人の移動が増加し、多くの場合、より不安定さを増すなかで、第四次産業革命が進行している。昨年、世界では2億5,000万人の国際移民が確認され、そのうちわずか2,100万人が国連難民条約に基づく難民として認定された。国内では、農村部から都市への国内移住率も上昇しており、都市化率は2050年までに66%に達すると推計されている。
実際、中国だけで2億7,000万人の国内移住者がいる。現在の移住の動向、経済や生計に及ぼす異常気象の影響、そして移住に効果的に対処するうえで各国が直面する制約を考えれば、安全で秩序ある正規の移住を支える第四次産業革命技術の可能性を見過ごす余裕はない。

第四次産業革命(4IR)とは、ロボット工学、人工知能、ナノテクノロジーなどを通じて、テクノロジーが社会に組み込まれる新たなあり方を指す。4IRは、過去にも見られたものを含め、さまざまな形で世界の移住に影響を及ぼす。具体的には、4IRは、これまで存在しなかった事業や雇用の機会を移民に生み出す可能性がある。とりわけ、ロボットとその多岐にわたる用途などについて適切な訓練を受ければ、その可能性は高まる。また、移民の起業家が技術革新の最前線にいることから、起業への道も開く(例えば、イーロン・マスクは移民である)。
同時に、あらゆる産業革命に伴う労働市場の混乱は、移住の恩恵に対する強い不信や懐疑を生んできた。実際、労働力を節約する4IRの進展により、技能水準の低い労働者は職を失う可能性が高い。移民はそのリスクにさらされるだけでなく、より魅力の乏しい仕事を受け入れることで労働基準の低下を招いているとして非難されることもある。
しかし、4IRは、過去に見られた影響を超えて、移住と移住に対する認識も変えつつある。移住管理や国境管理から、移住の流れの誘導、移民の社会統合の促進に至るまで、特定の4IR技術によって今後10年間に移住政策や慣行が大きく変わると見込まれる。
いくつか例を挙げよう。
ドローン技術の活用
デジタル技術やスマートフォン技術が移民の体験を変えてきたことは、すでに明らかだ。新しい国に到着した移民や難民が最初に尋ねることの二つは、SIMカードの入手方法とWi-Fiへの接続場所だ。移民にとってスマートフォンは、困難な移動を安全に乗り越え、到着に備えて支援ネットワークを整えるための不可欠なツールとなっている。
移民や難民がGPSやソーシャルメディアの通信アプリを使って移住経路を把握し、決定する一方、国際機関やNGOは人道支援活動でドローン技術を活用する機会を増やしている。実際、無人航空機(UAV、ドローン)の利用は、人道支援活動における不可欠な手段として、ますます認識されるようになっている。ドローンは地図作成、遠隔地への物資輸送、被害や変化の評価・監視に特に有用だからだ。国連がコンゴ民主共和国(DRC)とルワンダで初の監視実験を開始した2013年以降、人道目的での導入が増えている。
各国政府も、移住管理にドローンを活用できる可能性を認識している。米国税関・国境警備局(CBP)は2005年から、国境を越える移住の追跡を目的に国内でドローンを使用し始めた。現在は、顔認識などの生体認証技術を使い、3マイルの範囲内で個人を特定できる、小型で軽量なドローンを国境警備隊に配備する計画がある。CBP職員が徒歩、馬、または車両で移動する複数の人々を追跡できるよう、ドローンを発進させることが狙いだ。
一方、欧州連合(EU)も、移民の流れに関するリアルタイムデータを提供するため、映像、赤外線センサー、化学物質検知機能を備えたドローン群への投資に踏み切った。地中海では、移民の救助活動を支援するため、欧州の政府機関やNGOがすでにドローンを利用している。
このように、移住分野でのドローン活用には大きな可能性があり、まだ十分に探究されていない。しかし、こうした追跡には、国家安全保障上の利益と個人の権利・自由の均衡をめぐる議論でたびたび指摘される倫理的問題が伴う。特に、移住監視にドローンを使うことはプライバシーに対する個人の権利を脅かし、市民的自由全般を損なうと批判されている。この技術の利用には、導入と並行して法的な精査が必要だ。
AIで移住政策を強化する方法
多くの分野と同様、移住政策は技術の動向に遅れをとり、その現象がもたらし得る利益を損なっている。移住に関わる課題に人工知能(AI)や機械学習を適用すれば、移住の流れを予測し、技能を生かし、送金の力をより深く理解するための有効な方法を明らかにできる可能性がある。AIと機械学習は、クラウドソーシングや公開情報を含む豊富なデータを活用して、今後の人の移動を示唆するデータのパターンや相関関係を探る可能性を秘めている。
この種の分析は、過去と現在の移住パターンを調べ、関連するきっかけを理解するところから始まる。政策立案者が移住の流れの発生源をめぐる複雑さを解き明かす助けとなる。データの質が高く、予測の方向性を変え得る政治的、経済的、社会的な「混乱」の可能性を適切に織り込んでいれば、移住の動向に機械学習を適用することで、将来の移住の流れを地図化できる可能性がある。その結果、各国や地域社会が移民の社会統合戦略をより効果的に準備できるかもしれない。
