標準化団体からコンピューター緊急対応チームまで、非営利団体は、政府や市場だけでは再現できない形で、世界のサイバー・レジリエンスを陰から支えている。
資金不足の非営利団体や市民社会組織は「セキュリティ貧困ライン」を下回り、生態系全体を連鎖的なサイバー脅威にさらしている。
Common Good Cyber Fundのような共同資金調達の仕組みは、世界のサイバー・レジリエンスを強化し、人権を守るための、拡張性と公平性を備えた方法となる。
サイバー犯罪はしばしば、いたちごっことして捉えられる。犯罪者は対策の先を行こうと技術革新を続け、政府は犯罪者の責任を追及しようとする。民間部門はその中間に位置し、顧客を守り、法執行機関に協力しながら、利益の最大化を図る傾向がある。
しかし、非営利団体もインターネットの安全を守るうえで、目立たないながらも欠かせない役割を担っている。
たとえば、標準化団体はネットワークが安全に相互接続するための技術プロトコルを策定する。オープンソースのプロジェクトは重要なサイバーセキュリティ・ツールを維持する。インフラを担う非営利団体は、インターネットの機能を支える名前、番号、ルーティングの各システムを保護している。
非営利団体は国境を越えて活動し、共有の防御ツールを提供し、そうでなければ孤立しかねない関係者間の信頼を築く。
一方、各国や地域のコンピューター緊急対応チームは、インシデント発生時に迅速な対応と調整を行う。
これらは、公益のために活動する組織のほんの一例だ。こうした組織は力を合わせ、政府にも民間部門にも単独では実現できない形で、信頼を築き、レジリエンスを高め、協力を可能にしている。
しかし、サイバー犯罪に対する体系的な防御を支える役割を果たし続けるには、非営利団体への資金が著しく不足している。その結果、世界的なセキュリティの空白が生じ、個人、組織、そして国家全体が危険にさらされている。
サイバー・レジリエンスにおける公平性が重要なのはなぜか?
非営利団体は国境を越えて活動し、共有の防御ツールを提供し、そうでなければ孤立しかねない関係者間の信頼を築く。体系的な支援なしにこうした機能を果たすことを期待するのは、先見性を欠き、危険であり、長期的に持続可能ではない。
最もリスクにさらされているのは、専門家が「セキュリティ貧困ライン」と呼ぶ水準を下回る人々や組織だ。学校、医療機関、ジャーナリスト、政府監視機関、市民社会組織は、自衛のための備えが最も不十分な一方で、サイバー攻撃による最も深刻な被害に直面している。
この脆弱性は、単なる逸話ではない。世界経済フォーラムの『Global Cybersecurity Outlook 2026』の調査データによると、地域、セクター、組織規模によってサイバー対応能力には依然として大きな偏りがあり、個々の組織を超えて広がるシステミックリスクを生み出している。
小規模組織は、サイバー・レジリエンスが不十分だと報告する可能性が2倍高い。また、セクター別に見ると、NGOの37%、公共部門の組織の23%がレジリエンスの不足を報告しており、民間部門の11%を大きく上回る。
こうした格差は、相互につながる生態系全体とサプライチェーンを連鎖的なサイバーリスクにさらし、専門家がますます「サイバー不公平」と呼ぶ状況を深刻化させている。
こうした脆弱なコミュニティの一部は、デジタル技術を使った越境弾圧の被害者となるリスクがある。権威主義政権がオンラインで影響力を拡大し、反体制派を黙らせ、嫌がらせをし、危険にさらす行為だ。
サイバー脅威の状況はどのようなものか?
資源不足に加え、市民社会は特に脅威が集中する状況に直面している。CyberPeace InstituteのCyberPeace Tracerは、2018年以降、NGOを標的としたデジタル脅威を60万件超記録している。
その中には、数十万件に及ぶフィッシングの試みや認証情報の流出が含まれる。攻撃の規模は、より大規模で資金も潤沢なセクターが直面するものに匹敵し、ほとんどの市民社会組織が検知・対処できる範囲をはるかに超えている。
こうした攻撃はデータを侵害するだけではない。脆弱な人々を支える不可欠なサービスやプログラムを妨害しており、デジタル・レジリエンスを中核的な戦略課題として高める必要性を浮き彫りにしている。
サイバー犯罪は世界規模で急速に進化し、非常に高い利益を生む。だが、私たちはこれを公共財として扱わなければならない……
この不公平を生み出す最大の要因の一つが、世界的なサイバーセキュリティ人材の不足だ。『Global Cybersecurity Outlook 2026』によると、サイバーセキュリティの専門知識の不足は、NGO(51%)と公共部門(57%)にとって、レジリエンス上の課題のうち重要度で2番目に位置する。
サイバー・レジリエンスが不十分だと報告した組織のうち、85%は重要なスキルや人材の不足も報告している。レジリエンスが非常に高い組織では、この割合はわずか22%だ。
こうした人材の不足は、ラテンアメリカ・カリブ海地域やサハラ以南のアフリカなど、すでにサイバーリスクが高い地域で特に深刻だ。これらの地域の組織は、サイバーセキュリティの目標達成に必要なスキルが不足していると報告している。
非営利団体はどうすればサイバー防御を拡大できるか?
誰もが、すべての人のためにインターネットを守る役割を果たせるようにしなければならない。その解決策の一つが、オンラインで公益を守る組織への資金提供を目的に、非営利団体の連合がInternet Societyと協力して立ち上げたCommon Good Cyber Fundだ。
主要7カ国(G7)の首脳の支持を受け、この取り組みにより、政府と民間部門が資金を拠出し、非営利団体の活動の効果を広げ、リスクの高い脆弱な主体に支援を届け、すべての人に恩恵をもたらす体系的な防御を継続できるようになる。
この基金は資金調達の手段であると同時に、変化を促すきっかけでもある。共同投資のためのプラットフォームを設けることで、資金提供者と非営利団体は優先課題を共有し、介入策をより効果的に評価し、寄付者と助成先の負担となる間接費を削減できる。そうすることで、インターネットを共同で守るための、より強固でレジリエンスの高い基盤が築かれる。
サイバー犯罪は世界規模で急速に進化し、非常に高い利益を生む。これに対抗するには、非営利団体を含め、生態系を構成するすべての主体がそれぞれの役割を果たす必要がある。

