サイバー犯罪:重要インフラは危機にさらされており、官民一体の対応が必要

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  • ロシアによるウクライナ侵攻を受けて生じた地政学的緊張により、重要インフラへのリスクが高まっている。

  • 米国と欧州では、政府機関、法執行機関、企業、学術機関がサプライチェーンを狙ったサイバー攻撃の被害を受けている。

  • サイバー犯罪への対処には官民連携が不可欠であり、世界経済フォーラムはレジリエンスを構築するため、複数の取り組みを主導している。

ここ数カ月、サプライチェーンを狙ったサイバー攻撃が相次ぎ、米国と欧州の多数の政府機関、法執行機関、企業、大学に影響を及ぼしている。

こうしたサイバー攻撃の顕著な例が、組織がデータ転送に広く利用しているファイル共有ソフトウェア「MOVEit」のゼロデイ脆弱性を悪用した攻撃だ。

このサイバー攻撃を主導したのは、ロシア語を話すサイバー犯罪グループ「Clop」または「Cl0p」で、大規模なランサムウェア・アズ・ア・サービスの攻撃キャンペーンで知られる。このハッカー集団は2019年2月から活動しており、標的にしたのは米国を拠点とする3,000以上の組織と、世界各地の8,000の組織に上る。

2021年にインターポール主導でウクライナでグループのメンバー数人が逮捕されたにもかかわらず、5月下旬のこのサイバー攻撃は、グループの関係者が依然として活動を続け、危険な存在であることを示している。

公共部門を標的にするサイバー犯罪者

6月7日、米国のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は、連名でサイバーセキュリティ勧告を連邦捜査局(FBI)と発表し、侵害を受けた複数の連邦機関への支援を提供していると明らかにした。

米国で被害を受けた機関には、エネルギー省と国家核安全保障局が含まれる。公共部門のその他の被害者には、カリフォルニア州の公的年金基金、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ミネソタ州教育省、ニューヨーク市の公立学校制度、英国の通信規制機関オフコム、カナダのノバスコシア州政府がある。一方、被害を受けた企業には、シーメンス・エナジー、シュナイダーエレクトリック、シェル、BBC、ブリティッシュ・エアウェイズが含まれる。

このハッカー集団はダークウェブ上のページで被害者の名前を公表して非難し、恐喝交渉に入る方法を説明するとともに、身代金が支払われなければ盗んだデータを公開すると脅している。

長年にわたり、Clopは身代金として数十万ドル、時には数百万ドルを要求してきた。しかし、このハッカー集団は、標的は民間企業だけであり、政府や法執行機関のデータは削除すると主張したとされる。

欧州では、航空交通管制機関ユーロコントロールが昨年4月、ハッカー集団キルネットの攻撃を受けた。サイバー犯罪者らは分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を仕掛け、ウェブサイトに障害を引き起こしたが、幸い欧州の航空運航への影響はなかった。

キルネットは親モスクワ派のハッカー集団で、サービス妨害攻撃で悪名高い。この集団は、政府がロシアの飛び地カリーニングラードへの特定物資の通過を阻止する決定をしたことへの報復として、6月26日のリトアニアの公共サービスに対するサイバー攻撃についても犯行声明を出した。

ハッカーが行うサイバー攻撃の7つの段階
ハッカーが行うサイバー攻撃の7つの段階
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同様に、6月下旬には、ルクセンブルク市議会と欧州投資銀行(EIB)のウェブサイトが、DDoSサイバー攻撃により数時間にわたって停止した。

キルネットと他の2つのサイバー犯罪グループは、それ以前にテレグラムのチャンネルで、欧州の銀行システムへの攻撃を予告していた。しかし、サイバー攻撃による影響はEIBのウェブサイトが一時的に停止したことだけだった。

スイスの政府機関や州当局も、5月と6月に相次いだ攻撃の標的となった。6月12日には、DDoS攻撃によってスイス連邦政府のウェブサイトが停止した。この攻撃は、ハッカー集団NoNameが、スイスによるロシアへのEU制裁採択への報復として仕掛けたとされる。

同様に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が議会で演説する1週間前には、スイス連邦議会のウェブサイトがDDoS攻撃を受けた。同じNoNameハッカー集団が、テレグラムのチャンネルで犯行声明を出した。

