サイバーセキュリティの持続可能な資金調達メカニズムが世界経済の安全確保に不可欠な理由

Close up of a laptop keyboard with a half opened screen as the Global Future Council on Cybersecurity outlines how a meaningful sustainable cybersecurity finance mechanism
Safer internet for all ... why cybersecurity needs a sustainable finance mechanism.Image: Getty Images/iStockphoto
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  • サイバーセキュリティ分野への慈善寄付は年間わずか1億~2億ドルで、慈善寄付全体やAI投資と比べるとごくわずかです。

  • サイバーセキュリティ資金のうち、新興国や後発開発途上国に届くのはごく一部にすぎません。

  • 世界経済フォーラムのサイバーセキュリティに関するグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーは、この資金不足を解消し、すべての人にとってより安全なインターネットを実現するため、「持続可能なサイバーセキュリティ資金調達メカニズム」を提案しています。

すべての小規模企業が、人工知能(AI)を利用したサイバー犯罪から身を守るため、サイバーセキュリティの専門家ボランティアに支援を求められる世界を想像してみてください。

この世界では、ランサムウェア攻撃を防ぐのに間に合うよう、非政府組織(NGO)にボットネット活動が通知されます。また、国際援助機関は、疾病撲滅を支える保健管理システムの保護や、新たな廃水インフラへの運用技術セキュリティの組み込みなど、受益者のためのデジタルセキュリティ予算を日常的に確保します。

このビジョンの実現に必要な基準、政策枠組み、技術の大半はすでに存在します。欠けているのは資金です。

民間および企業による慈善寄付は、サイバーセキュリティ関連の目的に合わせて年間1億~2億ドルを拠出していると推定されます。近年では、特に州・地方自治体サイバーセキュリティ助成プログラム(米国)、英国統合安全保障基金、EUのデジタル・ヨーロッパ・プログラムなどの政府助成プログラムが、それぞれの管轄地域で年間数億ドルの拠出を始めています。しかし、その資金のうち新興国や後発開発途上国に向けられるものはわずかです。

比較すると、サイバーセキュリティ分野の慈善寄付に充てられる1億~2億ドルは、一般的な慈善活動に2023年に拠出されたと推定される8,850億ドルや、2025年に企業のAI投資に流れ込んだ5,800億ドルと比べれば、丸め誤差にすぎません。

私たちはAIエンジンを急速に拡大させながら、デジタルのブレーキには資金を投じていません。この資金のごく一部があれば、すべての人にとってインターネットを安全で安心なものにする、意義ある持続可能なサイバーセキュリティ資金調達メカニズム(SCFM)を構築できます。

持続可能なサイバーセキュリティ資金調達メカニズムの基盤づくり

SCFMは単一の基金として運営するのではなく、個人による慈善寄付、企業寄付、多国間基金、資金プールの仕組みなど、多様な資金源を共通の原則と対象範囲のもとに連携させたエコシステムとして機能します。

そのため、SCFMは安定した資金基盤を提供して追加資源の活用を促し、資金が不足しているものの重要なインターネット機能を支える資金不足を補います。ただし、デジタル安全に役立つあらゆるサービスや活動を支援できるわけではありません。そこで、効果を最大化するため、次の5つの観点から戦略的な重点領域を絞ることを提案します。

  • サイバーセキュリティを最優先:サイバーセキュリティと、民主主義の促進、人権、誤情報など他の領域との重なりを認めつつも、他領域への好影響は主要な資金配分基準ではなく、付随的な便益として捉えるべきです。

  • 偽情報との交差領域:このメカニズムは偽情報自体を独立した優先課題として資金援助するのではなく、なりすましによるオンライン詐欺、市場操作、侵害されたインフラを用いる情報工作など、サイバーと偽情報が交差する活動を支援します。

  • 軍事・防衛ではなく、民間のレジリエンス:支援対象の活動は、民間のレジリエンス、被害者を中心に据えた対策、能力構築に重点を置くべきです。

  • コンプライアンスより能力構築を優先:デジタル化の初期段階にある地域では、SCFMは、まだ備わっていない能力を前提とする国際枠組みへの準拠よりも、基礎的な能力の構築を優先します。

  • 世界的な公平性と中立性:サイバーセキュリティのリスクは一様に分布していません。新興国や後発開発途上国は、対応能力に比して最も大きなリスクにさらされている一方、世界的なガバナンスに関する議論への参加が最も少ない国々です。SCFMは、政治的中立性、拠出額の差異への配慮、地理的に多様な代表性を指針とします。

受益者を中心に据えたSCFMの実現

最適な成果を確保するため、このメカニズムは、重要な現場サービスを提供する組織を支える3つの運用原則を遵守しなければなりません。

第一に、具体性よりもインフラを優先する必要があります。資金は、狭いプログラム固有の枠に限定するのではなく、幅広い能力と中核的なインフラを優先すべきです。そうすることで、組織は変化する脅威に対応するため、運用上の柔軟性をもって方針を切り替えられます。

第二に、このメカニズムは一貫性と長期性を確保する必要があります。組織の安定を促すため、SCFMは、多額で変動が大きく一度限りの助成よりも、予測可能な長期的資金配分を優先し、断片化した報告体制を簡素化します。

