「まず皆さんにお伝えしておきたいのは、私の答えは疑ってかかってほしいということです」と、Google共同創業者でBayshore Global Management創設者のセルゲイ・ブリンは語った。世界経済フォーラム創設者兼会長のクラウス・シュワブから数々の鋭い質問を受け、最初の問いに答える前のことだった。人工知能の話題で沸く年次総会で、ブリンは、ごく最近まで自分がAI懐疑派だったと認めた。数年前、Googleの「ムーンショット」部門であるGoogle Xの責任者を務めていたころ、彼が監督した数多くのプロジェクトの一つにGoogle Brainというものがあったという。ブリンはそれにほとんど注意を払わず、AIが機能するとは思っていなかったと告白した。主要研究者の一人、ジェフ・ディーンがやって来て「見てください、コンピューターが猫の画像を作りました」と言ったときも、軽くあしらったという。
それは2011年のことだった。現在では、Google Brainは中核となる検索から画像、アプリに至るまで、Googleの主要製品のほぼすべてに関わっていると彼は語った。ブリンにとって、ディープニューラルネットワーク技術(ディープラーニング)の進歩は、未来を予測し、何が可能かの限界を知ることがいかに難しいかを示している。2017年年次総会で人工知能に注目が集まっていることに感心し、彼は冗談めかしてこう言った。「驚いたことに、ここダボスにいる私は、この場のラッダイト(技術革新反対論者)のような気分です。」
生物学の革命の可能性、とりわけ生物学とデジタルの革命が組み合わさる可能性についてシュワブから尋ねられ、ブリンは、個人的にパーキンソン病研究に投資しており、特に強い関心を寄せていると述べた。安価な遺伝子編集技術CRISPRのような手段が、あらゆる疾患領域の生物学者にとって強力な新しいツールとなることを認めつつも、機械学習のような「より基礎的な層」への投資に関心があると語った。機械学習は「人間の営み全般に及ぶ」ため、乗数効果をもたらすという。
急速な技術進歩の時代に、新たなガバナンスの枠組みが必要か、また規制当局、市民社会、企業の間により機動的な連携をもたらすべきかという質問に答え、ブリンは、政治家、ビジネスリーダー、社会起業家の間で交わされる会話の見識の高さに「圧倒された」と語った。こうした対話は、新たに生じるガバナンス上の課題に、より迅速に取り組むだけでなく、より協働的に対処する道につながるかもしれないと付け加えた。
ブリンは、Googleでの成功の理由に、失敗を汚名とせず、リスクを取ることを奨励するシリコンバレーの文化を挙げた。「まず何より、私はとても運がいいんです」と彼は言った。「でも、その幸運は何度も挑戦し、たくさん失敗したことからも生まれています。私の失敗を全部話したら、もっとずっと長いセッションが必要になります」と語り、こう続けた。「大きなリスクを許容し、避けられない失敗も受け入れる環境に恵まれているのは幸運です。」
起業を目指す若者への助言を求められ、ブリンはこう答えた。「若い人たちには、思い切って挑戦し、夢を追いかけてほしい。そして、『自動運転自転車を作るスタートアップはすでに1,000社ある』と言う声を黙らせてほしい。」
ブリンは世界経済フォーラムの精神を称賛し、参加企業の多くに社会的責任の意識が共通していると述べた。それはGoogleの創業当初から同社を動かしてきたものだという。「自分の事業のことだけを狭く考えて、収益を最大化すればよく、周囲で何が起きているか気にしなくていい、というわけにはいきません」と語った。「企業はこうしたことを真剣に受け止めているように思います」とブリンは言った。「まるでバーニングマンにいるような気分です。ただ、みんな服を着ていますけどね。」



