世界の転換点:いま、世界人口の半数が中間層以上に

Women walk in the financial area of Pudong in Shanghai April 26, 2011. REUTERS/Carlos Barria (CHINA - Tags: SOCIETY) - GM1E74Q1IVV01
Five people a second are entering the middle class.Image: REUTERS/Carlos Barria
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世界的に極めて重要な変化が、ほとんど気づかれないまま起きている。農耕文明が始まった1万年前以降、初めて、人類の過半数が貧困状態にも、貧困に陥る恐れのある脆弱な状態にもなくなった。私たちの計算によれば、今月の時点で、世界人口の50%強、約38億人が、「中間層」または「富裕層」とみなされるだけの裁量的支出ができる世帯で暮らしている。貧困状態または貧困に陥る恐れのある世帯で暮らす人も、ほぼ同数いる。つまり、2018年9月は世界的な転換点となる。この後、史上初めて、貧困層と脆弱層が世界の多数派ではなくなる。不幸な世界経済の後退が起きない限り、これは中間層が多数を占める新時代の始まりを意味する。

こうした主張は、世帯を、極度の貧困状態(1人1日当たりの支出が1.90ドル未満の世帯)と中間層(2011年の購買力平価(PPP)で1人1日当たり11~110ドルを支出する世帯)に分類したことに基づいている。この分類を構成する残る2つのグループは、貧困層と中間層の間に位置する脆弱層の世帯と、分布の上位に位置し「富裕層」に分類される世帯である。

私たちの「中間層」の分類は、2010年に初めて開発され、多くの研究者に利用されてきた。中間層には世界共通で適用できる厳密な定義がないことを認めたうえで、本研究で用いる基準には次のような特徴がある。中間層の人々には、オートバイ、冷蔵庫、洗濯機などの耐久消費財を購入できる裁量所得がある。映画を見に行ったり、ほかの娯楽を楽しんだりする余裕もある。休暇旅行に出かけることもある。そして、病気や失業期間といった経済的ショックに見舞われても、極度の貧困に逆戻りすることなく、自分と家族が乗り越えられるという一定の自信を持っている。

188カ国の所得・支出調査を使い、世界中のすべての世帯をこの4グループのいずれかに分類することで、世界の所得分布を測ることができる。私たちの社会的企業であるWorld Data Labは、World Poverty Clockを運営しており、推計を精緻化するとともに、人口統計データと経済データを組み合わせて、2030年までのあらゆる時点について、ほぼすべての国の全所得層を推計する新しいインタラクティブ・データモデルを作成した。

極度の貧困状態にある人の数を減らす世界の進展については、最近のビル&メリンダ・ゲイツ財団のGoalkeepers報告書 でも取り上げられており、多くが書かれてきた。私たちは、もう一つの重要な動きは、世界の中間層が急速に台頭していることだと考えている。この中間層の動きは、影響を受ける人の数で見れば、おそらくさらに大きい。今日の世界では、毎秒約1人が極度の貧困から抜け出す一方、毎秒5人が中間層に加わっている。富裕層も増えているが、そのペースははるかに遅く、2秒に1人である。

図1.2018年9月―世界の所得の転換点

世界全体で、貧困層、脆弱層、中間層、富裕層に属する人々の数。Image: World Data Labによる予測

中間層の転換点に達し、中間層が世界の所得分布で最も急速に拡大する層となったことは、なぜ重要なのか。それは、中間層が世界経済の需要を牽引し、政府に対してより多くを求めるからである。

世界の経済需要の構造を考えてみよう。民間の家計消費は世界需要の約半分を占め(残りの半分は投資と政府消費に均等に分かれる)、家計消費の3分の2は中間層によるものだ。富裕層は1人当たりの支出額こそ大きいが、世界経済を牽引するには人数が少なすぎる。貧困層と脆弱層は人数が多いものの、支出に回せる所得が少なすぎる。ほとんどの企業にとって、狙うべき最適な市場は中間層である。これは個々の先進国では長く当てはまってきたが、いまや世界規模でも当てはまる。

世界の中間層をターゲットにするのは容易ではない。中間層は差別化された商品を好み、嗜好は国によって異なる。新たな中間層は主にアジアに集中しており、次の10億人の中間層消費者のほぼ10人に9人がアジア人となるが、中国、インド、南アジア、東南アジアに広がっている。ハリウッドの最新ヒット作が『クレイジー・リッチ!』であることや、国内ブランドを築き、海外市場への進出を目指すアジアの多国籍企業が台頭していることは、偶然ではない。

中間層はすでに世界経済の需要において最大の層である。企業にとって注目すべきなのは、中間層が最も急速に拡大する層でもあることだ。2020年末までに約40億人、2030年までに53億人に達すると予測されている。現在と比べると、2030年の中間層は17億人増える一方、脆弱層は9億人減る。貧困層と富裕層の変化はより小さく、それぞれ1億5,000万人減、1億人増となる。

私たちの計算では、2030年の中国とインドの中間層市場の規模は、それぞれ14.1兆ドル、12.3兆ドルとなり、同時点で15.9兆ドルと見込まれる米国の中間層市場に匹敵する。

図2.2030年、中間層が主流に

括弧内の数値は、2030年までの各カテゴリーの人口の増減を示す。Image: World Data Labによる予測

多くの国では、中間層の動向と国民の幸福度との間に明確な関係がある。ギャラップ世界世論調査によると、新たに中間層となった人々は、貧困状態や脆弱な世帯にとどまる人々よりも明らかに幸福度が高い。反対に、中間層が縮小している国では、個人のストレスがより強いと報告されている。中間層は政府に対して、より良い成果を上げるよう圧力もかける。手頃な価格の住宅や教育、普遍的な医療を政府に求める。また、病気や失業、老後に備えた公的セーフティネットに頼る一方、費用を賄うための増税には抵抗する。こうした事情は中間層社会の政治を複雑にし、その形態は専制的な体制から自由民主主義まで幅広い。今日、多くの先進国や中所得国は、幅広い中間層の多数派を満足させる政治のあり方を見いだそうと苦慮している。

今日の世界が迎えた転換点は、企業に機会をもたらす一方、政策担当者には難題を突きつける。

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