新たなIMF報告書によると、金融セクターへのサイバー攻撃は世界の金融安定に深刻な脅威をもたらす。
金融セクターはサイバーリスクに特有の脆弱性を抱えており、そこから生じる損失は大きな混乱を引き起こしかねない。
サイバーインシデントは「金融機関の業務レジリエンスを脅かし、マクロ金融全体の安定に悪影響を及ぼす可能性がある」と報告書は述べている。
国際通貨基金(IMF)の新たな報告書によると、サイバー攻撃の頻度と巧妙さが増すなか、世界の金融安定が脅威にさらされている。
サイバー攻撃による極端な損失のリスクも高まっていると報告書は指摘する。機密データや取引を膨大に扱う業務のため、金融セクターはサイバー脅威に特有の脆弱性を抱えている。
金融機関にとって、サイバー攻撃は資金調達の困難や評判の毀損につながり、破綻を招くことさえある。さらに専門家は、金融セクター全体に対する大規模な攻撃が、システムへの信頼を損ない、重要サービスを妨げ、他のセクターにも波及する恐れがあると警告する。
IMFによると、過去20年間に報告されたサイバーインシデントのほぼ5分の1が世界の金融セクターに影響し、金融企業に120億ドルの直接損失をもたらした。IMFの「世界金融安定報告書」2020年以降の直接損失は、推定で25億ドルに上る。
世界経済フォーラムのサイバーセキュリティセンターで産業・パートナーシップ部門長を務めるアクシャイ・ジョシ氏は、「サイバー成熟度の面で金融機関は広く先進的と認識されているが、サイバー攻撃の頻度と巧妙さが着実に増すなか、他のどのセクターと同様に脆弱だ」と述べた。
IMFの報告書は、銀行が特に標的にされており、間接損失や評判の毀損を考慮すれば、損失額ははるかに大きい可能性が高いと付け加えている。
「サイバーインシデントは、金融機関の業務レジリエンスを脅かし、マクロ金融全体の安定に悪影響を及ぼす可能性がある重要なオペレーショナルリスクだ」と報告書は述べ、さらに「これまでサイバーインシデントがシステミックな事態を引き起こしたことはないものの、急速に進むデジタルトランスフォーメーションや技術革新(人工知能など)、世界的な地政学的緊張の高まりがリスクを増幅させている」と指摘した。
IMFの報告書は、ストレステストや情報共有の取り決めなどを通じて、金融企業がサイバーセキュリティ能力を強化するよう促している。また、各国当局に対し、規制枠組みを伴う適切かつ十分な国家サイバーセキュリティ戦略を策定するよう求めている。
「世界の金融システムが重大化するサイバーリスクに直面するなか、リスクを軽減するための政策・ガバナンス枠組みは、その進展に歩調を合わせなければならない」と報告書は述べている。
IMFはまた、サイバー攻撃は金融企業の所在国以外から発生することが多いと指摘し、サイバーセキュリティ対策に関する国際協力の強化を求めた。
拡大するサイバーセキュリティ格差
専門家によると、金融機関にとってデジタル・エコシステムの安全確保は不可欠だ。一方、世界経済フォーラムの「グローバル・サイバーセキュリティ・アウトルック2024」報告書によると、経済全体では、サイバーレジリエンスを備えた組織とそうでない組織の格差が広がっている。
報告書によると、大企業ではサイバーセキュリティが向上している一方、中小企業(SME)のサイバーレジリエンスは低下した。実際、多くの国で企業の大半を占めるにもかかわらず、最低限実用的なサイバーレジリエンス水準を維持する中小企業の数は30%減少した。
さらに、フォーラムの報告書は、新興技術によってサイバーセキュリティを持つ側と持たない側の格差が拡大しており、高度な技術の発展に多くの中小企業が取り残されていると指摘した。
サイバー人材の不足
「戦略的サイバーセキュリティ人材枠組み」は、世界経済フォーラムの白書であり、サイバーセキュリティ目標の達成に向けた取り組みが、継続する人材不足によって妨げられていると指摘した。
同枠組みは、サイバーセキュリティ専門人材が世界で400万人不足しており、公的機関の半数以上が、サイバーレジリエンス向上における最大の課題として人材やスキルの不足を挙げているとした。
しかし、サイバー人材不足を緩和する取り組みも進んでいる。フォーラムの「サイバー人材スキル格差の解消」イニシアチブはその一例で、経営幹部の意識向上に取り組むとともに、組織内およびセクター横断で持続可能なサイバー人材の育成経路を構築するためのプロセスづくりを支援している。
「世界の官民協力が必要であることは、かつてないほど明白だ。特に金融機関への攻撃は、経済や社会全体に大きな連鎖的影響を及ぼし得る」とジョシ氏は付け加えた。


