インド、インドネシア、ベトナムの「Tier 2」「Tier 3」都市は、イノベーション、製造業、デジタル分野の新たな拠点として台頭しています。
物理・デジタル両面のインフラ整備、熟練人材、政策面の支援が、こうした中小都市の国際競争力を高めています。
中小都市は、主要な成長エンジンへと成熟するなかで、投資家に高いリターンが見込める機会をもたらします。
デジタルイノベーション、地政学的な要請、二国間・多国間の政策転換、サプライチェーンのリスクがある現在、世界の結びつきや経済クラスターは変化しています。S&P Globalは、2024年から2035年までの世界経済成長の65%を新興市場と発展途上国が担うと予測しており、これらの国のうち9カ国が世界の経済規模上位20カ国に入る見込みです。このグループでは、インド、インドネシア、ベトナムを含むアジア太平洋地域の国々が成長を主導すると予想されています。

現在の水準でこうした高成長が続けば、インドは世界第3位、インドネシアは第8位の経済大国になる見通しです。両国では、国内の生産能力と消費の拡大、世界貿易の増加を背景に、持続的な成長が見られます。
持続可能な都市開発を促進するため、世界経済フォーラムは何をしているのでしょうか?
都市は世界の温室効果ガス排出量の75%を占め、世界人口の半数以上が暮らしています。この割合は2050年までに3分の2に達する見込みです。よりクリーンなエネルギーを優先すれば、都市は地球温暖化を2°C未満に抑えるために必要な排出削減量の半分以上に貢献できる可能性があり、これはパリ協定に沿うものです。
2050年までに実現するため、ネットゼロで自然にプラスの影響をもたらす都市と地域社会に向けて、世界経済フォーラムは官民の関係者と連携し、地域の行動を通じて世界的な機運を高める取り組みを進めています。取り組みの一部を紹介します。
ダボス・バウクルトゥール・アライアンス:建築環境における気候レジリエンス、持続可能性、循環経済の原則に基づき、建物、インフラ、公共空間の質の高い計画、建設、管理を推進します。詳しくはこちら。
グローバル・ニュー・モビリティ連合:渋滞と排出の削減、EVインフラの強化、都市の移動と配送の変革に向け、新たな解決策を探ります。詳しくはこちら。
都市イノベーション連合:イノベーターや起業家を新たな市場や機会につなぎ、生活の質と地域経済を再構想し、形づくることを目指します。詳しくはこちら。
G20グローバル・スマートシティ・アライアンス:気候レジリエンスの構築、人々のウェルビーイングの向上、都市や地域社会が直面する喫緊の課題への対応に向け、実用的で賢明な解決策を加速させます。詳しくはこちら。
旅行・観光の未来:文化遺産を保全し、自然生態系を守りながら、包摂的で持続可能な経済成長を促進します。詳しくはこちら..
より持続可能で住みやすい都市や地域社会を実現する取り組みに参加する方法をご覧ください。お問い合わせはこちら。
Tier 2・Tier 3都市の成長可能性
従来、成長の拠点と見なされてきた大都市圏やTier 1都市(大都市圏)に加え、インド、インドネシア、ベトナムなどの国々にあるTier 2・Tier 3の中小都市が、次の経済価値創出の波を生み出す見通しです。こうした地域は、Tier 1都市に比べて運営コストが低いという利点を常に備えてきましたが、経済価値を生み出す領域を広げる新たなフロンティアとしての競争力を高める多面的な要素もあります。
これには、物理・デジタルインフラの整備、イノベーションのエコシステム、最適な資金投資、人的資本と知識資本の確保、支援的な規制・財政政策が含まれます。
これらの国々のTier 2・Tier 3都市では、インターネット普及率や識字率の上昇、知識集約型のスタートアップや中小企業の成長を通じて、デジタルインフラの強化がすでに見られます。
インドでは、Tier 2・Tier 3都市にインドの都市人口の45%が暮らし、登録中小企業の約50%が集積し、国内GDPの37%を生み出しています。またインドでは、デジタルウォレットやオンライン決済の利用が急速に拡大しています。さらに、報告によると、インドの村の95%にもインターネットが普及しており、デジタル消費者と販売事業者の双方にとって有望な基盤となっています。
都市で健康的な暮らしを促進するため、世界経済フォーラムは何をしているのでしょうか?
