全社規模の人工知能(AI)はさらなる可能性を引き出すことができ、AIインシデントのコストを最大8%削減することが示されていますが、これを組み込んでいるリーダーはわずか2%です。
全社規模で拡大するには、AI活用に対応したデータ、目的に適したAIモデル、スキルを高めた人材、責任あるAIガバナンスが必要です。これらを並行して整えることで、基準を損なうことなく生産性を確保できます。
世界経済フォーラムは、企業が新しいテクノロジーを理解し、その責任ある導入と活用を推進できるよう、中立的なプラットフォームを提供しています。その取り組みには、AIガバナンス・アライアンスも含まれます。
人工知能(AI)は人々の仕事をより良くし、生産性を最大40%高めています。しかし、限られたいくつかの領域でAIを導入することと、ソフトウェアエンジニアリングやマーケティングなどで導入し、全社規模に拡大することには大きな違いがあります。
真のイノベーションを実現するには、AIが個々のタスクだけでなくワークフロー全体に影響を及ぼし、一貫性のあるリアルタイムの意思決定を可能にする必要があります。
AIを全社規模に拡大するには、AI活用に対応したデータ、目的に適したAIモデル、スキルを高めた人材、責任あるAIガバナンスが前提となります。
これらを組み合わせることで、AIシステムは本番環境でビジネス成果を生み出し、正しい方向から逸脱しないようにできます。たとえば、ダウンタイム削減のために予知保全にAIを適用する際は、従業員の安全を守る必要があります。
責任あるイノベーションは成長の原動力
こうした要素を適切に整えることは、組織にとって不可欠です。しかし、AIによる責任あるイノベーションは決して容易ではありません。インフォシスの調査によると、2025年初頭の時点で、戦略、データ、テクノロジー、ガバナンス、人材という5つの柱において、エンタープライズAIへの準備が整っていた組織はわずか2%でした。
さらに、最近の調査では、AIを大規模に運用へ移行する際、必要な責任あるAIの実践を組み込んでいるリーダーはわずか2%であることが分かりました(15%は追随者です)。最も弱い能力は、リスク軽減とAIソリューションへの信頼でした。
責任あるAIの導入に成功した組織には、大きなメリットがありました。調査対象となった責任あるAIの先進企業は、AIインシデントのコストと深刻度を低減しました。
明確な傾向が現れています。イノベーションに関する議論で、顧客はオープンソースを選ぶ傾向を強めています。
一方、説明可能性や信頼性を高める手法、モデルの検証、エンジニアリングプロセス、知的財産権侵害への保護など、責任あるAIのベストプラクティスにより、AI関連の総支出が最大8%削減されました。
さらに、責任あるAIにより焦点を当てたアプローチによって、AIプロジェクトの処理能力が向上しました。そのため、調査対象の経営幹部の78%が、責任あるAIは自社の重要な成長の原動力だと回答したのも当然です。
プラットフォーム、ファウンドリー、ファクトリーの重要性
AIは急速に進化しており、想定するユースケースに基づいて最適かつ最適合のモデルとクラウドインフラを採用することが不可欠です。「ポリAI」「ポリクラウド」というプラットフォーム・アプローチ、つまり複数のAIモデルとクラウドプラットフォームを戦略的に併用する方法は、必要なガバナンスの枠組みとともに、責任あるAIイノベーションの大規模展開を可能にします。
また、複数年にわたるAI投資に組織が縛られることも避けられます。
このプラットフォーム・アプローチは、さまざまな業界で導入されているエージェント型AIも可能にします。これは、目標を追求するソフトウェアボットが、人間の介入をほとんど、あるいはまったく受けずにタスクを完了するテクノロジーです。
このプラットフォームでは、モデル・コンテキスト・プロトコルやエージェント間プロトコルと呼ばれる特定の通信規則を用いて、AIエージェントがSAPやSalesforceなどの機密性の高いエンタープライズシステムと安全にやり取りできるようにします。
これらのプロトコルは強力なセキュリティ保証を提供するよう設計されており、エージェントが意図しないタスクや有害なタスクを実行しないようにします。
