人々の避難は世界的な大きな課題であり、昨年は国境を越えた避難、または自国内で避難した人が1億1,700万人に上った。
その大半は国内避難民で、2023年には総数が約7,600万人に達した。この数字は25年間で4倍になっている。
地域に根差した計画、資金調達、エンパワーメントを通じて、世界中の何百万人もの避難を終わらせるため、連携した行動が必要だ。
人々の避難は21世紀における最も深刻な世界的課題の一つであり、その規模は年々拡大している。2000年には、国境を越えた避難、または自国内で避難した人は約3,500万人と推定されていた。2024年にはその数は3倍以上に増え、ほぼ1億1,700万人に達した。
あまり知られていないのは、避難する人の大半が他国ではなく、自国内で避難していることだ。2023年、国内避難民(IDP)は約7,600万人に達し、世界の難民を大幅に上回った。この数字は過去25年間でほぼ4倍となり、難民の世界的な増加率も上回っている。
国内避難民はしばしば、危機の忘れられた犠牲者となる。国境を越えていないものの、逃れることを余儀なくされた人々だ。ニュースで取り上げられることはほとんどないが、その苦境は他国にたどり着いた人々と同じくらい深刻だ。
国内避難民は世界で最も脆弱な立場に置かれた人々であることが多い。そのため、国連事務総長は国内避難に関する行動計画を策定した。同計画は、国内避難の解決策に関する特別顧問室の2年間の任務を経て、新たな段階に入ろうとしている。
国内避難への理解不足
国内避難への対応は前進してきたものの、理解の不足と可視性の大幅な低さが解決策を妨げ、必要とされる開発プログラムや人道支援を本来あるべき水準より大幅に低くしてしまうおそれがある。
問題の一端は、国内避難の戦略的重要性と、それが将来、あらゆる国や地域に何を意味するのかについて、世界レベルで理解が不足していることにある。
例えば、世界の国内避難の傾向を詳しく見ると、解決策の実施にあたっての重要な課題がいくつか見えてくる。山火事、洪水、モンスーンなどの災害による国内避難(移動)の件数は、毎年、紛争や暴力による避難を大きく上回っている。

また、災害による国内避難は地理的な分布がはるかに広く、紛争や暴力による国内避難よりも多くの国や地域社会に影響を及ぼすことも分かっている。
それにもかかわらず、毎年の国内避難民推計では、災害による国内避難民より紛争による国内避難民の方がはるかに多いことが常に示されている。2023年には、紛争による国内避難民が6,830万人と世界の国内避難民の大半を占め、災害による国内避難民は770万人だった。
主な理由は、紛争による避難が長期化することにある。紛争は統治制度、社会的結束、経済、インフラ、平和的共存に欠かせないその他の基盤をしばしば破壊するため、避難が長引く傾向にある。一方、災害による国内避難では、災害が収まった後に人々が帰還し、住宅などのインフラを修復または再建できることが多い。
アナリストや政策立案者がともに抱く重要な問いの一つは、災害による国内避難がいつ転換点を迎えるのか、ということだ。
災害の頻度と深刻さが増すにつれて、災害による避難が長期化し、繰り返される大規模災害が地域社会や国の対応能力を圧倒して、国内避難民が急増する時点が訪れる。
2022年のパキスタン洪水は、この問題を鮮明に示した。洪水の発生中および直後に、2,000万人以上が緊急の人道支援を必要とし、さらに150万人以上が避難を続けていた。洪水が収まってから1年以上が経過した後も、避難は続いていた。
気候変動対策と平和構築は、災害による国内避難が長期化するリスクを抑え、この壊滅的な転換点を回避するうえで極めて重要だ。また、既存の研究からは、国内避難民が国境を越える避難にも陥りやすいことが分かっている。特に、国内避難が長期化した場合はその傾向が強い。
国内避難民が避難を終えられるよう解決策を実現すること、そして国内避難のリスクにさらされた国や地域社会の予防策を積極的に支援することは、国内避難に関する行動計画の重要な柱となってきた。
多くの成果があり、現在、1,100万人を超える国内避難民が解決への道筋に乗っている。とはいえ、地政学的・経済的な逆風が強まる国際環境の中で、課題は依然として大きい。
世界経済フォーラムが新たに発表した「グローバル協力バロメーター2025」の分析レポートは、例えば、平和に関する協力がここ数年で大幅に低下し、今年、人々の避難がさらに増えるリスクを高めていることを示している。
国内避難民のために必要な行動
国連システムは、影響を受ける国々、ドナー、民間部門の組織と連携し、先手を打つ必要がある。国内避難民のための解決策を促進するとともに、可能な限り避難の防止に取り組まなければならない。
新たに設立された機関間の国内避難解決策調整ハブは、主導機関である国際移住機関、国連開発計画(UNDP)、国連難民機関(UNHCR)が率いる。国連カントリーチーム、国連常駐調整官、加盟国、国内避難民コミュニティを支援し、地域に根差した計画、資金調達、エンパワーメントを通じて、世界中の何百万人もの避難を終わらせる取り組みにおいて、重要な役割を果たす。
この取り組みの一環として、国内避難と国内避難民への認知を高めるとともに、特別顧問が2年間の任期を通じて慎重に築いた行動のための政治的基盤を引き継ぐ。国内避難が見えにくい状況に対処するには、人道支援資金にとどまらない持続可能な資金調達も必要だ。開発課題の議題を通じて、この問題の重要性を高めるためである。
国内避難民が避難を離れた生活を実現できるよう、効果的かつ連携した行動を取らなければ、人道支援への依存に逆戻りするおそれがある。その結果、何百万人もの国内避難民が明確な脱出経路もないまま避難状態に取り残され、国境を越える避難のリスクがさらに高まる可能性がある。
本記事で表明されている見解は著者個人のものであり、国際移住機関(IOM)または著者が所属するその他の組織の見解を必ずしも反映するものではない。



