かつてはニッチな分野だった世界のインパクト投資市場は、今や1兆ドルを超える規模です。
企業が社会や環境に及ぼす影響をどのように測定するかは、ステークホルダーにとって極めて重要です。
ここでは、インパクト評価がいかにビジネス価値を高め、企業の事業運営を一変させ得るかを紹介します。
自社のインパクトを測定し、価値を評価していますか。そうでなければ、評価すべきです。ステークホルダーが重視するのは、インパクトの測定指標です。ステークホルダーとは、事業の成功に利害関係を持つ個人や集団を指します。そのため、何が彼らにとって重要なのかを理解することが極めて大切です。
1973年に「ダボス・マニフェスト」で示されたように、企業のステークホルダーには顧客、株主、従業員、そして社会が含まれます。企業のリーダーは、すべてのステークホルダーの利害を認識する必要があります。インパクト評価は、関連する事業活動の影響を受けるステークホルダーのウェルビーイングに生じた変化を測定します。言い換えれば、これはステークホルダー資本主義を実現するための経営概念であり、ビジネス界で広がりつつあります。
インパクト投資は、最も急速に成長している投資分野
2017年の初期段階から、わずか数年でニッチな分野として認知されるまでに成長した世界のインパクト投資市場は、今や象徴的な1兆ドルの大台を超えています。実際、最新のグローバル・インパクト投資ネットワークによる2022年10月の報告書では、市場規模を1兆1,640億ドルと推計しています。
インパクト投資にはさまざまな形態がありますが、共通しているのは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を遅らせたり停滞させたりする資金不足の解消を目指すことです。この取り組みの枠組みを示しているのが、インパクト・マネジメント・プラットフォームです。インパクト投資に関する基準、指針、行動を提示しています。
世界経済フォーラムは、企業が持続可能な開発目標の達成に向けたプラスの貢献を追跡できるよう、どのような支援をしているのでしょうか?
インパクト評価とは何か。ビジネス価値をどのように高めるのか?
企業の価値創造を促すインパクト評価の重要な役割は、まだ十分に知られておらず、確立もされていません。では、企業がインパクトを測定し、価値を評価するとはどういうことでしょうか。まず、インパクト評価とは、社会や環境に関わる企業の正と負の外部性を定量化し、価値を評価することです。
適切に行われるインパクト評価は、事業活動が意図した影響と意図しなかった影響の両方を対象とします。これには企業の製品やサービス、事業運営、サプライチェーンが含まれます。正と負の外部性を可能な限り体系的かつ包括的に評価することで、インパクト評価は、株主だけでなくすべてのステークホルダーに価値をもたらす意思決定を企業が行う助けとなります。
インパクト評価とは、社会や環境に関わる企業の正と負の外部性を定量化し、価値を評価することです。
ソンヤ・ハウト、ノバルティス、戦略的測定・重要課題担当責任者
インパクト評価は、企業がステークホルダー資本主義を実践するうえで、3つの方法で役立ちます。第一に、企業が自社のインパクトを特定し、理解する助けとなります。この洞察は、戦略面での大きな前進です。第二に、プラスの影響を最大化し、マイナスの影響を最小化するための目標設定や投資先の選定に役立ちます。第三に、すべてのステークホルダーに価値を生み出す取り組みの進捗を追跡し、報告する助けとなります。
インパクト評価にはどのような利点があるのでしょうか?
インパクト評価の利点への関心が高まっています。2020年のデロイト・レビューの記事「企業の社会的インパクトのビジネス価値を測る:社会的価値を超えて企業業績へ」に着想を得て、インパクト評価がビジネス価値を高める7つの領域を特定しました。
ブランドの差別化:企業、製品、サービスがプラスの影響をもたらしていることを示す証拠が、消費者の選択をますます左右しています。
人材の獲得と定着:従業員は、世界にプラスの影響を与える企業で働きたいと考える傾向を強めています。
イノベーション:例えば、環境・社会面の負荷を低減する取り組みが技術者の創造力を刺激することがあります。また、製品やサービスの総合的なインパクトを透明化することで、効果的な市場投入につながります。
業務効率:例えば、エネルギー使用、廃棄物、水質汚染による影響を減らすことは、コスト削減に直結します。
リスクの軽減:社会・環境リスクへのエクスポージャーを透明化することは、業務上不可欠であり、欧州では間もなく規制要件となります。
資本へのアクセスと市場評価:効果的なインパクト管理が、インパクト投資への道筋となります。
テーマとの整合:インパクト評価は、企業がステークホルダーとの信頼関係を築く助けとなり、それは長期的な成功に不可欠です。
企業の利益を社会の利益と一致させる方法
世界各地で、さまざまな業界からインパクト評価の実践者が急速に増えています。彼らは経験を通じて、この手法が売上高、利益、企業価値を高めることを知っています。インパクト評価の概念を完成させるにはまだ多くの課題がありますが、すでに企業の事業運営を一変させる可能性を秘めています。
私たちは、先行きが定まらず不確実な時代に生きています。変革の取り組みの一部は遅れる一方、別の部分は加速しています。しかし、世界が着実にステークホルダー資本主義へと向かうなか、インパクト評価は、企業が主要なステークホルダーとの関係を管理するうえで、ますます重要な手段となるでしょう。事業活動の影響を理解することで、企業は資本を含む資源の配分について、より十分な情報に基づいて意思決定し、ステークホルダー価値を引き出せるようになります。
時間をかけて適切に取り組めば、インパクト評価は、社会・環境課題を抱える世界で企業が繁栄し、長期的な価値を生み出す助けとなります。また、企業の利益と社会の利益を一致させることにも役立ちます。インパクト評価を新たな常識、つまり企業の日々の事業運営のあり方として定着させることは、資本主義と、それが依存する広範な経済・社会・環境システムの双方を持続させるうえで欠かせません。


