循環型農業は、砂漠農業を再生型システムへと変革できます。
飼料の地元生産は食料安全保障を強化し、排出量を削減します。
Tanmiah Food Companyの高い評価を受ける取り組みは、他の水不足地域にも拡大できる青写真を示しています。
砂漠農業が、気候変動や持続可能性をめぐる世界的な議論の中心に取り上げられることはほとんどありません。
アラビア半島では、食料安全保障、土地劣化、水不足が重なり、差し迫っているものの見過ごされがちな課題となっています。サウジアラビアは食料の大半を輸入しており、乾燥した気候のため、従来型農業の余地はほとんどありません。
食肉や家禽肉の需要拡大が加わり、課題はさらに深刻化しています。では、天然資源がほとんどない場所で、砂漠農業をどのように再生型にできるのでしょうか。
その答えは、Tanmiah Food Companyが実践する循環型の発想にあります。1962年に設立されたこのサウジアラビア企業は、持続可能な価値の創出を信念に、中東全域で生鮮家禽肉、加工タンパク質、動物飼料、ヘルスケア製品を提供しています。
廃水で砂漠のオアシスを灌漑する
サウジアラビアでは水は石油と同じほど貴重であり、持続可能な農業は極度の水不足に対処しなければなりません。Tanmiahの施設では、養鶏場や加工工場から毎日約200万リットルの廃水が発生します。
この排水を処分する代わりに、Tanmiahは敷地内に廃水処理施設を建設し、農業用に再利用しています。かつては負担だった処理済み廃水が、今では資産となっています。Tanmiahの分析によると、年間約6億8,000万リットルの水が処理・再利用され、同社の土地にある樹木や作物の灌漑に使われています。
この大規模な水の再利用は、地下水を保全し、コストのかかる海水淡水化プロセスへの依存を減らします。
これらの灌漑された農園は、砂漠化対策と炭素吸収源の拡大を目的に開始された、廃棄物を価値に変える大胆な植林プログラム、Tanmiahの野心的な「100万本の植樹イニシアチブ」の一環です。
これは従来型の植樹キャンペーンではありません。廃棄物、水、排出量、飼料安全保障に関する複数の課題を、一体的な解決策へと結び付ける循環型農業モデルです。
2025年第1四半期時点で、Tanmiahの推定では、すでに55万本を超える樹木が植えられており、成長するにつれて約11万4,800トンの二酸化炭素(CO2)換算排出量を吸収する見込みです。
100万本の目標が達成されれば、樹木の生涯を通じた炭素除去量はCO2を大幅に削減すると予測されています。これらの農園は緑のオアシスとなり、地域の生物多様性を高め、周辺の気温を3~7度下げます。
モリンガ、「奇跡の木」
確立しつつある循環型経済モデルへの貢献を最大化するには、どの樹木を植えるかが重要な決定でした。「奇跡の木」とも呼ばれるMoringa oleifera(モリンガ)は、乾燥に強く、過酷な乾燥気候でもよく育つ樹木です。
いくつかの理由から、植樹に最適な樹木でした。
第一に、農学者によると、モリンガは土壌が痩せていても繁殖し、豊富なバイオマス(燃料として使われる有機物)を生み出します。そのため、Tanmiahが事業を展開する乾燥したサウジアラビアの砂漠に理想的です。
第二に、その葉は栄養豊富で、ハラール(イスラム教で食べることが許されている)な動物飼料の供給源になります。
Tanmiahは、この持続可能な原料作物を家禽や家畜に利用することで、輸入大豆やトウモロコシへの依存を減らすことを目指しています。
モリンガは輸入飼料に代わる、持続可能な地元産の選択肢であり、食料生産と土地の回復を結び付けます。また、2024年時点で動物飼料原料の90%超が輸入されていたサウジアラビアの農業部門が直面する最大の課題の一つに対処します。
第三に、これらの樹木は成長するにつれてCO2を吸収するだけでなく、牛の飼料に加えるとメタン排出量を減らすことも分かっており、気候変動の緩和に寄与する有望な副次効果があります。
