人工知能(AI)や気候変動対策から公共サービスの提供に至るまで、大きな転換には信頼の構築が欠かせない。
そのためには、選挙サイクルや四半期業績、社会の不安や疲弊が高まる局面を越えて、行動を継続する必要がある。
サンフランシスコの3分別ごみ処理制度は、政策を着実に実行することで、抽象的な環境目標を日々の習慣に変えられることを示している。
未来への信頼は揺らいでおり、人々の人工知能(AI)に対する見方にもその動きが表れている。スタンフォード大学の2026年AIインデックスによると、世界の人々の59%はAI製品やサービスの利点が欠点を上回ると考える一方、52%はAIに不安を感じるとも答えている。
これは指導者への警告であり、イノベーションへの反対論ではない。新しいシステムは、高度であるというだけでは正当性を得られない。人々が知りたいのは、誰が恩恵を受け、誰が負担を担い、テクノロジーが仕事やインフラ、日常生活を変えるときに誰が責任を負うのかということだ。
未来への信頼を築く
気候変動は、こうした問いを何十年にもわたって突きつけてきた。
世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2026』では、今後2年間の見通しで地経学的対立、偽情報、社会の分断が大きなリスクとなる一方、10年先では環境リスクが支配的となっている。指導者は、差し迫った課題に対応しながら、長期的に重要な課題を見失わず、この両方の時間軸にまたがって統治しなければならない。
気候政策には、未来への信頼を築くという指導者の課題が凝縮されている。指導者は、今行動して何年もかけて表れる恩恵を生み出すとともに、多くの人の目に触れないシステムを通じて、誰が費用を負担し、誰が恩恵を受け、誰が責任を負うのかを決めなければならない。同じ問いは、労働者、顧客、地域社会が企業の転換を受け入れるか、また公共政策が論争や指導者の交代を乗り越えられるかにも関わる。
この課題は都市で具体的な形をとる。世界的な目標が人々に届くのは、道路や建物、ごみ処理システム、健康施策、そして日々の公共サービスの質を通じてだ。
信頼される公共サービスをつくる
移民の子どもとしてサンフランシスコのチャイナタウンで育った私は、公共サービスを理論としてではなく、規則が分かりやすいか、制度が公平か、人々が自分たちをその一員として扱われていると感じられるかを通じて、家族とともに体験した。
現在、サンフランシスコ環境局の局長として、私は目標を人々が利用できるシステムに変える仕事をしている。その経験から、信頼とは運用によって築かれるものだと学んだ。
身近な3つのものを考えてみよう。それは、 サンフランシスコの3分別ごみ収集制度で使われている青、緑、黒のごみ容器だ。これらの容器と制度は、制度がいかに持続的な参加を促せるかを示している。
この制度が始まる前、サンフランシスコではリサイクルや堆肥化が可能なものの多くがごみとして扱われていた。そこで1999年、市は「ファンタスティック・スリー」プログラムを2,800世帯と50の小規模事業者を対象に試験導入した。8カ月以内に、この試験事業によって埋め立て処分されるはずだった廃棄物のほぼ46%が転用された。
2009年から市は、住民と事業者の全員に、リサイクル可能なもの、堆肥化可能なもの、ごみを3種類の容器に分別するよう義務づけた。堆肥化された廃棄物の量は、1日あたり約400トンから600トン超に増加した。事業者の参加は75%増え、堆肥化に取り組む集合住宅の数は3倍以上になった。
時間をかけて行動を変える
こうした数字は重要だが、主役ではない。数字は行動の変化を示す証拠だ。
住民が生ごみを緑の容器に入れるのは、容器が使える場所にあり、説明が分かりやすく、収集ルートが稼働しているからだ。レストランが厨房の配置を変えるのは、従業員が研修を受け、営業中もシステムが機能するからだ。子どもは学校で分別を学び、その習慣を家庭に持ち帰る。
一つひとつの行動の背後には、収集契約、運転手、厨房用の回収容器、多言語での周知、掲示物、学校プログラム、事業者向け研修、物件管理者向けツール、ごみ監査、顧客対応、取り締まり、報告からなる、より大きなシステムがある。
このシステムは魔法ではない。制度を運用する力を目に見える形にしたものだ。また、まだ完成してはいない。ごみへの異物混入は続き、参加の度合いにも差がある。安定したサービスには、継続的な資金、教育、取り締まり、労働力の確保が今も欠かせない。信頼は勝ち取るだけでなく、維持しなければならない。
同じ原則は、コロンビアのメデジンでも、ダボス・バウクルトゥール・アライアンスの「パイオニアリング・プレイシズ」プログラムの一環として実践されている。地域住民とのワークショップを通じ、7車線の高速道路の約400メートルが、遊び場、スポーツ施設、文化スペースを備えた川沿いの公園「パルケ・デル・リオ」へと生まれ変わった。
メデジン市は現在、この取り組みを北へ広げており、「パルケ・プリマベラ・ノルテ」は2027年の完成を予定している。目に見える成果が自信を生み、取り組みを拡大する勢いにつながった。
大きな転換を前に信頼を得る
状況は異なっても、指導者が学ぶべきことは同じだ。人々に大きな転換を信頼してもらう前に、次の5つを問いかけよう。
人々は問題を理解し、公共の利益を見通せるか。
日々の暮らしのなかで、無理なく参加できるか。
費用、負担、トレードオフが率直に認められているか。
システムを機能させる責任者が明確になっているか。
次の協力を得られるほど、確実にサービスが提供されているか。
これらの問いが当てはまるのは、ごみ処理システムだけではない。より環境に配慮した建物、交通、食料システム、新しいテクノロジーにも当てはまる。AIは、人々の暮らしを向上させ、機会を生み、学び方、働き方、問題解決の方法を変える可能性がある。一方で、生計を脅かし、恩恵を一部に集中させ、意思決定への影響力が乏しい地域社会やエネルギーシステムに新たな負荷をもたらす可能性もある。
課題は異なるが、どれにも信頼が問われる。
信頼され、確実に機能する制度を築く
目標を掲げ、発信し、数値目標を定め、製品を発売し、公に発表しても、制度に実行能力がなければその代わりにはならない。未来を見据えたシステムが正当性を得るのは、指導者がその仕組みを分かりやすく、責任の所在が明確で、公共の利益に結びついたものにし、約束を現実にする能力を整えたときだ。
だからこそ、気候政策は気候変動対策にとどまらず重要なのだ。責任を実行可能なものにし、公平性を真剣に考え、機能する公共サービスで約束を支えることで、指導者が長期にわたって行動できると示している。
指導力を測る最良の基準は、今日の人々を守れるほど確実に機能し、将来の世代のためにも機能し続けるほど信頼される制度を築けるかどうかだ。