プラットフォーム・アプローチは、プライバシー要件に準拠したプロセスを可能にしながら、AIソリューションの開発を加速します。最近の調査と顧客の経験は、2段階のアプローチを示唆しています。まず、AIファウンドリーを構築して新しいモデルやソリューションを試し、その知見をAIファクトリーで運用に移します。このアプローチは、導入を拡大しながらAI関連のリスクを管理します。
オープンソースの転換点
AIを責任ある形で拡大するうえで、基盤となるAIモデルの選択も同様に重要です。2026年には、多くの組織がオープンソースのソリューションに移行すると見込まれます。現在すでにオープンソースAIツールを活用している63%の組織の動きが広がることになります。
インフォシスのようなシステムインテグレーターにとって、オープンソースは、一部の有力プロバイダーへの依存を減らし、拡張性が高く費用対効果に優れたソリューションの開発を可能にすることで、AIの民主化を促します。
プロプライエタリモデルよりオープンソースが選ばれる主な理由は、導入・保守コストの低さに加え、開発者向けのAIコミュニティが集約されたHugging Faceのようなエコシステムが提供する、柔軟性と幅広いモデルの選択肢です。
明確な傾向が現れています。イノベーションに関する議論で、顧客はオープンソースを選ぶ傾向を強めています。企業は、こうしたモデルがもたらす透明性と柔軟性の向上に加え、業界固有の領域に合わせて微調整できる点にも引かれています。そこでは、モデルの精度と文脈理解が重要です。
ただし、裏を返せば、これらのモデルがどれほど「オープン」なのかという疑問が残ります。多くのモデルでは、学習データセット、事前学習プロセス、評価コードへのアクセスが依然として制限されています。これによりモデルの説明責任が損なわれ、AIバリューチェーン全体での責任分担が複雑になる可能性があります。
一元的なガバナンスの必要性
本番運用に対応したAIプラットフォームの構築やモデルのオープンソース化に加え、責任あるイノベーションを運用に定着させる最も効果的な方法は、ガバナンスを一元化することです。AIモデルとエージェントを一元管理するレジストリは、セキュリティと運用基準の順守を維持しながら、拡張性のある導入を支えます。
一元化された機能は、コストの追跡、パフォーマンスの監視、継続的なイノベーションも可能にし、AIの導入を責任ある形で、信頼性と効率性を保ちながら進められるようにします。
インフォシスは、AIエコシステムに責任と透明性を組み込むため、いくつかの取り組みを開始しました。
AIマネジメントシステム:開発から導入までのサイクル全体で、AIの利用を継続的に検証するための枠組みです。
ソフトウェアコンポーネント認証:すべてのソフトウェアコンポーネントを追跡し、適切にライセンス管理し、脆弱性を記録し、サプライチェーンのリスクを軽減し、ライセンス違反を防止していることを検証できるシステムです。
責任あるAIのガードレール:インフォシスは、バイアス検出、説明可能性、ハルシネーション制御の仕組みを組み込んだ責任あるAIツールキットを開発し、AIシステムが倫理面・運用面の境界を守って動作するようにしています。このツールキットは、業界で広く採用されるよう、インフォシスがオープンソース化しています。
データセットのガバナンス:欧州連合のAI法および知的財産権に関する規約に沿って、データシートの活用とモデルの来歴検証を行い、責任あるデータ利用と追跡可能性を確保します。
ISO 42001認証:この新たな責任あるAIの標準を取得することで、従業員と顧客の双方におけるAIシステムへの信頼が高まります。
これらのイノベーションを通じて、インフォシスは安全で責任あるAIソリューションを大規模に運用できるようになります。この能力は、信頼とブランドの評判を守りながらイノベーションを支えます。AI関連のインシデントがしばしば評判に重大な損害をもたらすビジネス環境では、これらすべてが不可欠です。
人を通じた責任あるAIイノベーション
こうした要素の中でも、人材の側面が最も重要かもしれません。インフォシスのAIビジネス価値レーダーによると、従業員の準備を積極的に整え、関与を促す組織は、最も高いリターンを達成します。従業員を十分に支援せずにAIを導入する組織を、常に上回っています。
実際、イノベーション文化は戦略を上回ることがよくあります。インフォシスが実践してきたように、チームが高度なAIソリューションの構築者となるよう力をつけることは、台頭するエージェント型AIの時代に競争優位を得るための決定的な一歩です。


