多くの言語が急速に消滅するなか、言語の多様性をできる限り守るため、研究者らは保全生物学で使われる「進化系統樹」の活用を提案している。
専門家によると、世界に7,000ある言語のうち、2週間ごとに1つが消滅している。北米の先住民言語を数十も含むその半数は、21世紀を生き延びられない可能性がある。
生態学者は保全目標を設定する際、生物種どうしの関係を示す図である進化系統樹を使い、近縁種が少ない種を特定する。こうした種は進化的に独自性が高いとされる。同様に、近年の言語系統樹作成技術の進歩により、言語がどれほど独自性を持つかを測定できるようになった。

「十分な数の標本に基づく大規模な生物種の系統樹は、生命がどのように進化してきたかについての理解を一変させ、生物多様性の保全における優先順位の策定にも役立ってきました」と、マギル大学生物学准教授で、学術誌『Royal Society Open Science』に掲載された新たな研究の責任著者でもあるジョナサン・デイヴィス氏は述べる。
「より包括的な言語系統樹の構築は、言語の保全に同様の機会をもたらすとともに、言語学者、人類学者、歴史学者にも役立ちます」とデイヴィス氏は語る。
「言語が急速に失われている一方で、保全に使える資源は限られています。そのため、どこに取り組みを集中させるかを慎重に選ばなければなりません」と、デイヴィス氏の研究室に所属する博士課程の学生で、新論文の共著者でもあるマックス・ファレル氏は付け加える。「系統樹の中で孤立している言語ほど、独自の情報を多く含み、最終的には言語の多様性に大きく貢献します。」
事例研究として、ファレル氏と共著者のニコラス・ペロー氏(現在はオックスフォード大学の大学院生)は、保全生物学から取り入れたこの手法を用い、東南アジアと太平洋に点在する島々で話されている350のオーストロネシア諸語を順位付けした。
データは、オークランド大学の研究者らが2009年に発表した数百のオーストロネシア諸語の系統樹と、現存する7,000以上の言語を収録したオンラインデータベース「エスノローグ」から得た。(現在、オーストロネシア諸語は合計で1,200を超え、世界最大級の語族の一つとなっている。)
新たな研究で対象となった350言語それぞれについて、研究者らは進化的独自性(ED)と世界的な消滅危険度(GE)の指標を組み合わせ、保全生物学で使われる指標に似た「EDGE」スコアを算出した。
最も高いスコアを記録したのは、台湾固有のカバラン語だった。独自性が際立つ一方で、ほぼ消滅しかけている言語だ。オーストロネシア諸語は約4,000~6,000年前に台湾で生まれたと考えられている。次に高いスコアとなったのは、ソロモン諸島のほぼ消滅しかけたタニビリ語と、ニューギニアのワロペン語、センセン語だった。
他の語族についても系統樹を作成し、同様の指標を適用することで、言語の専門家は保全活動の対象を絞り、将来の言語多様性の喪失を最小限に抑えることができると研究者らは述べている。
例えば、カナダだけでも先住民の言語は70を超え、その大半が消滅の危機にあるとされる。
「言語は人々のひらめきであり、文化を支えるものです。言語が消滅すれば、人類の歴史と言語そのものの進化についての独自の知見も失われます」とペロー氏は語る。「言語の消滅は、人類、学問、科学にとっての損失です。」
