DALL-E 2は、短い語句や文から1分足らずで画像を生成する新しい人工知能アルゴリズムです。
このプログラムは、テキストから画像を生成するシステムの品質とリアリティを大きく向上させ、特定の作風も高い精度で再現します。
しかし、この技術は、DALL-E 2が創作プロセスの多くを自動化するなかで、創造的であるとはどういうことかという疑問を投げかけます。
このプログラムには、ステレオタイプへの依存や偽情報への悪用の可能性など、害をもたらすおそれもあります。
一枚の絵は千の言葉に値するといいますが、「DALL-E 2」という人工知能プログラムのおかげで、ずっと少ない言葉でプロが作ったような画像を手にできます。
DALL-E 2は、新しいニューラルネットワークアルゴリズムで、入力した短い語句や文から画像を生成します。このプログラムは、人工知能研究機関OpenAIが2022年4月に発表しましたが、一般公開されていません。それでも、私を含め、少数ながら増えつつある人々に試用の機会が与えられています。
テクノロジーとアートの接点を研究する者として、私はこのプログラムの性能を確かめたいと思っていました。何時間も試した結果、DALL-Eは欠点がないわけではないものの、既存の画像生成技術を大きく上回っていることが明らかです。こうした技術がアートの制作や鑑賞のあり方をどう変えるのか、すぐに疑問が湧きます。また、DALL-E 2が創作プロセスそのものの多くを自動化するように見えるなかで、創造的であるとはどういうことなのかという問いも生まれます。
驚くほど幅広い作風と題材
OpenAIの研究者たちは、DALL-E 2をキャプション付きの膨大な画像コレクションをもとに構築しました。画像の一部はオンラインで収集し、ほかはライセンスを取得しました。
DALL-E 2の使い方は、ウェブで画像を検索するのによく似ています。テキストボックスに短い語句を入力すると、6枚の画像が返ってきます。
しかし、ウェブ上から画像を集めるのではなく、プログラムがまったく新しい画像を6枚生成します。それぞれが、入力した語句を何らかの形で表現したものです。(少し前まで、このプログラムはプロンプトごとに10枚の画像を生成していました。)たとえば、友人たちと私が「Devoの帽子をかぶった猫」と入力したところ、10枚の画像が生成され、それぞれ異なる作風になっていました。
ほぼすべてが、プロの写真や絵として通用しそうでした。アルゴリズムは「Devoハット」――奇妙なヘルメットをかぶったニューウェーブバンド、Devo――を完全には理解できませんでしたが、生成された画像の帽子はそれに近いものでした。
ここ数年、小さなアーティストのコミュニティがニューラルネットワークのアルゴリズムを使って作品を制作してきました。そうした作品の多くには、実画像のように見えながら、空間が奇妙に歪んでいるという特徴があります。いわばサイバーパンク風のキュビスムです。最新のテキスト画像生成システムは、夢のようで幻想的な画像を生成することが多く、魅力的ではあっても、現実らしく見えることはめったにありません。
DALL-E 2は画像の品質とリアリティを大きく向上させています。特定の作風を驚くほど正確に再現することもできます。実際の写真のような画像を求めれば、実物そっくりの画像を6枚生成します。シュレックの先史時代の洞窟壁画を求めれば、先史時代の画家が描いたかのようなシュレックの絵を6枚生成します。
アルゴリズムにこれができるとは驚きです。画像はひと組あたり1分足らずで生成されます。すべての画像が見た目に美しいとは限らず、思い描いていたものを必ずしも反映するわけでもありません。それでも、多くの出力から選んだり、異なるテキストプロンプトを試したりする必要はあるものの、これほど多くの優れた結果をこれほど短時間で生み出す方法は、アーティストを雇うことも含め、ほかにありません。思いがけない結果が最高のものになることもあります。
原理的には、十分な資金と専門知識があれば、誰でもこのようなシステムを作ることができます。Google Researchは、最近、同様のテキスト画像生成システムを発表し、大きな注目を集めました。また、ある独立系開発者が独自のバージョンを公開開発しており、今すぐウェブ上で誰でも試せます。ただし、まだDALL-EやGoogleのシステムほどの性能はありません。
ミームやグリーティングカード、広告、そしてもちろんアートなど、こうしたツールが人々の画像制作やコミュニケーションのあり方を変えることは容易に想像できます。
そこにアートはあるのか?
