なぜ輸送・サプライチェーンのエコシステムにサイバーセキュリティが必要なのか

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  • 航空、海運、道路、鉄道の各輸送手段は世界貿易と経済活動を促進し、輸送は世界経済をつなぐ不可欠な役割を果たしています。

  • サイバー攻撃を含む輸送エコシステムの混乱は、組織や経済全体に広範な影響を及ぼす可能性があります。

  • 世界経済フォーラムは、エコシステム全体の関係者を結集し、連携してサイバーレジリエンスを高めるため、輸送・サプライチェーン・エコシステムのサイバーレジリエンスイニシアチブを立ち上げました。このイニシアチブは、ニューヨークで開催された2024年産業戦略会議で発足しました。

輸送ネットワークは、世界経済をつなぐうえで極めて重要な役割を果たしています。航空、海運、道路、鉄道など複数の輸送手段を通じて、輸送ネットワークは世界貿易と経済活動を促進する重要なつながりとなっています。

輸送エコシステムの混乱は、組織や経済全体に広範な影響を及ぼす可能性があります。サイバーインシデントとは関係ありませんが、その影響は最近の紅海での船舶に対するフーシ派の攻撃がスエズ運河の海上交通を妨げたことにも表れています。

その結果、顕著な世界貿易の1.3%減少が生じ、船舶が代替航路を余儀なくされたことで、TEU当たりの二酸化炭素(CO₂)排出量が31~575%増加する可能性もあります。

デジタル化と自動化が進む輸送・サプライチェーンのエコシステム

人工知能、クラウド、モノのインターネット(IoT)などの技術を背景に、輸送エコシステムでは急速にデジタル化と自動化が進んでいます。

輸送業界のリーダーの80%強が、2020年以降、テクノロジーへの投資を増やしたと報告しています。その結果、サプライチェーンのデジタル化が進んだ企業では、営業コストが20%削減されています。貿易エコシステムのデジタル化により、2025年までにG7諸国全体で9兆ドルの価値が創出されると予測されています。

こうした進展は業界に大きな期待をもたらす一方、輸送エコシステムの急速なデジタル化は、高いサイバーリスクも招いています。海運業界だけでも、過去1年間にサイバー攻撃を受けて身代金を支払った組織が467%増加しました。

IBMの調査によると、輸送部門に影響を与えるデータ侵害が1件発生した場合、組織が負担するコストは平均418万ドルです。相互接続性の高まりとデジタル技術への依存により、サイバー脅威に対する脆弱性が高まっています。

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輸送・サプライチェーンのエコシステム全体で、旧式の情報技術(IT)および運用技術(OT)インフラへの依存と、不可欠なニッチサプライヤーへの依存が大きな課題となり、サイバーレジリエンス強化の取り組みを複雑にしています。

サイバー攻撃が輸送エコシステムに及ぼす甚大な影響は、2023年7月に日本の名古屋港で発生したランサムウェア攻撃に表れました。この攻撃により業務が2日間停止し、日本の貿易総額の10%が混乱しました。日本は世界第4位の経済大国です。

同様に、2023年11月中旬、オーストラリアにあるDP Worldの主要港湾ターミナル4カ所が、サイバー攻撃により3日間の操業停止を余儀なくされました。その結果、3万個を超えるコンテナが滞留し、遅延は最大10日間に及びました。

さらに、サイバー攻撃は業務を混乱させるだけでなく、安全や環境にも重大なリスクをもたらします。爆発を引き起こすことを狙った2017年のサウジアラビアの石油化学工場へのサイバー攻撃や、ハッカーが水道水への毒物混入を試みた2020年の米国の浄水施設へのサイバー攻撃などの事例が、その危険性を浮き彫りにしています。

エコシステム全体で取り組むサイバーレジリエンスの構築

こうした課題を前に、輸送、物流、サプライチェーンのネットワークが複雑なため、サイバー対策は難しくなっています。関係者が多様で、それぞれのデジタル化やサイバーセキュリティの成熟度も異なる、極めて断片化した状況がこの複雑さを生んでいます。