この廃棄物を価値に変えるモデルのレジリエンスは、廃棄物、水、樹木の相乗効果を生かす統合的な循環性に由来します。国際的な研究パートナーとの多様な連携が、イノベーションと効果を加速させてきました。
2024年、Tanmiahは、次の主要な農業テクノロジーパートナーと共同試験を開始し、イノベーションの取り組みを拡大しました。Desert Control、Responsive Drip Irrigation(RDI)、Terraxyと連携し、モリンガ栽培向けの持続可能な水・土壌管理技術を評価します。
これらの連携は、乾燥条件に合わせたさまざまな先端ソリューションの試験に役立ちました。Desert Controlの液状天然粘土技術は、砂質土壌の保水性を高めるために導入されました。

同時に、RDIの地下灌漑システムにより、植物の状態に応じた精密な給水が可能になり、水の消費量が大幅に削減されました。こうした取り組みを補完するのが、土壌微生物叢を高める手法を試験導入し、養分の吸収と根の成長の改善を目指すサウジアラビアのスタートアップ、Terraxyです。
これらの試験を通じて、スマート灌漑、土壌改良、再生型農業技術を組み合わせることで、砂漠の地形をモリンガのような栄養豊富な作物を育てる農地へと変えられることが実証されました。
この取り組みは、持続可能な飼料のイノベーション、土地の回復、効率的な資源利用に対するTanmiahのコミットメントを強化するものであり、同社の長期的な持続可能性戦略の中核を成しています。
循環型農業の効果
循環型農業の実践は、乾燥地域で環境と食料安全保障に目に見える恩恵をもたらしています。Tanmiahのデータによると、次のとおりです。
水の節約:年間約6億8,000万リットルの廃水が再利用され、農業での淡水使用量が減っています。これは、数万人の1日分の水需要にほぼ相当する量を、砂漠で樹木や飼料を育てるために転用したものです。
植林と炭素回収:2025年第1四半期時点で55万本を超える樹木が植えられ、11万4,800トンのCO2を吸収し、砂漠化対策のための緑地帯を形成しています。
食料安全保障の向上:モリンガなどの地元産飼料は、飼料輸入への依存を減らし、サウジアラビアが2030年までに掲げる食料自給率90%の目標(家禽部門)を後押しするとともに、世界的な供給途絶に対するレジリエンスを高めます。
ビジョン2030に向けて前進
Tanmiahの持続可能性への取り組みは、ビジョン2030の柱であり、100億本の植樹を目指すサウジ・グリーン・イニシアチブのもと、より広範な国と世界の目標を支えています。
同社はまた、リヤドで開催された2024年国連砂漠化対処条約第16回締約国会議(COP16)で、サウジアラビアの植林活動における企業パートナーとして評価されました。
重要なことに、この取り組みは、2060年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するという王国の目標、および循環型炭素経済戦略にも合致しています。
世界経済フォーラムは食料安全保障のために何をしているのでしょうか?
乾燥地域の国々に向けた青写真
サウジアラビアにとどまらず、Tanmiahの統合型「廃棄物を価値に変える」モデルは、持続可能な農業ソリューションを求める水不足の国々や砂漠気候の地域にとって、再現可能な青写真となります。世界の畜産業は、資源消費や汚染の大きさをしばしば批判されています。
廃棄物のリサイクル、アグロフォレストリー、気候に配慮した飼料の栽培を統合することで、同社は畜産業がより循環的で再生型のシステムへと進化できることを示しています。
持続可能な食料システムへの需要が高まるなか、民間部門は収益性と環境イノベーションを両立させるうえで重要な役割を担います。
畜産業に対する思慮深い取り組みは、生態系への影響を緩和すると同時に、きれいな水、より健全な土壌、レジリエンスのある食料生産といった価値ある環境資産を生み出す助けとなります。
農業がより少ない資源でより多くを生産しなければならないとき、廃棄物を価値に変える統合型モデルは、最も厳しい環境においても持続可能な畜産業が成り立つことを示す有力な例となります。



