この夏のある朝、私はロンドンにある唯一の国連専門機関を訪ねた。国際海事機関(IMO)の本部は、国会議事堂から少し上流にあるテムズ川南岸に位置する。近づいていくと、金属で彫られた船首が、地味な建物の1階部分に鼻のように取り付けられているのが見えた。中では、主に女性のIMO通訳者が十数人働いていた。彼女たちは朗らかで話し好きで、姿を見られることはめったになく、声を聞かれることの多い人々として想像するよりも、ずっとおしゃれな装いだった。
私はガラス張りのブースへ階段を上り、驚くほど特別でありながら、まったく日常的でもある光景を目にしようとしていた。ブースは物置小屋ほどの大きさで、明るいものの、空気がこもっていた。眼下には緩やかな曲線を描く代表者会議場の机が並び、会場は半分ほど埋まっていて、その大半はスーツ姿の男性だった。マリサ・ピンクニーとカルメン・ソリーニョという2人の通訳者の間に座ると、すぐに最初の代表者が話し始めた。ピンクニーはマイクを入れ、少し間を置いてから、代表者の英語の発言をスペイン語に訳し始めた。
その朝、彼女が行ったことを一つずつ解きほぐし、構成要素を列挙してみよう。
代表者が話す間、ピンクニーは、ある言語で組み立てられたメッセージを理解すると同時に、別の言語で同じメッセージを構成し、発話しなければならなかった。この作業には、感覚、運動、認知の能力が驚くほど見事に組み合わさり、それらすべてが一斉に働く必要があった。彼女は話し手にゆっくり話すよう求めたり、説明を求めたりせず、途切れることなくリアルタイムでそれを行った。言いよどむことも、間を置くこともなかった。進化の歴史のどこにも、これほど特異で難度の高い仕事に備えてピンクニーの脳をプログラムしたものはないはずだ。それを遂行するには、最も強力なコンピューターにも及ばない柔軟性と機微が必要だった。彼女の脳、いや、どの人間の脳であれ、これを実行できるとは驚くべきことだ。
神経科学者たちは何十年にもわたって言語を研究し、多言語話者に関する研究を数多く発表してきた。しかし、このプロセス、つまり同時通訳を理解することは、科学にとってはるかに大きな課題だ。通訳者の脳ではあまりにも多くのことが起きているため、何から始めればよいのかさえ分かりにくい。それでも近年、少数の熱心な研究者たちがこの課題に取り組み始め、脳の一領域である尾状核が、すでに注目を集めている。
尾状核は言語に特化した領域ではない。神経科学者たちは、意思決定や信頼といったプロセスにおける役割で知られるこの領域を研究している。尾状核はオーケストラの指揮者のように、脳の多くの領域の活動を調整し、驚くほど複雑な行動を生み出す。つまり、通訳研究の結果は、この10~20年ほどの神経科学から生まれた最大級の発想の一つと結びついているようだ。いまでは、最も高度な能力の多くは、特定の課題に専従する専門的な脳領域によってではなく、運動や聴覚など、より一般的な課題を制御する領域どうしの超高速な連携によって可能になることが明らかになっている。同時通訳もまた、ネットワーク化された脳によって可能になる、もう一つの離れ業らしい。
同時通訳には、しばしば劇的な印象が伴う。その理由は歴史にあるのかもしれない。第一次世界大戦後に国際連盟が創設されたことで同時通訳の必要性が生まれ、ニュルンベルク裁判でナチスの幹部を裁く際にこの手法が使われ、その威力が示された。それでも正確性への疑念は残り、国連安全保障理事会が同時通訳を全面的に採用したのは1970年代初頭になってからだった。「それまでは通訳者を信頼していなかったのです」と、ジュネーブ大学の通訳者で研究者のバーバラ・モーザー=マーサーは言う。だが今では、多言語会議の伝統的な二大拠点であるジュネーブとニューヨークの国連機関に、ブリュッセルが加わった。拡大する欧州連合が、ますます多くの言語を取り入れているためだ。現在の言語数は24で、すべての言語の通訳を行う会議もある。
