同族企業は欧州の成長を損なっているのか?

同族企業は欧州の成長を損なっているのか?
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戦後、多くの欧州諸国が遂げた目覚ましい経済的成功は、大陸全域に広く存在する同族企業によって特徴づけられていた。とりわけドイツやイタリアなどでは、家族による所有が経済・社会の発展を最も確実に保証するものと見なされるようになった。しかし、同族企業は成長に資するという共通認識は、近年、見直しを迫られている。

新たに蓄積されつつある証拠は、家族による経営が実際には業績に悪影響を及ぼすことを示している(Bloom and Van Reenen 2007)。注目すべき自然実験を利用し、Bennedsen et al. (2007) は、専門経営者ではなく家族を経営者に据えることによって、デンマーク企業の収益性が4%低下すると推定している。Lippi and Schivardi (2014) は、同族企業では経営幹部の選任がより不適切であり(外部の専門経営者より、資格の劣る家族経営者を雇う傾向があるため)、その結果、複合企業傘下の企業と比べて生産性が6%低下すると見いだしている。推定された影響の大きさを踏まえると、家族による所有は欧州の生産性向上にとって深刻な障害となる可能性がある。

経済理論は何を予測するのだろうか。企業は所有者が率いるべきか、それとも専門経営者が率いるべきか。所有者を支持する論拠は、彼らのほうが「自らの利害を賭けている」という点にある。これはプリンシパル・エージェント・モデルの標準的な予測である。所有者は事業が生み出す所得の残余請求権者であるため、ほかの条件が同じなら、成功への動機を持つからだ。反対の論拠は、簡潔に言えば、ほかの条件は同じではないということだ。とりわけ、企業所有者は企業を所有しているため、通常はより裕福である。したがって、余暇が正常財であれば、専門経営者よりも多くの余暇を求める可能性がある。同族企業が広く存在することを踏まえると、どちらの効果が優勢なのかを理解することは、総所得と成長に重要な意味を持つ。

同族企業の経営者は労働時間が短い

私たちの研究(Bandiera et al. 2015)は、先進国・途上国の6カ国(ブラジル、フランス、ドイツ、インド、米国、英国)における同族企業のCEOと専門経営者(すなわち、家族と血縁関係のないCEO)約1,100人の時間の使い方を分析し、この問題を調査している。サンプルのCEOの約41%は同族企業のCEO、16%は同族企業で働く専門経営者であり、残りは非同族企業を率いる専門経営者である。

私たちの方法論は、1970年代にHenry Mintzbergが行った経営者のエスノグラフィー研究を基盤とし、対象を大規模で無作為な経営者サンプルへと拡張したものだ。無作為に選んだ週の毎日、CEO本人またはそのPAへの日々の聞き取りを通じ、CEOが行うすべての活動を記録する。これにより、調査週に行われたすべての活動の所要時間を合計し、CEOの総労働時間を推定できる。私たちが併せて収集した標準的な回顧式の測定値と比べると、このボトムアップ方式の測定値では、切りのよい数字への集中が少なく、ばらつきが大きい。

このボトムアップ方式で測定したCEOの労働供給を見ると、同族企業のCEOは専門経営者よりも、労働活動に充てる時間が一貫して少ないことが分かった(図1)。

その差(総労働時間の少なくとも9%)は、二つの要因による。同族企業のCEOは仕事を始める時刻が遅く、私的な活動に時間を充てるため仕事を中断する傾向も強い。

図1 同族企業・非同族企業のCEOの総労働時間

同族企業のCEOはなぜ労働時間が短いのか?

