グローバルリスク報告書が環境問題を中心に据えるのは、今回が初めてです。
地経学的・政治的圧力が短期的な懸念の上位を占めています。
極端な暑さや生態系の喪失など、気候関連の問題が強調されています。
洪水や干ばつに見舞われ、火災がオーストラリアやアマゾンを荒廃させた年を経て、10代の気候活動家グレタ・トゥーンベリがタイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。環境問題が将来に対する指導者たちの懸念を支配しているのも、おそらく驚くことではありません。
しかし、世界経済フォーラムの最新のグローバルリスク報告書2020年版は、警鐘がいかに大きく鳴らされているかを示しています。経験豊富な指導者も新進の指導者も、気候変動が世界の直面する突出した長期リスクだという点で一致しています。
発生可能性と影響の大きさに基づいて世界が直面する主な脅威を特定する同報告書は、気候変動の緩和と適応の失敗を、フォーラムのビジネスリーダー、NGO、学者などのネットワークにとって最大の懸念事項に挙げています。このグループは、今後10年間のリスクについて、影響度では第1位、発生可能性では第2位としています。
実際、報告書の基礎となる「グローバルリスク認識調査」の回答者は、異常気象や生物多様性の喪失など地球温暖化に関する問題を、今後10年間の発生可能性で上位5つのリスクに挙げています。2006年の報告書創刊以来、単一のカテゴリーが上位を独占するのは初めてです。
気候変動に対して、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っていますか?
気候変動は、多くの人々の予測を上回る深刻さで、より速いペースで進行しています。また、地球温暖化を抑制するという約束の履行に向けた取り組みは遅れ、各国は軌道から外れつつあります。フォーラムの若手参加者であるグローバル・シェイパーズ・コミュニティにとって、環境問題はさらに差し迫った課題であり、短期・長期の懸念事項の筆頭に挙がっています。
経済の暗雲が広がる
脆弱なマクロ経済構造と金融格差を背景に、世界経済への下押し圧力が強まっており、調査対象となった「マルチステークホルダー」は、これを最大の短期的脅威とみなしています。
指導者たちがますますナショナリズム的な政策をとるなか、停滞のリスクも高まっています。回答者の4分の3を超える人々は、暗さを増す経済見通しと国内の政治的分極化が、短期的にさらに起こりやすくなると考えています。
貿易摩擦や地政学的な動揺も経済の不確実性を高めています。とりわけ、米国と中国の貿易対立がもたらす潜在的な影響が懸念されます。この2か国は、世界のGDPの40%超を占めています。また、世界の温室効果ガス排出量の上位2か国でもあります。そのため、世界経済の動向や気候変動への対応力は、両国と切り離せない関係にあります。
デジタル世界のリスク
地政学的・経済的な不確実性は、デジタル技術をめぐる懸念も引き起こしています。アクセスの不平等、ガバナンスの欠如、そして頻度と被害が増すサイバー攻撃です。
不確実な時代を生きる
長年にわたり積み重なってきた相互に関連するリスクが、影響を及ぼし始めていることを報告書は指摘しています。世界経済の同期的な減速、観測史上最高の気温、そして不安定さを増す地政学的環境が、大きな課題を生み出しています。
「こうした動きに直面し、目の前の課題が即時の集団行動を求めているにもかかわらず、世界社会の亀裂が広がる一方に見えることは、憂慮すべきです」と報告書は述べています。
地政学的・地経学的な不確実性の霧が晴れるのを待ってから行動するのは現実的な選択肢ではなく、差し迫った問題に対処するための重要な機会を逃すことになる、と報告書は続けています。
明るい兆しは、世界が分断されるなかでも、一部の企業が貸借対照表の枠を超えて、迫り来る喫緊の課題に取り組むことを約束している点です。
「グローバルリスク認識調査」の方法は?
年次調査である「グローバルリスク認識調査」では、フォーラムのビジネス、政府、市民社会のネットワークに属する人々や、有識者に、世界が直面するリスクの評価を求めています。
調査は4つの項目で構成されています。
1. 2020年の世界。回答者は、40の課題に関連するリスクが、前年と比べて今年増加するか減少するかを問われました。
2. グローバルリスクの評価。30のグローバルリスクについて、回答者は今後10年間の発生可能性と潜在的な影響を問われました。
3. グローバルリスクの相互連関。回答者は、最も強く相互に関連するグローバルリスクを3~6個選ぶよう求められました。
調査では合計1,047件の回答が寄せられました。
『グローバルリスク報告書2020』は、世界経済フォーラムのダボス年次総会に先立って発表されます。同報告書は政府や組織に対し、特定の脅威がもたらす影響に対処し、脅威が発生した場合に潜在的な被害を抑えられるよう備えることを促しています。


