持続可能性の振り子は元の位置には戻らない

Two women walk along a paved coastline with wind turbines in the distance: AI is both the motivator and key customer for sustainability
AI is both the motivator and key customer for sustainabilityImage: Unsplash/Teodora Vaklinska
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  • 2021年に人気を集めた環境・社会・ガバナンス(ESG)指標は支持を失い、優先度を下げられてきましたが、AIの台頭とともに持続可能性は再び勢いを取り戻そうとしています。

  • 持続可能性は競争力を高める手段として位置づけ直され、再生可能エネルギーへの投資や、排出量だけでなく物理的資産も含めた気候リスクの影響度の算定拡大が進むでしょう。

  • AIは、性能の向上したモデルと評価能力の拡大を通じて、持続可能性報告の信頼性をより高い精度で評価できます。

2021年に資本市場で広がった環境・社会・ガバナンス(ESG)指標への関心は、すでに薄れています。

これを支持から遠ざけ、一部では戦略的優先事項の下位へと押しやったのは、政治的な反発、規制の不透明さ、グリーンウォッシュの取り締まり、地政学的な対立といった、今では見慣れた要因です。これを再び引き戻しているのは、より新しい要因である人工知能(AI)です。

現在、持続可能性の立ち位置は振り子のようなものです。複数の力が重なって不人気な領域へと振り出されましたが、今まさに揺り戻しが起ころうとしています。ただし、振り子が元の位置にぴったり戻ることは決してありません。

私はこれまでも次のように主張してきました。AIは、持続可能性が AIを必要とする以上に、持続可能性を必要としている。土地、水、電力の上に成り立つ技術は、信頼を得た場所でのみ拡大が認められます。そして、その信頼は、持続可能性のリーダーたちが二十年をかけて築き上げてきた規律に支えられています。

振り子の揺り戻しは、競争力、リスクへの曝露、エネルギー安全保障という三つの側面で、この依存関係が可視化されつつあることを意味します。

AI時代における持続可能性の姿

振り子が落ち着くと私が考える場所は、次の三つです。

1. 競争力こそが新たなネットゼロである

エネルギーは、知能を生み出すための投入コストになりました。安価でクリーン、かつ安定した電力を確保できるかどうかが、AI競争の勝者を左右します。さらに、電力網の容量が、この十年で最大の成長ストーリーのボトルネックとなる中、再生可能エネルギーには道徳的な議論は不要です。

国際エネルギー機関(IEA)は、電力のデータセンターによる需要が2030年までにおよそ倍増し、約945テラワット時(TWh)に達すると予測しています(これは現在の日本の全消費量をわずかに上回る規模です)。その増加の最も重要な要因はAIです。

これらの数字の背後にあるインフラ整備は莫大な規模です。ビッグテックによるAIインフラへの支出は、世界の石油・ガス上流部門への投資規模に迫りつつあります。エネルギーの確保は、ネットゼロの目標から、産業戦略の問題へと移行しました。

投資家は、エネルギー移行を炭素削減よりも、安全保障、レジリエンス、自立性、競争力といった言葉で語るようになっています。需要側では、電力網に負荷をかけるのと同じAIが、エネルギー、素材、物流を最適化し、利益率の向上に直結させることができます。

責任を持って拡大すれば、AIはシステムへの負荷ではなく、競争力とレジリエンスの源泉となります。

2. 報告は、スナップショットではなく軌道を評価するようになる

欧州連合(EU)が報告および人権・環境デュー・ディリジェンス制度の一部を延期し、適用範囲を絞り込んでいる一方で、現行の義務的な報告制度は、依然として最大手企業にとって重要な意味を持っています。

とはいえ、その制度の複雑化は、コンプライアンス業界が懸念するほど重大な問題にはなりません。AIによって情報開示が安価かつ日常的な作業になりつつあるためです。そうなれば、情報開示はもはや中小企業にとっての障壁ではなくなります。どの企業でも作成できる報告書では、どの企業も差別化できません。注目すべきは、自社の排出量がどの程度かではなく、資本がどこへ向かっているかです。