新興国では、大都市圏やTier 1以外の地域から生まれた、基盤的な成長や段階的な成長の例が数多くあります。いくつかを紹介します。
1. イノベーション促進のエコシステムを形成する:過去10年間に、インドのTier 2都市では、大学と連携したインキュベーター、州のイノベーション推進策、中小零細企業(MSME)の集積、Startup IndiaやDSTなどのプログラムによる助成を通じて、成熟したイノベーションのエコシステムが築かれました。この環境により、企業は大都市圏の外に拠点を置きながら、世界規模へと成長できるようになりました。グジャラート州スーラトの特殊化学品企業Aether Industriesは、地元の人材と制度的支援を活用し、新興企業から時価総額10億ドル超の上場企業へと成長しました。こうした事例は、Tier 2都市がもはや周辺的な存在ではなく、インドの産業・技術変革の中心地になりつつあることを示しています。もう一つの例は、ウッタル・プラデーシュ州プラヤーグラージで開発・試験された6ストロークエンジンです。従来型燃料で燃費を3倍にし、消費量を大幅に削減できます。
2. 地元の人材を集め、世界向けの事業を担う:インド有数の企業向けソフトウェア企業Zohoは、1996年に創業者の故郷であるタミル・ナードゥ州テンカシで(AdventNetとして)設立されました。現在は近隣の村にもオフィスを構え、アジア、北米、南米、欧州、アフリカで事業を展開しています。ウェブベースのビジネスソフトウェア分野で世界的企業へと成長したことは、インドのデジタルインフラが農村部の中心地まで広がっていることを示しています。チェンナイに州初のITサービス向けTIDEL Parkを開設したタミル・ナードゥ州は現在、マドゥライ、タンジャーヴール、セーラムなどのTier 2都市にも複数の施設を開発しています。
3. デジタル経済に影響を与える:インドネシアにはデンパサールやマゲランなど約180のTier 2・Tier 3都市があり、成長を牽引し、2025年までにデジタル経済の30~50%を占めると予想されています。その成長の大部分は、電子商取引、融資、電子決済など、テクノロジーを活用した事業の拡大によるものです。例えば、タンゲランを拠点とするAssistani Agriは、土壌検査などのIoTツールやSaaSアプリケーションを用いた精密農業プラットフォームを構築し、生産物の質と量の向上を目指しています。 Tier 2・Tier 3都市が占める割合は、2030年までに国内GDPの3%から5%へ上昇すると予想されています。デジタル事業に加え、インドネシアは生活の質の向上、雇用創出、カーボンニュートラルの実現を目指し、100を超えるスマートシティの建設を進めています。
4. 世界市場向けの製造能力を開発する:2025年8月、ベトナムのEV企業VinFastは、タミル・ナードゥ州トゥトゥクディに統合型製造施設を開設しました。5年間で5億ドルの投資が見込まれています。同工場は年間15万台を生産し、少なくとも3,000人を雇用する計画で、地元の需要と地域向け輸出の両方に対応します。このモデルは、強固な産業・交通インフラと、周辺地域の熟練労働力によって支えられています。
真の投資機会
新興国のTier 2・Tier 3都市は、物理・デジタルインフラの拡充を通じた従来型の事業機会だけでなく、とりわけESGを重視したソリューションにおいて、イノベーションの有望な土壌でもあります。多くの都市が、ハリケーンの強大化、海面上昇、生物多様性の喪失に表れる急速な環境変化に直面しています。ケララ州コチは、電動ハイブリッドフェリーを使った市内交通システム「アーバン・ウォーター・メトロ」を導入したインド初の都市となりました。ウッタル・プラデーシュ州バラナシを含む他の都市でも、同様のシステムが導入候補に挙がっています。
こうした都市は、不動産や産業物流の面でも存在感を高めており、別途論じる価値があります。上記の事例は、Tier 2・Tier 3都市が世界経済の成長に貢献していることを明確に示しています。多くの都市はすでに「0から1」への歩みを終え(場合によっては「1から100」へと進み)、国内外で確かな価値提案を確立しています。新たな事業者が市場に参入し、既存の事業者が成熟するにつれて、投資家には短期・中期・長期にわたる大きな高リターンの機会が広がります。最も注目すべき展開は、かつて遠隔地と見なされた場所で、適切な時期の投資に支えられ、主要な成長要因が一体となって成長をもたらすことでしょう。
