専門用語は、複雑な問題を要約し、困難なテーマから感情を取り除くのに役立つことがあります。組織行動論の教授であるアンドリュー・スパイサー氏はそう記しています。
しかし、専門家の間で誤解や混乱を招くこともあります。
専門用語は、適切な場所で適切なタイミングに使われることが極めて重要です。
2008年の金融危機を理解しようとした人の多くは、BEIT、CDO、CDC、ETF、MBSといった略語の洪水に溺れることになりました。英国の小説家ジョン・ランチェスターは、この世界について書いた際に、次のように述べています。「誰かがあなたをだまそうとしているのか、あるいは話の内容が分からないように煙に巻いているのか、判断がつかなくなる」。彼の指摘は間違っていませんでした。
最近の ある研究では、人は不安を感じるときに専門用語を使いやすくなることが示されています。心理学者のザカリア・ブラウン氏が主導したこの研究は、社会的地位が低いと感じる一部の集団が、まさにその埋め合わせとして専門用語を使うことを示しています。
ある実験では、米国の数百の大学から集められた6万4,000件の論文を分析しました。その結果、社会的地位の低い機関に所属する学生が書いた論文ほど、専門用語が多く使われていることが分かりました。研究の別の部分では、参加者にスタートアップ企業のピッチを選んでもらいました。地位の低い立場に置かれた人ほど、専門用語にあふれたピッチを選ぶ傾向が見られました。その他の様々な場面でも、低い地位に置かれた人は、専門用語に手を伸ばす可能性が有意に高いことが確認されています。
明らかに、専門用語には落とし穴があります。研究によれば、専門用語はビジネスの世界で大きな逆効果になりかねません。ある研究では、知識の豊富な投資家は、不必要な専門用語で埋め尽くされた投資提案に感銘を受けないことが分かりました。同様に、専門用語は専門家でない人に新しい技術をより否定的に捉えさせることがあります。別の研究では、専門用語を使って新しい技術を人々に提示すると、人々はそれをはるかにリスクが高いものと見なす傾向があることが分かりました。
専門用語は、その定義からして排他的です。そのため、重要な情報の理解を妨げる可能性があります。ある研究では、医師が医療用語を頻繁に使用したことで、患者は医師の説明の半分しか理解できていなかったことが分かりました。
専門家同士の間でも、逆効果になることがあります。例えば、生態学の異なる下位分野を比較した研究では、重要な用語が専門家によって非常に異なる意味で使われることが多く、その結果、白熱した議論になるものの、最終的には実りのない対立を招くことが分かりました。
専門用語の利点
専門用語は腹立たしい存在かもしれませんが、役に立つことも確かです。専門用語は、複雑な問題を少ない言葉でまとめます。これにより、専門家同士は、互いに熟知している概念について正確に話し合うことができます。
専門用語は、困難なテーマに取り組む際に感情を取り除くのに役立ちます。例えば医師は、痛みを抱える患者を、特定の病気の興味深い症例として語ることで、患者を人間として扱わなくなることがよくあります。研究によれば、こうした感情的な距離が生まれることで、医師はより合理的な判断を下せるようになることが示されています。
しかし、これは問題を引き起こすこともあります。1984年、米国国務省は人権報告書において、米国が支持する国々で政府が認めた殺害という不都合な現実を覆い隠すため、「killing(殺害)」という言葉を「不法な生命の剥奪」に置き換えました。
専門用語は、集団内での帰属意識を強めるためにも使われます。プロレスラーは、例えば自分たちの競技を「ビジネス」と呼び、リングに上がることを「仕事に行く」、説得力のある試合を見せることを「セル(売り込み)」と表現します。同様に、北米のトラック運転手は「bobtailing a twin screw jimmy(ツインスクリューのジミーをボブテイルで走らせる)」のような表現を使い、トラック運転手ではない人を意図的に自分たちの会話から排除します。
全面禁止への抵抗
専門用語の危険性から、それを完全に禁止すべきだという声が繰り返し上がってきました。2015年、当時の英国首相デービッド・キャメロン氏は公務員に対し、コミュニケーションから専門用語を排除するよう求めました。2010年には、当時の米国大統領バラク・オバマ氏が平易な言語法に署名し、連邦政府の文書を「明確で簡潔な方法」で作成することを義務づけました。ニクソン、カーター、クリントンの各大統領も、政府において平易でシンプルな言葉を使用することを求める公式命令に署名しました。
これらの世界の指導者たちは皆、1946年にジョージ・オーウェルが推奨した道をたどっていました。オーウェルは、「短い単語で足りる場合は、長い単語を決して使うな」と述べています。しかし、オーウェルの助言より前に、トーマス・スプラットが1667年に、新設された王立協会の会員が、「文体の誇張、脱線、過剰な装飾をすべて退け、人々が同じくらいの数の言葉で多くのことを伝えていた頃の、原初の純粋さと簡潔さに立ち返る」ことを決めたと記しています。
平易な言葉を使うよう繰り返し呼びかけられているにもかかわらず、専門用語は戻ってくる傾向があるようです。専門用語のない世界を作るという不可能な課題に取り組むのではなく、野心を絞り込み、学者のラッセル・ハーストが「悪い専門用語」と呼ぶものを取り除くことに努めてもよいかもしれません。
悪い専門用語の兆候としては、見慣れない、または聞き慣れない響きを持つ言葉、混成語、発音しにくい用語などが挙げられます。悪い専門用語を排除した後は、残る専門的な用語が「良い専門用語」であることを確認する必要があります。つまり、それらは簡潔で、正確で、可能な限り普遍的であるべきです。すべての専門用語に反対するのではなく、ラッセル・ハーストの助言に従い、良い専門用語の擁護者となり、その最も強固な支持者になるべきです。