IMOの代表者たちを見下ろしていると、船長室やテレビスタジオのギャラリーからの眺めを思い出した。自分が場を支配しているような気分になったが、通訳者に欠けているものがまさにその支配力なのだから、皮肉な反応だった。彼女たちが口にする言葉も、話す速度も、他者によって決められる。ピンクニーとソリーニョは、その朝に予定されていた演説の一部を手元に持っていたが、ユーモラスな余談にも対応できるよう、常に注意を払わなければならなかった。しゃれ、皮肉、風刺、文化に固有の冗談は、通訳者にとって悪夢だ。ある通訳者が学術論文で述べたように、「原語の一つの単語が複数の意味を持つことに基づくしゃれは、通訳者は一般に試みるべきではない。おそらく面白くならないからだ」。まったくそのとおりだ。
代表者の多くは英語で話していたため、廊下の先にある英語への通訳ブースで働くアン・マイルズにかかる負担は断続的だった。マイルズはフランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語を話し、通訳歴は30年になる。通訳の合間に、彼女は語順について話してくれた。語順も通訳者が日々直面する難題だ。「ドイツ語では『nicht(~ない)』が文のいちばん最後に来ることがあります。何かについて熱心に話していても、話し手が最後になって『nicht』と言うことがある。でもドイツ語を母語とする人なら、イントネーションで『nicht』が来るのが分かります」。マイルズによれば、魚に関する会議では語順が特に問題で、彼女はそうした会議を恐れている。ある魚種について長い文で話され、しかも名詞、つまり魚の名前が文末近くに来る言語では、通訳者は文が終わるまで主語を推測するしかない。
もちろん、こうした落とし穴には笑い話もある。マイルズは、代表者たちが冷凍した雄牛の精液について話し合った農業会議のことを教えてくれた。フランス語の通訳者がこれを「matelot congelés」、つまり「冷凍船員」と訳したという。また、自身の誤訳も紹介してくれた。代表者が、近く開催される会議の開催地である都市ミラノに触れ、「avant Milan(ミラノの前に)」何かを決着させる必要があると話したときのことだ。マイルズはミラノでの首脳会議を知らず、問題が決着するのは「mille ans」、つまり「千年後」だと言ってしまった。
話すのが速すぎる人もいる。「いくつか対処法があります。代表者の話す速度が速すぎると伝えて、ただ止まるのが最善だと考える通訳者もいます」。マイルズ自身は、それを有効だとは思わない。人には自然な話すペースがあり、ゆっくり話すよう求められても、また速度を上げる可能性が高いからだ。もう一つの方法は要約することだ。「素早く理解しなければなりません。この仕事に必要なのは語学力だけではなく、頭の回転の速さと、素早く学ぶ力です」。
こうした難題があるため、同時通訳は疲れる仕事であり、2人の通訳者が30分ごとに交代で休んでいた理由も分かった。映像を介した通訳は、さらに大変だ。「私たちはまったく好きではありません」とマイルズは言う。研究でも、映像を介した通訳はより疲労やストレスを伴うことが確認されている。おそらく、身ぶりや表情もメッセージの一部を伝えており、遠隔で作業すると読み取りにくくなるためだ。「ビデオ通話でも、状況を把握するための視覚的な手掛かりが少なくなります」とマイルズは言った。
さらに退屈もある。ニューヨークでの危機協議なら興味を引くかもしれないが、平均的な政治家はもちろん、海洋規制を担当する平均的な技術専門家も、何時間も人々を夢中にさせるとは限らない。聴衆はうとうとするかもしれないが、通訳者は警戒を保ち続けなければならない。手続き上の細かな規則や決議が、条項や細目を伴って続き、多言語の霧の中を会議が進んでいくうちに、この警戒を保つことがどれほど疲れるか、私は実感した。科学会議で何度も居眠りし、議長を務めたときでさえ一度寝てしまった私は、通訳者たちの忍耐力に畏敬の念を抱いた。
モーザー=マーサーは通訳者として訓練を受けた。ドイツ語、英語、フランス語に堪能だ。その後、神経科学に関心を移した。「通訳をしている間、脳の中で何が起きているのか、とても興味を引かれました」と彼女は言う。「それを調べる方法があるはずだと思ったのです」。1987年にジュネーブ大学に着任した当時、その方法はなかった。通訳学科の関心は研究ではなく、養成にあった。そこで彼女は、脳科学の同僚たちと協力して、その方法を作り出そうとした。
