ダボスで開催された 世界経済フォーラム年次総会 で参加者が「新たな世界的文脈」について考察するなか、 グローバル戦略的フォーサイト・コミュニティ(GFSC) が特定した新たな世界的変化を参照することで、仕事の未来について新たな視点を得ることができます。
これからの雇用時代をめぐる現在の論調では、正規雇用が消え、人々に代わって機械が認知的な仕事をますます担い、雇用のあらゆる領域で自動化、ひいては失業が広がる未来への懸念をよく目にします。これには、高度な技能を要する仕事やホワイトカラーの労働も含まれます。こうしたシナリオは、複数のGSFCメンバー(フランシスコ・サガスティ、 クラウディア・ユエック、 ジル・ウォン、 ヌリエル・ルービニ)によって取り上げられています。
しかし、メンバーは仕事の未来に関して、ほかにも次のような見方を示しています。
起業家精神の時代の到来: テクノロジーの進歩により、自ら生計を立てることがますます実現可能になる
フランシスコ・サガスティ は、未来には「『限界費用ゼロ』と『共有』の経済によって『自ら生み出す』生計手段の可能性が広がるにつれ、若い世代のなかで個人または小規模グループの起業家の割合が増えていく可能性が高い」と論じています。 ジュリアス・ガトゥネ は、アフリカではすでに、「ICTプラットフォームが……新たなビジネスモデルを可能にし、従来は非公式だった活動をより正式な基盤に乗せることで、インフォーマル経済に……革命をもたらす」兆しや、「起業家が事業を拡大する機会を開く」兆しが見られることを示しています。
先に引退し、後で働く? 将来、仕事と生活の二元的なパターンは大きく変わるかもしれない
クリステル・ファン・デル・エルスト は、人間が長寿になるだけでなく健康も保てるなら、仕事人生の設計を見直し、人生を「学ぶ―働く―引退する―最期を迎える」というモデルで捉えるのではなく、より柔軟で断片化されたものへと変えることになるかもしれないと示唆しています。「自由な時間」を人生の終盤にまとめて取るのではなく、人生のほかの時点で取るようになる可能性もあります。
ロボットには奪えない新たな仕事: 現在は存在しない多種多様な仕事が、まもなく登場する
ピーター・シュワルツ は、今日、私たちは技術革新の波と波の間にある移行段階にいると論じています。彼は、「ICTやビッグデータ、生物・分子工学などの分野における現在の研究」に加え、人間が重力を理解するようになることが、「膨大な新技術とまったく新しい産業を生み出す」と述べています。 ステファン・ハイコウィッツ は、創造的サービス経済には若年層の失業や貧困を減らす大きな可能性があると見ています。「遠隔臨場システムから仮想現実、音声認識、人工知能に至るまで、通信技術の今後の発展は、まったく新しい種類の創造的サービスの進化を可能にし、創造的経済をさらに拡大させる可能性が高い」ためです。 トルドペルト・シェルブ は、3Dプリンティングの普及がもたらす個別化への需要の高まりによって、物理的な商品の生産と流通が大きく変革され、DIY経済が促進されると考えています。
こうした代替的でありながら起こり得る未来について考察することは重要です。先行する変化への備えに役立ち、未来を形づくることができるからです。たとえば、上記の見解に仕事の未来を形づくる重要な要素が含まれていることが明らかになれば、教育、経済・社会的セーフティネット、年金制度など、多くの社会システムを大幅に再考する必要があります。さらに、誰もが意義ある人生を送れるよう支援する取り組みには、起業家精神と社会イノベーションの大幅な拡大が欠かせません。
こうしたニーズを念頭に、私たちはこれらの世界的変化を支え、世界の状況を前向きに改善できるようにする制度を考案し始めるべきです。
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著者:クリステル・ファン・デル・エルスト(世界経済フォーラム、戦略的フォーサイト部門責任者兼シニアディレクター)、トゥルーディ・ラング(世界経済フォーラム、戦略的フォーサイト部門ディレクター)
画像:東京のオフィスビルで、富士重工業株式会社の清掃ロボットRFS1が写っている。2007年8月17日。REUTERS/Toru Hanai


