芸術と文化は、世界の進歩に欠かせない手段です。共感を育み、行動を喚起することで、持続可能な開発目標(SDGs)の前進に貢献できます。
カルチュラル・テーブルは、ビジネス、政策、文化を結び付け、多様なリーダーが協働し、既成の枠を超え、世界的課題に対する創造的な解決策を生み出す独自の場をつくります。
カルチュラル・テーブルの真の力は、対話をパートナーシップ、戦略、そして集団的な行動へと変えることにあります。
対話は、かつてないほど重要です。
気候変動や世界的な不平等から社会の分断に至るまで、課題が複雑に絡み合う世界では、こうした対話が思考を促し、他者の目を通して世界を照らし出し、和解と癒やしへの道筋を明らかにするべきです。
こうした背景のもと、 世界経済フォーラムの芸術・文化部門が立ち上げたイニシアチブ「カルチュラル・テーブル」は、芸術と文化の変革力を通じて未来を再構想するための触媒となる場として登場しました。
装飾ではなく、不可欠な力
芸術は世界的な課題への取り組みにおいて重要な役割を果たし、隔たりを越えて人々をつなぎ、共感と理解を育む独自の方法を提供します。
観客が他者の立場に身を置けるようにすることで、芸術は歴史を生き生きと描き、意見に働きかけ、周縁化された人々の声を広く届ける力強い視点をもたらします。
そうすることで芸術は、人間の経験を映し出すだけでなく、現状に異議を唱え、思考や感情、関与、さらには行動を引き起こします。
このように芸術は、持続可能な開発目標の推進を後押しする触媒として、認知度を高め、集団的行動を促し、文化を形づくり、地域社会に変化をもたらします。
したがって、芸術と文化は単なる装飾ではありません。より包摂的で持続可能、かつ感情的知性に富む世界を築くうえで不可欠な力です。芸術を創造し、共有し、育む人々には、変革の風向きを変え、共感、公平性、人類の共有する人間性に根差した未来を築く大きな力があります。

世界をつなぐ
カルチュラル・テーブルは、国際舞台における芸術と文化の役割を基盤としています。その使命は明確です。ビジネスと文化を結び、既成の枠を超え、慣習に挑み、世界が直面する最も差し迫った課題に対する創造的な解決策を切り開く協働を促します。
カルチュラル・テーブルが思い描くのは、文化が経済や政治の意思決定から切り離されず、その中心に位置する未来です。文化は、政策、イノベーション、人と人とのつながりを形づくる重要な力です。
このイニシアチブのビジョンは、次の3つの原則に基づいています。
イノベーションを推進する共感。
変革の触媒となる創造性。
世界の進歩を実現する戦略としての協働。
先住民のリーダー、グラミー賞受賞ミュージシャン、ビジネスリーダー、テクノロジー分野のイノベーター、気候活動家など、多様な声を集めることで、カルチュラル・テーブルは分野を越えて対話し、共通の目的を通じて解決策を生み出す場をつくります。

抵抗、再生、革命
第1回カルチュラル・テーブルは、世界経済フォーラムの「持続可能な開発インパクト会合2023」に合わせて、ニューヨーク市で開催されました。
「文化の視点から考える持続可能性」をテーマに、データに基づくアートで機械知能の概念を再定義するレフィク・アナドル氏や、TOGETHERBANDを手がけるクリエイティブの旗手キャメロン・ソール氏など、先駆的な人々が登壇しました。また、ヨルダン人歌手ファラ・シラージ氏による力強い音楽パフォーマンスも披露されました。
これを皮切りに、ダボス、ロンドン、ニューヨーク、パリで一連のイベントが開催されるようになりました。
カルチュラル・テーブルは、それぞれ独自のテーマを中心に据えて企画されるイベントです。これまでに取り上げたテーマには、「アートは世界を変えられる」、「信じて、私はアーティスト」、「アーティストが救う」があります。これらの集まりでは、芸術、イノベーション、社会的責任が交わる領域を探ります。
各カルチュラル・テーブルは着席式の夕食会として開催され、文化界のリーダーや専門家による進行付きの討議、短いプレゼンテーション、問題提起に続いて、参加者全員が自由に対話します。

参加した多様な文化界のリーダーには、先住民のリーダーで環境活動家のニシワカ・ヤワナワ首長、アカデミー賞受賞の映画監督・ジャーナリストであるシャーミーン・オベイド=チノイ氏、公平性の擁護者でバレエダンサーのミスティ・コープランド氏、ミュージシャン、プロデューサー、ソングライターのナイル・ロジャース氏、歌手・俳優で家庭内暴力の撲滅を訴えるメラニー・ブラウン氏(メルBとしても知られる)、Notplaの共同創業者兼共同CEOのピエール・パスリエ氏、オリンピックの飛込競技選手でLGBTQ+の擁護者であるトム・デーリー氏、オペラ歌手のルネ・フレミング氏、WOW財団の創設者兼CEOであるジュード・ケリー氏、アーティスト兼研究者のスーグウェン・チョン氏、海洋生物学者で自然保護写真家のクリスティーナ・ミッターマイヤー氏、芸術監督で包摂性の擁護者であるタマラ・ロホ氏、ビジュアルアーティストで環境活動家のベンジャミン・フォン・ウォン氏がいます。
参加者は皆、勇気とイノベーションにまつわる深く個人的な物語を共有しました。芸術は表現であるだけでなく、抵抗、再生、革命でもあることを私たちに思い起こさせます。

変革を起こす連携
カルチュラル・テーブルは、分野横断的な性質と企画の深さによって独自性を打ち出そうとしています。一般的な会議やパネル討論とは異なり、各セッションは綿密に設計された体験です。登壇者はストーリーテラーとなり、参加者は洞察と変容を共有する旅の一員となります。
ここでは信頼できる場を築き、企業の課題ではなく、人間の真実をめぐる率直な対話を生み出すことを目指します。また、ビジネスと芸術、文化と政策、テクノロジーと哲学など、共通の言葉を持たないことの多い分野の間に、ハイレベルな関係を育みます。
何よりも重要なのは、変革について語るだけでなく、自らの発信力、資源、影響力を使って実現に動く人々から成る、行動するグローバルコミュニティを築くことです。

分極化、自動化、生態系の危機が世界を覆う今日、カルチュラル・テーブルは創造性が先導すると何が可能になるかを示しています。各カルチュラル・テーブルは行動を呼びかけ、文化分野が世界の発展にとって周辺的な存在ではなく、不可欠な担い手であることを実証します。
今後、カルチュラル・テーブルは、戦略的シンクタンク、創造性を促す触媒、そして最も大きな影響力を持つ層で活動する変革者の連合体となる可能性をさらに高めようとしています。
芸術は人を変え、人は世界を変えることができます。文化が戦略となり、つながりが行動となるとき、変革の可能性は無限に広がることを、カルチュラル・テーブルは思い起こさせます。