私たちの結果は、同族企業のCEOの労働時間が短いのは、同族企業と非同族企業の間に体系的な「技術面」の違いがあるからではなく、仕事と余暇に対する好みの違いによることを示唆している。

この結論は、二組の知見によって裏づけられる。

  • 第一に、観察可能なCEO、企業、組織上の違いでは、同族企業のCEOと専門経営者の労働時間の差をほとんど説明できない。

たとえば、同族企業のCEOはほかの家族に責任を委ねやすいため、労働時間を短くできるのではないかと考えられるかもしれない。しかし、経営陣に含まれる家族の人数の違いが説明するのは、労働時間の差のごく一部にすぎない。さらに、同族企業で働く専門経営者は、非同族組織の同僚と同じ程度に熱心に働いており、同族企業では単に必要な仕事量が少ないという可能性は否定される。

  • 第二に、同族企業のCEOと専門経営者の差は、余暇の機会費用によって左右されることを示す。

たとえば、より大規模な企業や競争の激しい業界で働く同族企業のCEOは、専門経営者と同じ時間働く。そうした状況では、仕事を怠れば企業に深刻な悪影響が及ぶと考えられるため、CEOが余暇を取る機会費用が高いからだ。対称的に、同族企業のCEOは、自らの努力の限界費用を高める外生的な「ショック」に、より強く反応する。この点は、サンプルで最大の国であるインドのデータを使って示している。そこでは、すべてのCEOに共通する、努力を提供するコストへのショックを示す二つの代理指標を利用できる。極端なモンスーン豪雨の発生と、人気スポーツイベントの放送(インディアン・プレミアリーグのクリケット試合)だ。モンスーン期には激しい雨や洪水で交通がしばしば麻痺し、出勤のコストが特に高くなる。一方、インディアン・プレミアリーグは、スター選手を集め、熱狂的な国民の注目を集める国際的なスポーツイベントである。結果は一貫した姿を示している。CEOがいる地域を豪雨が襲った日、またクリケットの試合が放送された日には、同族企業のCEOと専門経営者の差が有意に大きくなる。

CEOが専門経営者より余暇を重視するように見えるという事実は、同族企業のCEOは率いる企業を所有しているため裕福な傾向にあり、余暇が正常財であるという考えと整合的だ。これを裏づけるように、より寛容な相続法が、家業の支配権を継承する人物の手に富が集中することを促す国では、同族企業のCEOと専門経営者の差が大きいことが分かった。しかし、発展水準、法の支配、信頼など、勤勉な非家族経営者をその役割に任命する能力を妨げうる他の国の特性は、同族企業のCEOと専門経営者の差に影響しない。

CEOの労働時間から企業業績へ

  • 私たちの結果は、労働時間の違いが、同族企業のCEOが率いる企業に悪影響を及ぼす可能性を示唆している。

実際、CEOの労働時間は企業の生産性と強く相関している。CEOの労働時間に対する従業員1人当たり売上高の弾力性は0.36で、労働(0.48)および資本(0.26)の弾力性に匹敵する。また、成長や収益性の別の指標を用いても同様の結果が得られる。因果関係を推論することはできないが、この相関と所有形態が労働時間に及ぼす影響を組み合わせると、同族企業のCEOと専門経営者の間には生産性に2.6%の差が生じる。家族経営企業が広く存在することを考えると、同族企業の生産性が低い場合、その影響は家族自身の利益率や富にとどまらず、経済全体に及ぶ。生産性の低下は、利益の減少、成長の鈍化、賃金の伸び悩みという形で積み重なり、そのすべてがより広い経済へと波及する。

総じて、私たちの知見は、同族企業のCEOと専門経営者の行動における根本的な違いについて、新たな証拠を示している。この違いは、個人間の富の格差がある場合の労働供給に関する標準モデルの予測と容易に整合させられる。私たちの知見は、公共財政上の問いを提起する。同族企業の所有者に影響する増税は、生産効率の向上をもたらすのだろうか。こうした課税には、相続税や富裕税、あるいは世界各地で同族企業が享受しているさまざまな免除措置の縮小が含まれる可能性がある。

この記事は VoxEUとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。

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著者:Oriana Bandieraは、LSEの経済学教授およびSTICERD所長であり、CEPRの研究アフィリエイト。Andrea Pratは、コロンビア大学のRichard Paul Richman経営学教授および経済学教授であり、CEPRの産業組織プログラムの共同ディレクター。Raffaella Sadunは、ハーバード・ビジネス・スクールの戦略ユニットの助教。

画像:乳製品工場で働く従業員。REUTERS/Petr Josek

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