DALL-E 2を使い、さまざまな作風で異なる種類の絵を生成していた初期のころ、ある瞬間に気づきました。「オディロン・ルドン風に描いたシアトルの絵」などを作っていたときのことです。これは私がこれまで開発したどの絵画アルゴリズムよりも優れている、と感じたのです。そしてある意味で、DALL-E 2は私よりも優れた画家なのだと気づきました。
実際、DALL-E 2のように、数秒で高品質かつ多彩な画像を作り出せる人間はいません。これらの画像をすべて人が作ったと聞けば、当然、その人は創造的だと言うでしょう。
しかし、だからといってDALL-E 2がアーティストになるわけではありません。ときには魔法のように感じられても、その内部にあるのは依然としてコンピューターアルゴリズムであり、OpenAIの開発者が定めた指示に厳密に従っています。
これらの画像がアートとして成り立つとすれば、それはアルゴリズムの設計、学習に使われた画像、そして何よりもアーティストによる使い方の産物です。
数回キーを押しただけで生まれた画像には芸術的価値がほとんどない、と考える人もいるでしょう。しかし私には、この考え方は昔ながらの見方を思い起こさせます。機械がすべての作業をするのだから、写真はアートではありえないという考えです。今日では、芸術写真における人間の作者性と技巧が認められ、優れた写真にはボタンを押す以上のものが必要だと批評家たちは理解しています。
それでも私たちは、作品がまるでアーティストの意図から直接生まれたかのように語ることがよくあります。何かを見せたい、あるいは感情を表現したいとアーティストが考え、その結果としてこの画像を作った、という具合です。DALL-E 2は、このプロセスを丸ごと省いているように見えます。アイデアを入力すれば、それで完成です。
しかし、昔ながらの方法で絵を描くとき、私の作品は当初の目標を実行するだけでなく、探求のプロセスから生まれると気づきました。これは多くのアーティストに当てはまります。
ポール・マッカートニーを例に挙げましょう。彼はジャムセッション中に「ゲット・バック」の曲を思いつきました。曲の構想をあらかじめ立てていたわけではなく、ただ手探りで試し始め、そこからバンドが曲を発展させていきました。
ピカソは、自分の制作過程も同じように説明しています。「キャンバスに何を描くかは、使う色をあらかじめ決めていないのと同じで、前もっては分からない……絵を描き始めるたびに、私は空間へ飛び込むような感覚を覚える。」
私のDALL-E 2を使った探求でも、ひとつのアイデアが次のアイデアを呼び、さらにその次へとつながり、やがて出発点から遠く離れた、まったく予想外で魔法のような新しい領域にたどり着くことがありました。
アートとしてのプロンプト
DALL-E 2のようなシステムを使う際のアートは、最終的なテキストプロンプトだけでなく、そのプロンプトに至る創作プロセス全体から生まれる、と私は考えます。アーティストによって異なるプロセスをたどり、その人独自のアプローチや技術、こだわりを反映した異なる結果に行き着くでしょう。
私は、自分の実験を、ばらばらで奇抜な画像の寄せ集めではなく、それぞれがひとつのテーマを一貫して掘り下げるシリーズの集合として捉えるようになりました。
こうした画像やシリーズのアイデアはさまざまなところから生まれ、多くの場合、いくつかの足がかりでつながっていました。あるとき、現代アーティストの作品をもとに画像を作っていて、現代日本のアーティスト、草間彌生の作風で、場所に合わせたインスタレーションアートの画像を生成したいと思いました。いくつか満足のいかない場所を試した後、スペインのコルドバにある、かつてモスクであり教会でもあったメスキータに設置するというアイデアを思いつきました。その画像を、コルドバ出身の建築家仲間マヌエル・ラドロン・デ・ゲバラに送り、そこから一緒にほかの建築のアイデアを自由に膨らませていきました。
こうして、さまざまな建築家の作風による架空の新しい建物のシリーズが生まれました。
そのため私は、DALL-E 2を使った自分の取り組みを、探求の一形態であると同時にアートの一形態でもあると考えるようになりました。iPadで描く絵のように、しばしば素人のアートではありますが。
実際、ライアン・マードックのように、プロンプトを使った画像制作をアートとして認めるべきだと主張するアーティストもいます。彼はその例として、経験豊富なAIアーティスト、ヘレナ・サリンを挙げています。
「Midjourneyの作品の大半を見ると、面白かったり楽しかったりするものが多い」と、マードックはインタビューで私に語りました。Midjourneyは、人気のある別のテキスト画像生成システムです。「でも、[サリンの]作品には一貫した筋が通っています。多くの思考を重ね、技術を磨いてきたことがよく分かります。出力は視覚的にいっそう魅力的で興味深く、彼女の作風が一貫して表れています。」
DALL-E 2や、ほかの新しいテキスト画像生成システムを使うには、その癖を学び、よくある落とし穴を避ける方法を身につける必要があります。また、ステレオタイプへの依存や偽情報への悪用の可能性など、潜在的な害について知っておくことも大切です。DALL-E 2を使うと、意外な相関関係にも気づくでしょう。たとえば、昔の画家や映画監督、写真家の作風を使うと、あらゆるものが古めかしくなる、といったことです。
作りたいものが非常に具体的な場合、DALL-E 2では実現できないことがよくあります。その結果を得るには、後から多くの難しい手作業による編集が必要になります。目標が曖昧なときこそ、思いがけない驚きが新しいアイデアを生み、そのアイデアがまた別のアイデアへとつながっていく、最も楽しいプロセスになります。
新たな現実を形にする
こうしたテキスト画像生成システムは、ユーザーが新たな可能性を思い描く助けにもなります。
アーティストで活動家のダニエル・バスキンは、「現実世界で状況を設定するか、Photoshopで緻密に作業するかして、『本物の』例を通じて別の現実を示すことに、いつも取り組んでいる」と私に話しました。しかしDALL-E 2は、「リアリティの表現が非常に優れているので、驚くほど便利な近道です。風刺でも、夢でも、美しさでも、ありうる未来を人々が形にするうえで、それが鍵となります。」
彼女はこれを使って、代替交通システムや、水の代わりに麺を運ぶ配管を想像しました。どちらも、アーティストで挑発者でもある彼女の感性を反映しています。
同様に、アーティストのマリオ・クリンゲマンが描いた、ホームレスの人々のテントを取り入れた建築パースは、私が描いた豪華な夢の家の建築パースへの反論と捉えることもできます。
このアート形式の意義を判断するにはまだ早すぎます。私は、優れた本『アート・イン・ジ・アフターカルチャー』の一節をよく思い出します。「AIの支配的な美学は新奇さである。」
これは、アートに使われる新しいテクノロジーなら、ある程度はどれにも当てはまるでしょう。1890年代にリュミエール兄弟が撮影した初期の映画は、映画の傑作というより目新しいものでした。映像が動くこと自体に人々は驚いたのです。
AIアートのソフトウェアは急速に進化しており、技術面でも芸術面でも新奇さが絶えません。毎年、刺激的な新技術を探求する機会が訪れるようです。どの技術も前のものより強力で、アートと社会を変える力を秘めているように見えます。