スイスの公共部門はそれ以前の5月中旬にも、サプライチェーン攻撃によって侵害されていた。スイス政府のソフトウェア提供企業が、ハッカー集団Playによるものとされるランサムウェア攻撃の被害に遭った。

この侵害は、同国の連邦警察庁、連邦税関・国境警備局、スイス連邦鉄道、複数の州当局に影響した。スイス国家サイバーセキュリティセンターは、盗まれたデータにはスイスのさまざまな当局の業務データや組織のデータが含まれると確認した。

これを受け、連邦参事会はランサムウェア事件の調査を管理する危機対応チームを設置し、サイバーセキュリティを強化するため、連邦行政機関のITサービスプロバイダーとの現行契約を見直すことにした。

サプライチェーンのサイバーレジリエンス強化が急務

スイスを襲った今回の事件とMOVEitのランサムウェア攻撃は、第三者に関連するサイバーセキュリティリスクと、公共部門に及び得る影響を浮き彫りにしている。

サイバー犯罪は国境を越えて行われ、その犯罪者と政府機関とのつながりは不明確な場合が多い。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた地政学的緊張により、重要インフラとそのサプライチェーンへのリスクが高まっている。

欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)は、重要インフラのレジリエンスに関するEU・NATOタスクフォースの発足により協力を強化し、エネルギー、輸送、デジタルインフラ、宇宙に焦点を当てている。

米国の新たな国家サイバーセキュリティ戦略も、重要インフラの保護と、連邦政府による妨害活動の統合および官民の実務協力の強化を通じた脅威アクターの妨害・解体の必要性を強調している。

その例として、2023年4月に行われ、Genesis Marketとして知られる最大の違法サイバー犯罪フォーラムの閉鎖につながった国際警察作戦「クッキー・モンスター」が挙げられる。また、2023年1月に公表されたFBIによるランサムウェアグループ「Hive」への妨害作戦や、さらに最近では、ロシア連邦保安庁が2023年5月にスパイ活動で使用したマルウェア「Snake」とデータ窃取ネットワークをファイブ・アイズが無力化したこともある。

サイバー犯罪への対処に不可欠な官民連携

複雑化し相互接続が進む技術エコシステムにおいて、重要インフラはさまざまなサイバー脅威にさらされている。航空、製造、石油・ガス、電力などの重要分野におけるシステミックリスクを軽減し、サイバーレジリエンスを高めるため、世界経済フォーラムのサイバーセキュリティセンターは、企業、政府、市民社会、学術界にまたがるマルチステークホルダーのコミュニティを結集している。

こうした業界に焦点を当てた分野横断的な取り組みを受け、世界経済フォーラムは枠組みを策定し、石油・ガス業界全体のサイバーリスク評価を可能にした。

さらに2021年には、欧州委員会のエネルギー総局の要請を受け、電力分野のサイバーレジリエンスに関する取り組みが、EUのサイバーセキュリティ指令NIS 2.0(ネットワーク・情報セキュリティ)およびCER(重要事業体のレジリエンス)に関する15の提言を発表した。

世界経済フォーラムはサイバーセキュリティにどのように取り組んでいるのか

サイバーセキュリティセンターは、リーダーたちが集い、進化するサイバーリスクとそのシステミックな影響を理解するための信頼できるプラットフォームを提供している。相互接続が進むデジタル社会において、理解と信頼の構築に取り組んでいる。

分野を越えた協力と知見の共有を促すことで、同センターはパートナーによるサイバーレジリエンスの強化を支援し、共同での対応が必要な課題への対処を後押しする。

同センターの取り組みを見る

重要インフラのサイバーレジリエンス強化に向けた取り組みに加え、世界経済フォーラムはサイバー犯罪対策パートナーシップも主導している。2020年以降、この取り組みには法執行機関、国際機関、サイバーセキュリティ企業、サービスプロバイダー、非営利団体が参加し、サイバー犯罪の妨害に取り組んでいる。

サイバー犯罪の増加に対処する取り組みとして、サイバーセキュリティセンターは1月にダボスで開催された2023年年次総会で、サイバー犯罪アトラスを立ち上げた。この取り組みは、フォーティネット、マイクロソフト、ペイパル、サンタンデールの支援を受けている。

この新たな取り組みでは、脅威の状況をマッピングし、公開データと自発的に共有された情報に基づくサイバー犯罪リポジトリを作成することで、法執行機関がサイバー犯罪により効果的に対処できるようにする。

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