エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は最近、世界各地の企業が人権を尊重する責任についてどのように考えているかを調べた 報告書 を発表しました。その調査結果は主に、2014年11月と12月に実施された、企業幹部853人を対象とする世界規模のオンライン調査に基づいています。
EIUの報告書は、ビジネスと人権の分野における基礎的な調査です。とりわけ、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)やOECD多国籍企業行動指針など、新たな世界基準の実施状況の進捗を追跡する重要性を踏まえれば、その意義は大きいといえます。
本稿では、「 Measuring Business & Human Rights 」プロジェクトの共同ディレクターとしての経験を踏まえ、EIU報告書の興味深い調査結果を簡潔に紹介します。
楽観できる理由
EIU報告書の最も心強い調査結果の一つは、事業を展開する場所を問わず、企業は人権を尊重すべきだと認識する企業幹部が非常に多いことです。回答者の84%は、「人権の尊重は政府の問題であり、企業の問題ではない」という意見に反対しました。また、71%は「人権を尊重する企業の責任とは、関連する現地法を順守することだけを意味する」という意見に反対しました。
企業幹部に、自社が人権への負の影響を直接引き起こしているのではなく、取引関係を通じて間接的に関与している現実の事例を示した場合も、この傾向は変わりません。たとえば、回答者の85%は、「世界的な大規模スポーツ大会のスポンサーは、準備に関わる労働者と地域社会の権利がすべての関係者によって尊重されるよう、影響力を行使すべきだ」と考えています。一方、62%は、「バングラデシュのラナ・プラザ工場崩壊事故の再発を防ぐ責任は、バングラデシュ政府ではなく、主に同工場から製品を購入する多国籍企業にある」と考えています(強調は原文)。 主に の責任にある」と考えています(強調は原文)。
企業内でも、人権問題がますます主流の議題になっています。回答者の85%は、自社が人権を尊重する責任を果たす取り組みにCEOが関与していると答えました。さらに、回答者のほぼ半数は、CEOが実際にこのプロセスを主導していると具体的に述べました。
さらに、この調査は、企業は一般に規制に反対するという前提に疑問を投げかけました。回答者の57%によると、ビジネスと人権に関する新たな法的拘束力のある国際条約は、自社が人権を尊重するうえで役立ちます。回答者の30%は、人権デューデリジェンスの義務化によって、企業が人権を尊重する責任をより適切に果たせるようになると指摘しました。
懸念される理由
UNGPsとOECD指針によれば、人権デューデリジェンスの第一段階(そしておそらく最も容易な段階)は、人権に関する声明を公表することです。残念なことに、EIUの調査対象企業のうち、「人権」に明示的に言及した方針声明をすでに採択しているのは22%にすぎません。さらに悪いことに、短期的な改善は見込み薄です。今後12カ月以内に、人権を尊重するという自社のコミットメントを示す方針声明を公表する予定の企業は、わずか6%です。
人権方針の採択率が低い背景には、認識の誤りという深刻な問題があります。EIU報告書は、自社の人権方針は競合他社より優れているという意見に 強く 同意した回答者の4分の1について、別途分析しました。この自己評価を基準とする210社のグループを、EIUは「リーダー」と定義しました。
予想どおり、「リーダー」は他社よりも方針声明を公表している可能性が高いものの、その割合は依然として非常に低く、30%です(非リーダーでは19%)。つまり、自己評価で人権分野の「リーダー」とした企業のうち130社は、人権に関する公開の方針声明がないにもかかわらず、人権面で競合他社を上回っていると考えています。
認識の誤りには、展望の欠如も伴っています。この調査では、今後12カ月間における回答者の企業の人権上の優先課題を尋ねました。EIUは回答しやすいよう、選択肢をいくつか提示しました。たとえば、「取引関係(例:ビジネスパートナー、サプライヤーなど)に関連して、人権への影響を監視・評価する企業の能力を強化する」や「人権問題に関して各国政府との関係を強化する」などです。回答者の5分の1は「上記のいずれでもない」と答え、さらに12%は「分からない」と回答しました。
最後に、EIU報告書は、投資家や株主の短期志向が、より広範な社会的懸念と企業の行動をつなぐうえで、依然として決定的に欠けている要素であることを確認しました。株主(国有企業の所有者を含む)からの圧力や働きかけを、自社が人権を尊重するというコミットメントの最大の推進要因の一つと考えた回答者は、わずか11%でした。人権を尊重する責任を果たすうえで、各部門がどの程度関与しているかを尋ねたところ、「投資家対応」は非常に低い順位でした。
進捗を追跡する重要性
企業には人権を尊重する責任があるという点で、ビジネス界の意見が一致しているように見えるなか、新たな世界基準をめぐる企業の考え方の変化を追跡することは、極めて重要な取り組みです。ビジネスと人権の問題に関する企業の認識を明確に理解できなければ、どの課題により注意を向ける必要があるのか、またどの取り組みがより効果的となりそうかを知ることはできません。
著者:Damiano de Felice。Access to Medicine IndexのCEO戦略アドバイザー、「Measuring Business & Human Rights」の共同ディレクター。「 Global Agenda Council on Human Rights 」メンバー、「 Global Shaper」。
画像:2014年6月30日、東京のビジネス街にある建物内でエスカレーターに乗る人々。REUTERS/Yuya Shino


