サイバー犯罪との闘い――法律を執行できないとき、法律はどうなるのか?

FireEye information analysts work at the company's office in Milpitas, California, December 29, 2014. FireEye is the security firm hired by Sony to investigate last month's cyberattack against Sony Pictures. Picture taken December 29. REUTERS/Beck Diefenbach (UNITED STATES - Tags: BUSINESS SCIENCE TECHNOLOGY CRIME LAW) - GM1EB1200PY01
Cybercrime is a shared global issue and requires a global responseImage: REUTERS/Beck Diefenbach
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インターネットへの信頼が広く失われていることは、世界が直面する戦略上のリスクのうち5番目に大きいものだと、世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2019』は指摘しています。同報告書は、セキュリティ分野が直面する課題の規模を示すとともに、比類のない技術変化の時代に公共の利益を実現するために築ける新たな機会やパートナーシップも示しています。サイバー犯罪は、21世紀の安全保障上の課題であり続けるでしょう。

サイバーセキュリティが世界的な重大リスクとなるなか、世界の関係者は、最近のThird Wayの報告書が指摘する「驚くべき法執行のギャップ」があることを認識する必要があります。現在のサイバー犯罪の波は、その大部分が表面化していないだけでなく、米国でサイバー攻撃の捜査が成功し、起訴に至る可能性は現在、0.05%と推定されています。これは世界各地から報告されている同様の状況とも一致します。こうした犯罪は、2021年までに世界経済に6兆ドルの損失をもたらすと予測されています。暴力犯罪の場合、同等の可能性は46%です。世界の関係者は、なぜこうした事態が起きているのか、何をすれば変えられるのかを自らに問う必要があります。

サイバー犯罪の捜査や起訴がなかなか進まない主な理由の一つは、国家安全保障上の懸念をめぐる幅広い議論が、引き続き注目を集めていることです。焦点は、比較的少数の高度な国家主体の脅威アクターがもたらす影響に置かれ続けています。この議論が間違いなく重要である一方で、デジタル犯罪における拡大する法執行のギャップや、それを埋めるために必要な次世代の能力開発から注意をそらしています。「大多数の人々に対する攻撃の大半は、その大半の期間、金銭目的の犯罪グループによって行われる」という犯罪に効果的に対応するための世界的な枠組みには、攻撃者の特定と法の執行を組み込まなければなりません。

サイバー犯罪に対抗する世界的な枠組みの構築には、3つの取り組みが必要です。

1. サイバー犯罪2025――将来像への合意

第一に、関係者は近い将来に何が重要かについて合意し、その将来像を共有して、実現に向けた具体的な対話を始める必要があります。これは難しいものの、不可欠です。国や企業が意見の異なる点ではなく、合意できる点を見いだすことが重要です。そこには、サイバー犯罪の法執行のギャップを解消する必要性について共通認識を持つこと、国境を越える組織的サイバー犯罪が流行規模に拡大する前に対処すること、サイバー犯罪ネットワークの安全な逃げ場をなくすことなどが含まれるでしょう。新世代のテクノロジーが登場するなか、この取り組みの重要性は増しています。統合型スマートシティ、5Gネットワーク、人工知能、クラウドコンピューティングはデジタルの未来を形づくりますが、サイバー犯罪の規模と影響を急速に拡大させる可能性もあります。

2. 法執行の強化を可能にする世界的な能力の構築

第二に、サイバー犯罪は世界共通の課題であり、世界規模の対応が必要だという認識が求められます。どの国や企業も孤立して活動しているわけではありません。世界全体で、国境を越えた組織、各国、企業の間に次世代のパートナーシップを築く必要があります。法執行のギャップが生じている主な原因は、海外で活動することの多い攻撃者を捜査する難しさです。多様で相互に異なる技術システムが標的となり、通信技術によって攻撃はその性質上、初めから世界規模となります。攻撃者を特定し起訴しなければ、技術的な防御策は攻撃者を新たな業界や国の、より攻撃しやすい標的へ移すだけになりがちです。

優れた実践例を関係者間で共有し、発展させるべきです。これには、次のような成功した実務上のパートナーシップが含まれます。マイクロソフトのデジタル犯罪対策部門、ユーロポール、英国国家サイバーセキュリティセンターと通信事業者との連携です。EUも電子証拠に関する法制度を導入しており、事件捜査に用いるデータの迅速な共有を大きく促進するでしょう。新興市場、とりわけアフリカで能力を高めることも重要です。これらの地域は、サイバー犯罪の被害を受けることが増えていると同時に、その対策において重要な拠点となっています。

3. 官民パートナーシップに関する世界的な原則の策定

第三に、サイバー犯罪の捜査は従来型犯罪の捜査とは異なることを、関係者は認識する必要があります。これは単に法執行機関の能力の問題ではありません。公的部門か民間部門かを問わず、すべての被害者、データ保有者、捜査機関は、つながりと相互依存を強める世界的なエコシステムの一部です。

捜査に必要な技能、能力、データは企業の領域にあります。この種の犯罪は異なる速度で進むため、世界規模で、インターネットの速度に合わせて、合意された共通の枠組みと原則のもとで連携する必要性がはるかに高まっています。これには、データ共有と協力を促すこと、互いの能力を生かすために明確な役割と指針を定めることが含まれます。

プライバシー、データ共有、GDPRなどの法律の解釈に関する懸念が、価値ある情報の共有を意図せず妨げる可能性がある時代に、原則を定めることの重要性は増しています。企業は重要なデータを保有していることが多いものの、データプライバシー、顧客の秘密保持、または競合他社に情報を渡すことへの懸念から、共有できないと感じています。

プライバシーの権利を尊重しながら、被害者を保護し、世界規模の捜査を可能にする、より持続可能なモデルを築くには、準同型暗号などの技術を用いた新たなツールやプラットフォームが必要です。被害者、サイバーサービス事業者、法執行機関、コンピューター緊急事態対応チーム(CERT)、国境を越えた機関の間で、サイバー対応の原則を定め、枠組みを調和させることは、サイバー犯罪者が活動する協力の隙間を埋める重要な取り組みです。

サイバー犯罪の法執行のギャップに対処するには、政策と能力の両面から、各国政府間の国境を越えた連携と対話を深める必要があります。また、法執行機関と民間部門の連携も大幅に強化しなければなりません。これは組織間の信頼を築き、共通の価値観に合意するまたとない機会であり、そこから新たな世界的枠組みが生まれるでしょう。これを実現できなければ、デジタル経済だけでなく、社会全体の安全と信頼を支える従来の制度も損なうおそれがあります。

「不服従に対する罰則が伴わなければ、法律を装う決議や命令も、実際には助言や勧告にすぎない。」

アレクサンダー・ハミルトン、『ザ・フェデラリスト』第15篇

(1787年)

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