「言語は、人間の認知機能の中でも特に複雑なものの一つです」と、大学の脳と言語研究室のグループリーダー、ナーリー・ゴレスター二は、最近の訪問時に私に語った。「バイリンガリズムについては多くの研究が行われてきました。通訳はそこからさらに一歩進んだものです。二つの言語が同時に活動するからです。しかも一つの様式だけではありません。知覚と産出が同時に起きます。そのため、関与する脳領域は言語を超え、極めて高いレベルに達します」。
ジュネーブでは、多くの神経科学研究室と同様、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)が主な研究手段となっている。fMRIを使えば、特定の課題を遂行する脳を観察できる。通訳に適用した研究では、すでにこのプロセスを可能にする脳領域のネットワークが明らかになっている。その一つがブローカ野で、言語産出と作業記憶における役割で知られている。作業記憶とは、自分が考えたり行ったりしていることを把握し続ける機能だ。この領域は、言語産出と理解の制御を助ける隣接領域とも結びついている。「通訳では、何かを聞いて、同時に翻訳して話さなければならないとき、これらの領域の間に非常に強い機能的相互作用が生じます」とゴレスター二は言う。
ほかにも多くの領域が関与しているようで、それらの間には無数のつながりがある。このネットワークの複雑さにひるみ、モーザー=マーサーはすべてを一度に扱うことを避けた。各構成要素の働きを解明するのは、あまりにも大変だっただろう。そこでジュネーブの研究者たちは、それぞれの要素をブラックボックスとして扱い、それらの箱がどのようにつながり、連携しているのかを理解することに焦点を当てている。「私たちの研究は、通訳者がこれらのシステムを同時に制御できる仕組みを理解しようとするものです」と、チームメンバーのアレクシス・エルヴェ=アデルマンは言う。
脳の進化的に古い中核である線条体の二つの領域が、この実行制御の課題に重要な役割を果たすことが分かってきた。尾状核と被殻だ。神経科学者たちはすでに、これらの構造が学習や運動の計画・実行など、ほかの複雑な課題にも関与することを知っている。つまり、通訳の制御だけを担う単一の脳中枢は存在しないと、エルヴェ=アデルマンらは言う。fMRIで研究されたほかの多くの人間の行動と同様、この離れ業も複数の領域が力を合わせて実現していることが分かった。そして、このプロセスを制御する脳領域は、専門家ではなくジェネラリストなのだ。
この記事のきっかけの一つは、何気ない会話だった。ある人から、同時通訳をしながらクロスワードパズルも解けるほど熟練した通訳者がいると聞いた。名前も日付も場所も示されなかったので、私は懐疑的だった。それでも確かめようと、何人かのプロ通訳者に尋ねた。1人はうわさを聞いたことがあるかもしれないと言い、ほかの人たちは否定的だった。都市伝説だという。
通訳をしながら、ほかのことをする通訳者はいるのかと、私はモーザー=マーサーに尋ねた。女性が多い職業だが、編み物をする人もいる、あるいは編み物がもっと人気の趣味だったころにはいた、と彼女は教えてくれた。規則的な手作業が、翻訳の脳活動を補うことは想像できる。しかし、クロスワードパズルはどうだろう。モーザー=マーサー自身は試したことがないが、話題に詳しく、話し手が明瞭であるなど、例外的な状況なら自分にもできると思うと言う。
そうした離れ業が可能かもしれないということは、同時通訳者の脳で確かに興味深いことが起きていることを示唆する。通訳者の脳が職業によって形作られてきたと考える理由は、ほかにもある。たとえば彼女たちは、自分自身の声を無視するのが得意だ。通常、自分の声を聞くことは発話をモニターするうえで不可欠だ。しかし通訳者は訳している言葉に集中しなければならないため、自分の声に注意を向けないよう学んでいく。
