ジェローム・パウエル氏はジャネット・イエレン氏の後任として米連邦準備制度理事会(FRB)議長に就任し、経済刺激策を段階的に縮小する同氏の政策を引き継ぐとみられています。しかし、それは実際には何を意味するのでしょうか。中央銀行の総裁や議長の役割とは何で、なぜ彼らはたった一言で金融市場全体を動かせるのでしょうか。ここでは、中央銀行の実際の仕組み、現代経済において非常に重要な理由、そして今後どのように変化していく可能性があるのかを簡潔に解説します。
中央銀行は実際に何をしているのか?
連邦準備制度のような中央銀行は、安定した経済成長を支えるため、政策金利を設定します。これは最も重要な役割の一つです。金利は、資金を借りたり貸したりするコストを左右するからです。金利が上がると、住宅ローンをはじめ、事業融資などほかの借入金の負担も増えます。その結果、住宅を購入する人や、事業に投資するために資金を借りる人が減り、経済は減速します。景気を刺激するため、中央銀行は政策金利を引き下げ、借入コストを下げることができます。借入が増え、少なくとも理論上は経済の勢いが増します。
なぜ重要なのか?
経済成長は雇用と直接結びついています。概して、成長が速いほど雇用も増えます。しかし、経済が急成長しすぎると、過熱することがあります。人々が過剰な債務を負い、返済できなくなるかもしれません。中央銀行が資金を供給しすぎると、物価が急上昇します。最悪の場合、資金の過剰供給が制御不能なインフレを招くこともあります。例えば1920年代初頭、ドイツ政府が第一次世界大戦の債務を紙幣の増刷で解消しようとした後、ハイパーインフレがドイツ経済を荒廃させました。極端な局面では、客がコーヒーを2杯飲んでいる間にもその価格が上がるほど、ハイパーインフレが深刻化しました。多くの歴史家は、こうした経済の混乱がファシズムの台頭への道を開いたと論じています。

中央銀行の総裁や議長は、将来の利上げをどのように示唆するのか?
投資家は一般に、中央銀行の総裁や議長に安定性と予測可能性を求めます。先行きを把握し、それに応じて投資計画を立てる必要があるからです。経済全体を揺るがす予想外の金利変動に絶えず振り回されていては、事業を築いたり、ポートフォリオを運用したりするのは困難です。そのため、多くの中央銀行の総裁や議長は、金利の引き上げや引き下げをかなり前もって示そうとします(時には、突然の変更という手段を使うこともあります)。彼らの微妙な警告を正しく読み解くこと自体が、一つの技術と言えます。
例えば、ジャン=クロード・トリシェ氏が2003年から2011年まで欧州中央銀行総裁を務めていた頃、繰り返し使った表現の一つに、インフレに対して銀行は「警戒」を続ける必要がある、というものがありました。彼がメッセージをわずかに変え、「強い警戒」が必要だと述べるたびに、投資家は経験から、それがしばしば翌月にも実施される利上げを示すと理解していました。その結果、こうした発表の直後には通常ユーロが下落しました。たった一語が加わっただけでそうなったのです。トリシェ氏の後任であるマリオ・ドラギ氏も、金融政策の措置を示すために「警戒」という言葉を使いました(同氏の場合、経済を抑制するのではなく刺激するための措置でした)。市場はそれに反応して動きました。
中央銀行にはほかにどのような責任があるのか?
連邦準備制度のような中央銀行は、債券を売買して通貨供給量を増減させます。流通する資金が多いほど、貸し借りがしやすくなります。中央銀行は外貨準備も管理し、最後の貸し手としての役割も担います。銀行が貸し出せる金額や、手元に留保しなければならない資金の額も決めます。準備率、つまり銀行が保有しなければならない資本の割合を引き下げることも、貸し出しに回せる資金を増やすため、景気刺激につながります。
2008年の金融危機以降、中央銀行は経済成長を回復させるため、さまざまな非伝統的な措置に踏み切ってきました。中央銀行は商業銀行から債券を買い取り、資金を注入しました。銀行がその資金を投資家に貸し出すことを期待したのです。欧州と日本の中央銀行は主要政策金利をゼロ未満に引き下げ、銀行が融資を行わず資金を貯めておくことに実質的なペナルティーを課しました。

パウエル氏がFRBを率いることになった時、中央銀行の総裁や議長は、最終的により正常な経済状況へ戻るよう圧力を受けていました。超低金利は長期的には経済に悪影響を及ぼすためです。貯蓄や貸し出しの行動をゆがめ、大きな危機が起きた際に中央銀行が打てる手を失わせます。
中央銀行は昔からこれほど重要だったのか?
中央銀行は現代のグローバル化した経済で、とりわけ重要な役割を果たしていると言えるでしょう。主要経済国での一度の利上げが、世界中に波及するからです。一方で、中央銀行は設立以来、世界の政治や経済に影響を及ぼしてきました。世界最古の中央銀行であるスウェーデンのリクスバンクは1668年に設立され、その後まもなくデンマークとの戦争に資金を提供しました。
では、中央銀行は絶大な力を持っているのか?
そうとも言えますし、そうでないとも言えます。中央銀行の決定は経済を形作りますが、ほかの要因も重要です。例えば、熟練した労働力、技術革新、優れたインフラ、機会均等へのアクセスなどは、力強く健全な成長を生み出すうえで欠かせません。
パウエル氏はどのように任命され、新しい職務ではどのような課題に直面するのか?
米国では、大統領がFRB議長を任命します。オバマ大統領はイエレン氏を任命し、トランプ大統領はパウエル氏を任命しました。弁護士出身のパウエル氏は、2011年からFRB理事を務めていました。イエレン氏の下で、FRBは経済刺激策を段階的に縮小する方向へ進みながら、政策金利を4回引き上げました。パウエル氏も、この政策をおおむね引き継ぎ、金利を徐々により正常な水準へ戻すとみられています。
