最高サステナビリティ責任者(CSO)の63%は、短期的に世界のサステナビリティの進展が維持または加速すると予想していますが、実行への道筋は一様ではありません。
エビデンス、リスク、リターンが変化し続けるなか、AIと適応は実行が重要である理由を示しています。
初の「最高サステナビリティ責任者アウトルック」は、移行が実践の場でどのように進んでいるかについて、サステナビリティリーダーの知見を集約しています。
サステナビリティに関する最も重大な意思決定は、しばしば「サステナビリティの意思決定」とは呼ばれません。どこに建設するか、何を調達するか、どの技術を導入するか、製品をどう設計するか、どのリスクを価格に織り込むかという選択です。工場、データセンター、建物、供給契約、製品プラットフォームは、それを承認した戦略サイクルよりも長く存続する可能性があります。いったん決まれば、こうした選択は何年、場合によっては何十年にもわたり、コスト、資源利用、レジリエンス、そして選択の余地を左右します。
実行が重要なのはこのためです。最高サステナビリティ責任者(CSO)103人の回答に基づく初の「最高サステナビリティ責任者アウトルック」によると、63%が今後1年間に世界のサステナビリティの進展が維持または加速すると予想しています。本アウトルックは、企業リーダーが移行をどのように進め、実行しているかを理解するため、フォーラムの世界的なCSOコミュニティの知見を活用しています。メッセージは明確です。進展は続いていますが、それを促す力は変化しています。CSOにとっての優先課題は、野心を行動に移し、より複雑な環境で勢いを保つことです。
世界のサステナビリティを推進する力の変化
今後3年間について、CSOはサステナビリティ施策の事業性の高まり(64%)と、より安価で適用しやすい技術(56%)を、進展を加速させる主要な二つの要因に挙げています。資金調達、建設、規模拡大の対象を決める意思決定が商業的な根拠に基づくとき、サステナビリティはより持続的なものになり得ます。
しかし、市場や技術は真空の中で機能するわけではありません。進展を妨げると予想される最大の制約は政策の不確実性で、回答者の68%が挙げています。次いで短期的な事業上の圧力(61%)、国際的な緊張(54%)が続きます。政策は投資と導入の条件を整えるうえで不可欠ですが、その役割は管轄地域によって一貫性を欠くようになっています。

その結果として生じているのが「グリーン・ダイバージェンス」です。競争力、レジリエンス、エネルギー安全保障、産業上の優先事項の組み合わせが異なるため、セクターや市場がそれぞれ異なる速度で進んでいます。新興市場は、今後さらに大きな主導的役割を果たすと予想されています。
事業目標とサステナビリティ目標が常に自動的に一致するとは限りません。持続的な価値は、企業が依存する資源、インフラ、サプライチェーンを理解することにかかっています。レジリエンスを強化しながら生産性を高めたり市場を開拓したりする意思決定は、長続きする可能性が高くなります。一方、資源への依存や物理的リスクを固定化する選択は、将来の選択肢を狭めかねません。
CSOの役割は戦略的な統合
企業内では、サステナビリティの捉え方が変化しています。回答者の65%がコンプライアンスの観点を依然として重視する一方、41%はすでに事業の成長や価値の源泉と見なされていると答えています。課題は、この認識を広げ、日常的な商業上の意思決定に反映させることです。特に、3分の2が企業の意思決定において短期的な業績を優先する傾向がさらに強まると予想しています。
これはCSOの役割の中核です。その任務は、野心を掲げたりサステナビリティ計画を擁護したりすることにとどまりません。環境の現実を、企業が価値を生み出す仕組みと結びつけることです。
銀行では、融資判断、セクター戦略、顧客エンゲージメント、ポートフォリオ配分の改善を意味する場合があります。製造業では、製品設計、素材、調達、サプライヤーとの関係を見直すことにつながります。あらゆるセクターで、サステナビリティが投資判断や業務規律に反映されるよう、財務、技術、オペレーション、リスク、事業部門のリーダーと協働することを意味します。
CSOの役割がイノベーション、生産性、新たなビジネスモデルと結びつくのはこのためです。サステナビリティの成果を左右するあらゆる意思決定をCSOが担うわけではありません。その影響力は、全社の意思決定の質を高めることから生まれます。環境への依存がどこでリスクを生み、効率化がどこで利益率を高め、イノベーションがどこで新たな価値の源泉を開くのかを、同僚が理解できるよう支援するのです。
技術と適応が重要な優先課題に
人工知能(AI)は、この課題を浮き彫りにします。CSOのほぼ4分の3は、AIなどのデジタル技術が、リスクモデリング、プロセスと資源の効率化、測定、報告を通じてサステナビリティの進展を支えると予想しています。一方、77%は、AIインフラのエネルギーと資源の消費量の多さを、AIがもたらす最も重大な負のサステナビリティ影響として挙げています。
世界経済フォーラムの「MINDS」プログラムの事例研究は、実装の姿を示しています。シュナイダーエレクトリックによると、AIを活用した同社のマイクログリッドシステムは、97拠点で、拠点当たり年間のエネルギー消費量を14%、CO₂排出量を28%削減しました。AIは業務上の課題に適用され、エネルギーと資源の管理改善を通じてサステナビリティ上の効果が生まれました。
調査で得られた知見だけでは、AIをめぐるより広範なトレードオフは解消されません。技術は、それを取り巻く戦略、能力、システムの効果を増幅します。利点を生かしながら環境負荷を管理するには、CSOが技術、財務、リスクの各リーダーと連携し、ユースケース、データ品質、ガバナンス、インフラ、測定可能な成果に取り組む必要があります。
AIは、長期的なコストと便益が不確かななかで今日投資判断を下すという、より広範なリーダーシップ課題の一例です。適応も同様の課題を示します。混乱が起きる前に、企業はレジリエンスをどう評価すべきでしょうか。CSOの85%は適応が世界的にさらに重視されると予想し、77%は民間投資が決定的になると答えています。一方、62%は費用便益評価の不確実性を大きな制約として挙げています。レジリエンスは、実際には発生しない損失を通じて価値を生むことが多いため、目に見える短期収益を見込めるプロジェクトと比べて、資本を獲得しにくくなります。

レジリエンスへの投資を可能にするには、より優れたリスクモデリング、信頼できる事業計画、収益または返済モデルの明確化、リスクを分担する仕組みが必要です。また、リーダーはレジリエンスを遠い将来への保険ではなく、現在の戦略に組み込む要素として扱う必要があります。
今日の選択が明日の道筋を定める
サステナビリティ移行の次の段階は、企業が今選ぶ資産、システム、製品、インセンティブによって形作られます。
企業は、希少資源への依存、物理的リスク、時代遅れのビジネスモデルを固定化することも、生産性、イノベーション、レジリエンス、持続的な価値を築くために同じ投資判断を生かすこともできます。優れたCSOは、移行を単独で担うのではなく、事業の将来を決める意思決定に生態系の現実を組み込むことで、組織が後者を選べるよう支援します。
フォーラムは今後も、世界各地のCSOコミュニティから学び続けます。毎年発行する「最高サステナビリティ責任者アウトルック」は定期的な調査に支えられており、移行、その推進要因、サステナビリティリーダーの役割が時間とともにどう変化するかを追跡します。


