たなモデルに関するグローバル・アジェンダ評議会」)。
執筆者:Khalid Koser、世界経済フォーラム「移民に関するグローバル・アジェンダ評議会」議長。
画像:アブジャのンナムディ・アジキウェ国際空港で移民関係書類を手にする女性。REUTERS/Afolabi Sotunde