移行ポートフォリオをめぐる議論は、高排出企業を除外するかどうかから、現在の排出量が依然として多い企業であっても、脱炭素に向けて本格的な資本を投入しているかどうかを問う段階へと移っています。

投資家は、移行を進める企業を、現在の炭素集約度だけでなく、その軌道によって評価しています。

ドイツのエネルギー企業RWEのように、2024年の現金ベースの設備投資(CapEx、資本的支出)の大半を洋上風力、陸上風力、太陽光に振り向けた企業や、ポルシェのように、2025年にバッテリー式電気自動車の比率が22.2%に達した企業への投資論は、帳簿上の既存事業よりも、ポートフォリオの変革と結びつけられるケースが増えています。

ただし、軌道に関する主張は、スナップショットでは問われることのなかった問いを投げかけます。それは、本当に実行するのか、ということです。ここでAIは両刃の剣となります。報告書を作成するのと同じツールで、設備投資計画、サプライチェーンのデータ、さらには衛星画像と照合して検証することもできるのです。

最近の一つの研究では、大規模言語モデルを用い、衛星画像と214社の欧州企業による環境に関する主張を照合しました。その結果、主張の26%だけが肯定的に確認でき、7.5%は衛星画像が示す事実と明確に矛盾していました。残りは、モデルがまだ判定できないグレーゾーンにとどまりました。

したがって、基準は情報開示から、自社のビジネスモデルに結びついた検証可能な削減へと移りつつあります。自律型システムが助言にとどまらず実際に行動するようになれば、排出量の調整やサプライヤーの判断も、他のあらゆる取引と同様に、財務台帳に記録され、追跡可能である必要が生じるでしょう。

3. 物理的な気候リスクがついに価格に反映される

AIは、気候モデルが計算できる範囲を拡大し続けています。モデルが高度化するほど、保険会社、貸し手、投資家は、個々の資産単位で物理的な気候リスクを定量化できるようになります。

引受業者はすでに、紙の上では同じに見えた立地や資産を区別するために、将来を見通した気候の予測結果を利用しています。私の見通しは明快です。物理的な気候リスクも、今日の炭素排出量が受けている分析的な注目を、やがて受けることになるでしょう。つまり、価格が付けられ、貸借対照表に計上されるようになるのです。

皮肉なことに、リスクモデルを構築している業界こそが、その最も意欲的な顧客でもあります。AIインフラは、物理的に影響を受けやすい資本の急成長する受け皿です。データセンターは比喩ではありません。それは、熱を発し、水を消費し、電力を大量に引き込む非常に大規模な建物であり、しばしば既に気候ストレスにさらされている地域に立地しています。

業界の分析によると、決定的な緩和策や適応策がなければ、データセンターの気候関連の保険コストは2050年までに3倍から4倍になる可能性があります。つまり、企業の気候リスクに関する判断を支えるデータ基盤が、より価値の高い資産の一つになりつつあるということです。

持続可能性の揺り戻しに備えるには

振り子は、主張が検証可能な場所に落ち着きます。監査人、保険会社、そして衛星画像を読み取るAIの検証に耐えられる持続可能性データを持つ企業は、揺り戻しを追い風にできるでしょう。それ以外の企業は、検証を行った機械に対して自らを説明し続けることになります。

この数年、企業社会は持続可能性について語る声を小さくしてきました。しかし、その時期は終わりつつあります。AIによって、持続可能性が、企業が無視できない要素、すなわちエネルギーコスト、保険で補償可能なリスク、そして自社の主張の信頼性と再び結びつけられたからです。

移行の機会は、今や純粋な再生可能エネルギー事業にとどまらず、送電網、電化関連機器、産業構造の変革、適応へと大きく広がっています。持続可能性を狭い意味での法令遵守の作業としか捉えない企業は、進行中の産業構造の再編を逃すことになるでしょう。

この揺り戻しへの備えには、主張の整理にとどまらない取り組みが必要です。ステークホルダー(投資家、非政府組織、地域の活動家、自社の企業間取引先)は、もはや貴社のPDFを唯一の信頼できる情報源とはみなしていません。

ステークホルダーは、これまでになく多くの、貴社の持続可能性の軌道に関する情報を持って現れ、それを活用するシナリオ分析の力も備えているでしょう。

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