同様に、こうした予測マップは、移住の流れをさらに管理するための有用な情報を提供できる。移住データを、技能の不足などの労働市場情報と組み合わせれば、自分の技能がどこで評価されるか、ひいてはどこへの移動を計画すべきかを移民が把握しやすくなる。移住に関する十分な情報に基づく意思決定を移民に支援することは、欧州に到着する難民を支援してきた「チャットボット」の進化における次の段階かもしれない。技能や機会と人材のより良いマッチングは、移住とその潜在的な恩恵をめぐる新たな見方を生み出す可能性がある。
現段階では、主に危機的状況において、移住関連の課題に人工知能を活用する試みがいくつか行われている。初期の例の一つがウシャヒディで、2010年のハイチ地震後、FacebookとTwitterからリアルタイムのクラウドソーシング報告を集め、危機マップを作成した。その後、人工知能や機械学習は、ネパールなど、さまざまな危機の現場で活用されてきた。また、シリアなどで、戦争の影響に対処する被害者の心理的支援にも使われている。しかし、移民の社会統合を促し、社会にとってより良い結果につながる動向を明らかにする余地は、依然として非常に大きい。
AIは、避難中や新たな国への定住後に組織が実施する活動においても重要な役割を果たし得る。例えば、AIを活用した技能評価を義務的に実施し、移民や難民にこうした技術の訓練や起業支援を提供すれば、その潜在能力を最大限に引き出し、生活の再建を支援できる。移民が自らの技能と大きくかけ離れた、不安定で生産性の低い部門で働くのではなく、受け入れ国の繁栄に貢献できるようになれば、労働基準を低下させるという見方を和らげることにもつながる。
フィンテックが社会統合を支える方法
世界で移住が増えるなか、移民が受け入れ国に円滑に社会統合できるよう、費用対効果が高く利便性のある幅広い金融サービスを利用できるようにすることが、最も差し迫ったニーズの一つとなっている。
しかし、多くの国では金融サービス部門が自国民の多くのニーズにさえ応えられておらず、多くの移民を取り巻く状況はさらに厳しい。
移民は、本人確認(KYC)要件を満たす書類がなく銀行口座を開設できないといった基本的な問題から、送金や受取の難しさ、法外な手数料に至るまで、さまざまな困難に直面している。請求書の支払い、保険の利用、生活の向上や将来への投資に向けた融資やローンの利用など、便利な手段を得られないことも多く、こうしたサービスはいずれも夢のままだ。
4IRは初めて、大きな機会を移民を包摂する形で金融システムに迅速かつ効率的に取り込む道を開く。これは、受け入れ国の自国民の多くでさえ経験したことのない形だ。技術的な解決策は、従来の金融サービスの提供方法を一変させると同時に、銀行が革新を進め、顧客の実際のニーズに応える魅力的な新商品やサービスを提供する道を開く。
初期の革新の多くは、従来のやり方を変えるフィンテック企業から生まれている。Transferwiseは、もともと決済会社だったが、最近、国境を越えて利用できる銀行を立ち上げた。AlipayとTencentはアジアの金融革命を先導してきた。また、Lenddoなどの革新的な企業は、ビッグデータとAIを活用し、金融機関が十分なサービスを受けていない市場に、持続可能な形で商品やサービスを提供できるようにしている。
インドやエストニアなどの政府も、政府主導のデジタル施策を通じて金融包摂を急速に拡大し、先頭を走っている。また、国際機関の一部、例えば国連難民高等弁務官事務所(UNCHR)は、IrisGuardおよびカイロ・アンマン銀行と連携し、ヨルダンで虹彩認証などの革新的なハイテクソリューションを活用して、難民が金融支援を確実に利用できるようにしている。これは難民を金融システムに包摂するだけでなく、人道支援の効率と効果も高めている。
こうした機会はすでに存在する。今後、他国がこれらの事例からどのように学ぶのか、既存の銀行やその他の金融機関がサービスを求める移民の増加に応えられるのか、それとも、私たちの多くが当然視している重要なサービスへのアクセスを実現するには、変革をもたらすフィンテック企業や革新的な国際機関、政府の力が必要なのか、注目される。
第四次産業革命で実現する、よりスマートな移住
過去10年間、移住のリスクへの懸念から、その潜在的な恩恵を理解しにくくなることが少なくなかった。4IRは、成功事例を広げ、新たに生み出すまたとない機会を提供し、受け入れ社会と移民が共に繁栄することを後押しする。
4IR技術の将来の活用を考える際には、データのプライバシーや誤差の範囲など、確かに対処すべき倫理的課題がある。それでも、よりスマートな移住の実現は、より平和で持続可能な世界を築くために、国際社会、各国、企業が果たすべき課題である。