第三の運用原則は、複数の資金調達モデルを組み合わせることです。SCFMは、受益者組織が法執行機関など支払い能力のある利用者から費用を回収し、支払いが困難な利用者には補助金を出すことを含め、複合的な資金調達モデルを正当なものとして認めます。

SCFMの資金調達構造

価格を付けられない問題には、資本は流れません。サイバーセキュリティが定量化されたシステミックリスクではなく、裁量的なコストとして扱われる限り、世界公共財としてのサイバーセキュリティを支える資金調達構造は、寄付者への依存と断片化を免れず、政治サイクルの影響を受けやすいままです。SCFMは、次の5つの中核的な柱を通じて、経済的な可視性を高めるべきです。

  • 回避損失のモデル化を主要な成果に:SCFMは、サイバーレジリエンスによって回避できる経済損失を示す、厳密で信頼性の高いモデルを公表しなければなりません。そのためには、インフラのオフライン化によるシステム全体への混乱と、被害者が受ける直接的な経済的・社会的損害の双方を定量化する必要があります。これは広報活動ではありません。資本市場にサイバーセキュリティをより理解してもらうために必要な基礎作業です。

  • インパクト投資資本に向けたリスク調整後リターンの提示:インパクト投資家、財団、開発金融機関を呼び込むには、このメカニズムは道義的な緊急性を訴えるだけでなく、市場水準のリスク調整後リターンの考え方に基づく明確な経済的論拠を示す必要があります。

  • レジリエンス会計の標準化:SCFMは、サイバーレジリエンスを経済的な観点から測定・報告する標準的な枠組みを推進します。インパクト加重会計と整合させることで、デジタルの健全性を財務諸表上で可視化します。

  • 民間レジリエンスへの分類変更:SCFMは、OECD、開発金融、年金基金の分類体系において、サイバーセキュリティを「軍事・防衛」から「民間のレジリエンス」へ積極的に再分類するよう提唱すべきです。この誤った分類により、現在、多額の資本がこの分野に流入できていません。

  • 測定の組み込み:インパクト測定の枠組みは、基金の設立当初からその構造に組み込まなければなりません。これにより、すべての助成先が、マクロ経済の安定に貢献していることを示すデータを体系的に作成できるようにします。

「経済的に不可避であり、実質的なインパクトを示す問題に資本は流れます。サイバー分野では、どのような経済的価値が実現するのでしょうか。サイバーレジリエンスの強化は、どのような経済課題の解決につながるのでしょうか。インパクトは経済的価値と結び付いていなければなりません」と、Proof of Impactの最高経営責任者(CEO)、フルール・ヘインズ氏は述べています。

中小企業のサイバーレジリエンス向上を目指すブラジルの革新的な取り組み

各国政府や金融機関がサイバーセキュリティの新たな持続可能な資金調達メカニズムを模索する中、ブラジルは中小企業(SME)のサイバーレジリエンスに資金を提供する革新的な取り組みの例として注目されています。

ブラジルは、大統領府機関安全保障室(GSI/PR)を通じて、国家サイバーセキュリティ戦略(E-Ciber)と連携し、米州開発銀行、国立経済社会開発銀行(BNDES)などの機関と協力して、融資に技術支援、研修、コンプライアンス支援、成熟度評価、インシデント後の復旧支援を組み合わせた補助付き融資モデルの構築を進めています。

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この取り組みは、サイバーセキュリティをITコストではなく、経済的レジリエンスの課題として捉え直すものです。中小企業が手頃な価格でサイバー関連のリソースを利用できるようにすることで、ブラジルはシステミックなサイバーリスクの低減、サプライチェーンの強化、国内の雇用と国内総生産(GDP)の大きな割合を占める部門のレジリエンス向上を目指しています。

また、Hackers do Bem(善良なハッカー)イニシアチブを通じて、若者に雇用機会を提供しながら、研修と無料の技術支援も実施しています。

世界経済の技術インフラの安全確保に不可欠なSCFM

インターネットは世界人口の3分の2超をつなぎ、AIや新興技術の基盤となっています。その健全性は、国家安全保障、経済的繁栄、公衆衛生と安全に大きな影響を及ぼします。

サイバーセキュリティのための持続可能で、インパクトがあり、透明性の高い資金調達メカニズムは、世界経済の技術インフラを守り、資源不足に直面する組織や人々を保護するための基本要件です。

技術進歩の恩恵を最大限に実現し、デジタル公共空間をすべての人にとって安全で安心な場所にするには、持続可能なサイバーセキュリティ資金調達メカニズムを確立すべき時です。

本ブログの執筆者: サイバーセキュリティに関するグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーアンナ・マリア・コラード、KnowBe4、コンテンツ戦略担当上級副社長兼アフリカ担当CISOアドバイザー;アン・クリーブランド、カリフォルニア大学バークレー校、長期サイバーセキュリティセンター事務局長;ホダ・アル・フザイミ、ニューヨーク大学アブダビ校、研究成果の社会実装・起業担当副学長補佐;ジェイミー・ソーンダース、オックスフォード大学オックスフォード・マーティン・フェロー;マイケル・ダニエル、サイバー・スレット・アライアンス会長兼最高経営責任者(CEO);およびサミール・スーリヤカント・パティル、オブザーバー・リサーチ財団(ORF)安全保障・戦略・技術センター所長。

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