さらに、旧式のIT・OTインフラへの依存に加え、さまざまな輸送手段やインフラ要素が複雑に相互接続されている状況を十分に把握できていないことが、リスク管理やサイバーセキュリティ対策の実施に大きな課題をもたらしています。

ニッチサプライヤーを含む第三者プロバイダーへの依存度の高さが課題をさらに深刻にし、輸送業界の関係者を世界規模の連鎖的影響のリスクにさらしています。例えば、現在、近代的な貨物船の大半は低速2ストロークディーゼルエンジンを動力源としています。

大手企業に供給する少数のニッチサプライヤーが攻撃を受ければ、業界全体に深刻な影響が及ぶおそれがあります。海上輸送は貿易品の約90%を運ぶため、世界のサプライチェーンにも混乱が広がるでしょう。

輸送エコシステムの特定分野に焦点を当てたサイバーセキュリティの取り組みは増えていますが、システム全体のサイバーレジリエンスに対処するには、輸送、サプライチェーン、物流サービスの各業界にわたり、エンドツーエンドで関係者を結集する必要があります。

航空業界では、国際航空運送協会(IATA)や国際空港評議会(ACI)などの組織が、業界基準の策定や、サイバーセキュリティ規制、アプローチ、リスク管理の整合性促進において重要な役割を果たしてきました。しかし、こうした取り組みは依然として大部分が各分野に限定されています。

輸送エコシステム全体でサイバーレジリエンスを構築する

サイバーリスクに効果的に対処し、相互接続性の高い輸送システムのレジリエンスを強化するには、連携に基づくエコシステム全体でのアプローチが不可欠です。

航空、海運、道路、鉄道を含むあらゆる輸送手段を対象とし、ブローカー、サプライヤー、テクノロジープロバイダー、主要な業界団体、規制当局、法執行機関などの主要な関係者を含めるアプローチは、多様な世界の輸送・サプライチェーンネットワークでサイバーレジリエンスを構築するために何が不可欠かについて、理解を深めることにつながります。

輸送・物流分野で一体的な取り組みが必要であることを踏まえ、世界経済フォーラムはエコシステム全体の関係者を結集し、連携してサイバーレジリエンスを高めています。輸送・サプライチェーン・エコシステムのサイバーレジリエンスイニシアチブは先月、ニューヨークで開催された2024年産業戦略会議で発足し、官民組織の主要な関係者を招集しています。

世界経済フォーラムは、レジリエントなサプライチェーンの構築にどのように貢献しているのでしょうか。

先進製造業・サプライチェーンセンターは、ビジネス、政府、市民社会のリーダーを結び付け、製造業やグローバル・バリューチェーンを再形成する変化への理解を深めます。また、ますます複雑化する世界経済において、レジリエンス、持続可能性、競争力を探るための信頼できる場を提供しています。

業界や地域を越えた連携と共通理解を促すことで、同センターはパートナーが適応し、イノベーションを起こし、サプライチェーンを共に強化するための実践的な道筋を見いだせるよう支援します。

同センターの取り組みを見る

サイバーレジリエンスへの取り組みの効果を高めるため、このイニシアチブは、輸送・物流分野のサイバーセキュリティの基盤を示すプレイブックの策定を目指しています。既存の依存関係、リスク、機会をマッピングし、それらがシステム全体に及ぼす影響を評価します。

さらに、参加者はサイバーレジリエンスを高めるための主要な指針を定めるとともに、中小規模の関係者による効果的なサイバーセキュリティ対策の導入を支援し、業界全体で責任を共有することを目指します。

ベストプラクティスや活用事例を示すことで、このようなプレイブックは、多国籍企業から中小企業まで幅広い業界関係者にとって貴重なリソースとなり得ます。連携と知識共有を促し、世界の輸送・サプライチェーンのエコシステム全体でサイバーレジリエンスを高めます。

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