これは20年前、イタリアのトリエステ大学でフランコ・ファッブロらが考案した簡単な実験で初めて示された。ファッブロは24人の学生に、ヘッドホンで自分の声を聞きながら、曜日と月の名前を逆順に唱えるよう求めた。最初は遅延なしで自分の声を聞いた。次に、150、200、250ミリ秒の遅延フィードバックで同じ課題を繰り返した。わずかな遅延でも発話は乱れ、聞き手は話す速度を落とし、言いよどみ、言葉を不明瞭にし、ついには止まってしまうことさえある。予想どおり、多くの学生が間違えた。しかし、グループの半数は大学の翻訳・通訳学部の3年生か4年生で、彼らには有意な支障が生じなかった。
職場で身につけた習慣の一部は、家庭にも持ち込まれることがある。経験豊かな通訳者が速度を身につける方法の一つは、話し手が次に何を言おうとしているかを予測することだ。「誰と話しているときでも、ヘッドセットを着けているかどうかにかかわらず、私はいつも文の終わりを先読みします」とモーザー=マーサーは言う。「あなたが文を言い終えるのを待つことはありません。通訳者の多くは、配偶者や子どもからこう言われて知っています。『最後まで言わせてくれない……』。そのとおりです。私たちはいつも口を挟もうとしています」。
通訳者はまた、難しい話し手に対応する際、ストレスに耐え、自制心を発揮できなければならない。通訳者へのアンケートに基づくある総説を読んだところ、この職業の人々はその結果として、神経質で気難しく、怒りっぽく、プリマドンナ気質だと示唆されていた。そうかもしれない。しかし、マリサ、カルメン、アンの姿には、そうしたところは見られなかった。
数年前、ジュネーブの研究者たちは多言語を話す学生50人に、脳スキャナーの中で横になり、一連の言語課題を行ってもらった。ある課題では、学生は文を聞くだけで、何も言わなかった。別の課題では、同じ言語で文を繰り返した。最も負荷の大きい三つ目の課題では、聞こえた内容を繰り返すと同時に、別の言語に訳すよう求められた。
認知の面から見ると、これは大きな段階の変化に思える。最初の課題では聞くだけ、次の課題では繰り返すだけだった。三つ目では、意味と翻訳方法を考える必要があった。つまり、同時通訳を行うのだ。しかし、脳スキャンには神経活動の大きな高まりは現れなかった。「追加的な関与はそれほど大きくありませんでした」とエルヴェ=アデルマンは言う。たとえば、理解や発話を担う領域に活動の増加はなかった。「通訳による追加負荷を処理していたのは、ほんの一握りの特定領域だけでした」。そこには、運動前野や尾状核など、運動を制御する領域が含まれていた。言い換えれば、通訳とは、専門的な資源を大幅に増やすことではなく、それらを管理することなのかもしれない。
この考えはまだ確認されていないが、ジュネーブのチームは1年余り後に同じ学生の一部を再びfMRIスキャナーに招き、確証を加えた。その間、再参加した学生のうち19人は会議通訳の訓練を1年間受け、ほかの学生は無関係な分野を学んでいた。訓練を受けた通訳者の脳には変化が見られ、とりわけ右尾状核の一部に変化があったが、予想とは異なり、通訳課題中の活動は低下していた。尾状核がより効率的な調整役になったか、あるいは課題のより多くの部分をほかの構造に任せる方法を学んだ可能性がある。
「同時通訳の経験を積むにつれて、尾状核が担うような制御された反応の必要性が低下するのかもしれません」と、ジュネーブの研究には関与していないユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの神経科学者デイヴィッド・グリーンは言う。「尾状核は、さまざまな熟練動作の制御に関わっています。また、課題の熟練度が上がると、尾状核の活性化が低下することを示す研究もあります」。
ジュネーブの研究から浮かび上がる、通訳とはより専門化した脳領域を調整することだという見方は、通訳者自身の仕事の説明とも合致するようだ。たとえば、同時通訳者が本当に効果的に働くには、さまざまな方法を使い分ける必要がある。「状況の変化に応じてプロセスを適応させなければなりません」と、現在も主に国連機関で年間40~50日通訳を行うモーザー=マーサーは言う。「音質が悪いこともあれば、話し手に訛りがあることもあります。よく知らない話題の場合もあるでしょう。たとえば、速く話す人と遅く話す人とでは、同じ方法で通訳しません。戦略の組み合わせが違います。入ってくる言葉を一つ残らず捉える時間がなければ、知的に情報を選び取るようなことをしなければなりません」。通訳を支える脳ネットワークの柔軟な働きによって、通訳者は異なる種類の発話に対処する戦略を最適化できるのかもしれない。同じ素材を聞く通訳者どうしでも、異なる戦略を使うことがある。
