2023年6月、世界銀行は繁栄の基準として1日25ドルのしきい値を設定しました。
世界の大半の人々はこのしきい値に達していませんが、データは望ましい方向に動いています。
世界の繁栄の現状について、誰もが理解しておくべき4つの重要なデータを紹介します。
誰もが、食料、住居、衣服などの必需品を賄うだけでなく、豊かな暮らしに結び付くモノやサービスも手に入れられるだけの資金を持ち、繁栄の中で暮らしたいと考えています。冷蔵庫やオートバイ、美容院に行くこと、時折旅行することなどです。
1990年、画期的な節目として、世界銀行は世界の極度の貧困ラインを、1人当たり消費額が1日1ドルとなる水準に定めました。現在の価格に換算し、各国間の購買力の差を調整すると、これは1日2.15ドルに相当します。
貧困の撲滅は、1990年代から世界銀行の主要な使命でしたが、2013年に「双子の目標」を定め、2つ目の目標として「繁栄の共有」を加えました。繁栄の共有とは、各国で所得下位40%の人々の所得成長率が少なくとも平均と同程度になるようにすることです。2023年6月、世界銀行は繁栄の共有に関する目標を見直し、1日25ドルのしきい値を設定しました。
購買力平価(PPP)で1日25ドル、つまり年間9,125ドルの所得があれば、すでに典型的な中間層の暮らしを送ることができます。私たちはその入り口となる水準を、PPPで1日12ドルと定義しました。
今日の繁栄の現状と、1日25ドルというしきい値がなぜ重要なのか、知っておくべきことを紹介します。
データが示すこと
World Data Labは、世界の繁栄の現状について最新の推計を提供しています。特に注目すべき事実は4つあります。
1. 世界はまだ繁栄していない
を用いて、World Data Labの消費予測モデル(「未計上の支出」の25%を考慮し、所得分布に沿って配分する)に基づいて推計すると、現在、1日25ドル以上で暮らす人は24億人です。これは世界人口の3分の1未満です。また、世界銀行の最新推計は5年前に作成され、「未計上の支出」を考慮していないため、世界銀行の現在の推計よりも多くなっています。こうした調整は、特にインドの推計に大きく影響します。
2. 世界の繁栄は急速に進んでいる
繁栄の中で暮らす人の数は、毎年約8,500万人増えています。1秒当たり3人に相当します。一方、世界人口も毎年約7,000万人増えるため、「繁栄ライン」を下回る人の減少は年間約1,500万人にとどまります。ただし、新型コロナ禍に57億人でピークに達して以来、「非繁栄層」は継続的に減少すると予測しています。現在の傾向が続けば、2049年に転換点を迎え、初めて繁栄層が非繁栄層を上回る見込みです(下図参照)。

3. 新興国の繁栄層人口はOECDを上回る
人数の逆転は2021年に起きましたが、新興市場の繁栄層人口による支出がOECDの富裕層を上回るのは2033年以降です。こうした変化は、経済活動の移り変わりにも表れています。世界的な主要ブランドが新興市場から生まれ、テスラやロレアルなどの欧米有力ブランドも、成長をアジアに依存するようになっています。それでも現在、新興市場で繁栄した暮らしを送れる人はわずか20%で、OECDの82%と比べて低い水準です。


4. 繁栄層と非繁栄層では支出の傾向が異なり、その差は広がっている可能性がある
貧しい人々は食料、住居、衣服などの必需品により多くを費やします。一方、より裕福な人々は現代的な市場で、冷蔵庫、洗濯機、オートバイなどの耐久消費財や、それに関連するサービスにより多くを支出します。また、富裕層は旅行や外食にもはるかに多くを費やします。裕福な人々はより高価な食料、住居、衣服も購入しますが、必需品が支出に占める割合は縮小しています。World Data Labの消費予測モデルによると、1日25ドルで暮らす典型的な人は、食料(6.80ドル)、住居(5.40ドル)、衣服(1.40ドル)などの必需品に約13.50ドルを費やし、裁量的支出に11.50ドルを充てることができます(図4参照)。

世界の繁栄への道のりはまだ長く、世界の半数が繁栄した暮らしを送れるようになるまで、少なくとも一世代、約25年かかります。それでも、世界が混乱する中で急速な進歩が見られるという事実は、改めて、見出しよりも趨勢が重要であることを示しています。


