投資、イノベーション、政策、金融は、いずれも21世紀の経済成長モデルを形づくるうえで中心的な役割を果たします。
すべての人にとって持続可能で、強靱かつ包摂的な未来を築くには、この4つの主要課題により緊密に取り組む必要があります。
世界が直面する危機の深刻化は、社会や経済における持続不可能になりつつある傾向に起因するという認識が広がっています。根本的な構造問題に、その源から取り組まなければなりません。
課題は、持続的な経済成長を生み出し、経済を変革しながら、現在の経済モデルがもたらす社会的・生態学的な負荷に対処できる形で、回復と再建を進めることです。世界各地で、過去の汚染を伴う破壊的な道筋よりもはるかに魅力的な、新しく実現可能な開発アプローチがすでに存在することも明らかです。そこに到達するには、世界が速やかに投資し、行動しなければなりません。
私たちが目の当たりにしている戦争や深刻化する地政学的分断は、すべての国が強い利害を持つ課題について、世界が一丸となって行動する貴重な機会の重要性を浮き彫りにしています。
ネットゼロと自然を中心に据えた変革、投資主導の成長とイノベーション、不安定さに対処しながら人材の力を生かす包摂的なアプローチ、そして共通の目標を促進する国際協力のプロセス――これが21世紀の経済成長の姿となるでしょう。世界の投資の80~90%を占める民間部門が、中心的な役割を担います。民間部門の多くは、急速に規模を拡大しながら、持続可能性、責任ある行動、ネットゼロ排出に取り組んでいます。
持続可能で強靱な経済成長に向けて
私たちは今後の道筋を、ブリーフィングペーパーで示しました。2022年5月にダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会での議論を方向づけるためです。ここでは、新たな経済成長モデルを推進するうえで、投資、イノベーション、政策、金融が中心的な役割を果たすことに焦点を当てます。
1)適切な種類の資本とインフラへの投資
今後10~20年間に実現する資本投資が、人々と地球の未来を形づくります。そうした資本は、これまで以上にクリーンで環境に配慮し、雇用を多く生み、より健全な経済成長を促すことができます。低炭素への転換を進めるには、世界の投資をパンデミック前の水準から、GDP比で年間約2~3%増やす必要があります。この投資の中心は民間部門となりますが、公共投資もこれを補完し、呼び水となる必要があります。
なぜ、これが可能だと考えるのでしょうか。投資比率は潜在水準を大きく下回っており、エネルギー転換によって広大な新市場が生まれ、技術の収益率は高まり続け、世界では投資に充てられる余剰貯蓄が生み出されているからです。投資をコストと誤解すべきではありません。投資は、より効率的でクリーンかつ包摂的な経済成長を促し、民間部門にさらなる機会を生み出すとともに、ほかにも多くの大きな相乗効果をもたらします(表1参照)。

2)イノベーションとシステムの変革
必要とされる根本的な構造変化の多くは、エネルギー、輸送、産業、都市、土地利用という主要システムの変革にあります。いずれも、制度改革、基準や規制、設計、適切な政策を組み合わせる必要があります。幸い、デジタル技術とAIの革新により、こうしたシステムを新たな方法で管理できるようになります。
その可能性は非常に大きなものです。2030年までに、低炭素ソリューションは排出量のほぼ4分の3を占める分野で競争力を持つ可能性があります。現在はその割合が4分の1(主に電力分野)であり、わずか5年前には該当する分野はありませんでした(図1参照)。初期費用が高く、収益が不確実な技術には、公共部門の支援と連携が不可欠です。ミッション・イノベーション、国際太陽光同盟、気候行動プラットフォーム、グラスゴー突破アジェンダなどの取り組みは、その有力な例です。

3)投資とイノベーション、そして公正な移行を促す政策
投資とイノベーションを大きく推進するには、将来の収益への信頼を生み出す、信頼性が高く支援的な政策とガバナンスが必要です。炭素価格の導入は、生産と消費を低炭素の供給源へ効率的に移行させるうえで中心的な役割を果たします。価格付けに加え、石炭や石油の利用を急速に変えるには、受け入れがたいほど急激な価格上昇を避けるため、規制措置が必要です。町や都市の設計も、自転車、歩行者、公共交通、そして共有型の交通を中心とする形に再構築しなければなりません。
経済的損失や生活基盤の変化に直面する人々を支援しながら、新たな経済への移行がもたらす利益と機会を広く分かち合えるよう、公正な移行を支える適切な措置も講じるべきです。
4)経済成長に向けた金融と国際協力
必要な投資とイノベーションの大幅な推進を、適時かつ大規模に実現するには、政策、技術、金融をめぐる国際協力が不可欠です。
国別プラットフォームは、焦点となる場を提供し、新興市場・発展途上経済(EMDEs)への投資拡大を妨げる主な障壁の克服を支援できます。そうした障壁には、政策や制度上の課題、プロジェクト開発能力の不足、大規模な金融への信頼できる経路の欠如などが含まれることがよくあります。
多くの先進国には財政余力や借入能力がある一方、EMDEsは直近の危機に高い債務と限られた資源を抱えて臨みました。追加的な資金需要には、主に税収による国内資源の動員で対応する必要があります。しかし、国際的な金融協力も極めて重要です。
先進国のドナーは、2020年までに1,000億ドルを拠出する目標を達成できませんでしたが、2022年に取り組みを強化し、拠出を実現する機会があります。さらに、必要な資金は財政能力をはるかに超えるため、資金の大部分を民間部門が拠出できるようにする必要があります。
拡大が必要な主要な資金源を6つ特定しました。それぞれが固有の重要な貢献を果たします。
民間部門:量的には最大の資金源ですが、適切な政策、国別プラットフォーム、リスク管理の実施に大きく左右されます。COP26で発足したネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)は、この面で大きな可能性を生み出します。
二国間公的資金:二国間ドナーによる譲許的資金は、公正な移行、適応、自然資本への投資など、国際的な気候変動対策の優先課題にとって重要です。ドナーは二国間の気候資金を2018年の水準から倍増し、2025年までに600億ドルとすべきです。
多国間開発銀行:MDBは、リスクの低減、管理、分担を通じて資本の流れを改善し、資本コストを下げるため、国別プラットフォームや政策の策定を支援する重要な役割を担えます。MDBは、気候関連融資を2018年の水準から2025年までに3倍にする必要があります。株主は拡大を求めるとともに、資本基盤の拡充を含め、リスクを取ることを支えるべきです。
多国間機関:資金規模はMDBより小さいものの、緑の気候基金(GCF)、地球環境ファシリティ(GEF)、適応基金などの機関は、他の資金を動員するうえで価値ある役割を果たせます。
慈善活動:慈善団体は、適応やレジリエンスなど、市場からの支援を得にくい成長活動に資金を提供する能力に優れており、新たな債務を生みません。
自主的炭素市場:排出フットプリントを削減する革新的な方法を実証するプロジェクトへの資金供給を支援することで、自主的炭素市場(VCM)は、ほかの方法では資金を得られないグリーン技術への早期投資も促進できます。これも新たな債務を生みません。
この6つの資金源は互いに補完し合います。投資を促す政策やプラットフォームの中でこれらを組み合わせれば、世界を新たな開発の道筋へと導くことができます。