ジュネーブの研究グループの結果は、神経科学におけるより広い潮流にも合致する。1990年代にfMRIが広く利用可能になると、研究者たちは考え得るほぼあらゆる行動(そう、性行為も含めて。オーガズムを経験している被験者の脳をスキャンした研究者も複数いる)に関与する脳領域の特定に奔走した。しかし、そのデータだけではあまり役に立たなかった。複雑な行動は、個々の脳領域によって制御されるとは限らないからだ。いまでは、異なる領域がどのように相互作用するかを理解することに重点が移っている。たとえば何かを購入するか検討するとき、前頭前皮質や島皮質を含む領域のネットワークが、価格が妥当かどうかの判断を助けることを、神経科学者たちは明らかにしてきた。また、嗅内皮質や海馬を含む別の脳領域群の相互作用は、場所から場所への経路の記憶を蓄えるのに役立つ。
こうした、より高度な理解は、スキャン技術の進歩によって部分的に可能になった。尾状核の場合、現在ではその活動を、尾状核が位置するより大きな脳領域である大脳基底核のほかの部分の活動と区別できる。より精細なスキャンにより、尾状核は認知や行動を調節するネットワークにしばしば関与することが明らかになった。この役割によって、尾状核は非常に多様な行動の中心に位置する。英国の研究者チームは2008年の総説で、尾状核が「あらゆるもの、すなわち、レバーを押すかどうかというラットの判断から、金融取引において相手をどれほど信頼するかという人間の判断まで」を制御するのに役立つことが研究で示されていると述べた。
この総説の著者の一人は、ウェールズのバンガー大学のジョン・パーキンソンだった。私は、尾状核が同時通訳に関与すると予測していたか尋ねた。最初は予測しなかっただろう、と彼は言う。「尾状核は行動の意図性、つまり目標指向性に関与します。行動を実行することそのものというより、なぜそれを行うのかに関わるのです」。そして通訳者の仕事について考えたという。「コンピューターは機械的に翻訳し、しばしば笑えるような結果になります。人間は意味と意図を考えなければなりません。通訳者はメッセージが何であるかを実際に見極め、それを訳さなければならないのです」とパーキンソンは言う。尾状核が関与するのは理にかなっている、と彼は同意する。
ジュネーブの研究は通訳者の養成を担う学科の一部で行われているため、科学的知見がいずれ直接、実務に応用されるのかと考えるのは自然なことだ。モーザー=マーサーと同僚たちは、誇張した主張を慎重に避けており、脳スキャナーを使って上達度を評価したり、通訳の適性がある候補者を選んだりできるという見方を退けている。しかし、同時通訳の研究がすぐに応用につながらないとしても、思考と行動を結びつける神経経路についての知識はすでに広がっており、将来、神経科学者がネットワーク化された脳をさらに深く理解する助けになるかもしれない。ジュネーブのチームは次に、認知の高次側面の一部が、進化的により古く単純な行動から発達したという考えを探究したいと考えている。彼らによれば、脳は運動や摂食など、自ら「本質的」と呼ぶ低次のプロセスを土台に、複雑な認知のレパートリーを構築する。「これは物事を進めるうえで、非常に効率的な方法でしょう」と、モーザー=マーサーと同僚たちはメールで私に語った。「複数の課題に対応するためにプロセッサーを再利用したり適応させたりしながら脳が進化するのは理にかなっています。また、制御を担う認知要素を、その行動を実行するシステムに直接つなぐのも理にかなっています」。認知と行動が密接に行き来する同時通訳は、そうした考えを検証する理想的な試験場かもしれない。
以下との共同掲載: Mosaic
著者:ジェフ・ワッツは、学術的な生物医学研究に5年間従事し、その後は執筆とラジオ放送の仕事を並行して行っている。
画像:サーディア・ザヒディは、世界経済フォーラムのジェンダー平等・人的資本部門のシニアディレクター兼責任者。
