中東の典型的な都市部は、驚くほど活気に満ちている。女性たちは小さなグループで通りを歩き、互いに話しながら店先のウィンドウをのぞいている。男性たちは壁にもたれたり、建物の外に座ったり、腕を組んで歩きながら笑い、通行人に声をかけたりしている。会話が穏やかなこともあれば、にぎやかなこともある。けれど、どんなときも、これが私たちにとっての故郷の姿だ。共同体、活動、活力。
どの共同体にも課題はある。よく見れば、すれ違う人々の多くが若者だとわかるだろう。人口の60%が25歳未満であり、彼らが日中に街に出ているのは、文字どおりほかにすることが何もないからだ。彼らは教育課程を修了している。なかには高度な学位を取得した人もいる。25歳未満の若者のうち、驚くべきことに4人に1人が失業している。MENAの一部の国では、 若年層失業率は40%にも達する。
こうした若者たちは、やりがいのある仕事を見つけたいと強く望んでいる。しかし、採用されるために必要なスキルが足りず応募できる仕事が限られていたり、ほかの仕事では採用に有利な個人的なつながりや家族のコネがなかったりするため、極めて競争の激しい労働市場に直面している。CEOとして、私は採用する側からもこの苦境を目にしている。MENA地域の管理職が採用に際して縁故主義的な考え方から脱却するよう促すことは、常に課題となっている。私の会社は、家族や親しい友人の家族を採用するのではなく、適格な若者を見極め、惹きつけ、定着させる方法を管理職に教える研修に投資してきた。しかし、地域全体がそうではない。コネがないことが、聡明で意欲ある若者の就職に不合理な障壁となることがあまりにも多い。
市場にある仕事のうち、企業での仕事は比較的小さな割合を占める。そして率直に言えば、それ自体が問題の大きな部分を占めている。私の母国クウェートでは、労働力人口の90%超が 政府の職に就いている。そのとおりだ。就業者の10人に9人以上が公的部門の職員である。対照的に、米国では労働力人口のわずか16%が公的部門の職に就いている。中国では、政府に直接雇用されている従業員はわずか10%だ。
公的部門の雇用への過度な依存はMENA諸国に大きな負担をかけており、各国政府は歳入のかなりの部分を労働力の賃金や給与に費やしている。同時に、公的部門の雇用が天文学的な水準にあることは、民間部門の成長に悪影響を及ぼすという欠点もあり、人口増加に見合う十分な雇用機会を確保する問題をさらに深刻にしている。
MENAの若者たちは、膨大な富と経済成長が驚くほど高い失業率と並存する市場で、将来を見いだせずに苦しんでいる。何気なく見れば、機会と成長は手を携えて進むはずなのに、なぜ失業問題がこれほど困難なのか理解しがたい。若者たちは、この問題が日ごとに深刻さを増すなか、私たちに解決への支援を求めている。
若者の教育方法を変え、雇用主が求めるスキルをより身につけられるよう準備すべきだとする専門家もいる。学生が労働市場のニーズを満たすために必要な、ソフトスキルと職務に特化した能力の適切な組み合わせを備えるようにすることが、この問題への対処に欠かせないのは確かだ。しかし、若者支援団体も雇用主も、若年層失業の削減にはソフトスキル研修が重要だと指摘する一方で、ソフトスキル研修だけで失業率に実質的な影響を与えられるという確かな証拠はない。
雇用主と、労働市場への参入を控えた学生との連携を強化すべきだという意見もある。学生と雇用主を結びつければ、双方が望むもの、すなわち労働市場における難易度が高くやりがいのある職種に就く適格な候補者を得ることに役立つのは確かだ。しかし、この種のプログラムを拡大するのは難しい。推計によっては、2020年までに MENAの若者1億人超 が労働市場に参入するとされていることを考えれば、なおさらだ。
結局、若者をどれほど労働市場に向けて準備しても、どの職種でも候補者数が求人を大幅に上回ったままなら、その準備は意味をなさない。MENA諸国の継続的な成長と繁栄は、才能ある人材を惹きつけ、定着させる能力に少なからず左右される。雇用機会がより豊富な国や、若者により適した国へ人材を流出させてはならない。ここで、次なる、そしておそらく最も重要なピースが見えてくると私は考えている。
すでに存在する仕事に将来を求めるのではなく、MENA地域の若者が自ら機会を生み出すことを等しく奨励されたらどうだろう。起業家精神を育むこと、つまり意欲と情熱を備えた次世代の男性・女性起業家を生み出すことにも、同じように大きく投資したらどうだろう。若者が自らの成功を自分の手でつかめると教えると同時に、労働者として、ビジネスリーダーとして、そして起業家として成功する方法を教えたらどうだろう。コンピューター技術者のAlan Kayonceが述べたように、「未来を予測する最善の方法は、それを創り出すこと」なのだから。
Junior Achievement Worldwideの一員であるINJAZのような組織を考えてみよう。INJAZは、MENA諸国で事業を展開する地元企業やグローバル企業と連携し、何千人もの地元の学生に実践的な研修、職場体験、メンターシップを提供している。すべては、ビジネスにおける自分のひらめきを見つけ、追求し、収益につなげる方法を教えることが目的だ。起業家になる方法を若者に教えるとともに、ソフトスキル研修とメンターシップを組み合わせることで、INJAZはMENA地域全体で何百万人もの学生が、就業準備を整え、金融リテラシーを身につけた男性・女性起業家となる力を与えてきた。
若年層の失業問題を解決するには、協働が欠かせない。学生が労働市場によりよく備えられるよう教育を見直し、機会も広がるようMENA地域のビジネスを拡大する。そして何より重要なのは、この地域で次世代の雇用創出者となるために必要な実践的スキル、励まし、基盤を学生に提供することだ。
著者:Omar Kutayba Alghanim、Alghanim Industries最高経営責任者、クウェート;世界経済フォーラム中東・北アフリカ担当共同議長;ヤング・グローバル・リーダー同窓生;教育に関するグローバル・アジェンダ・カウンシル
画像:海上輸送訓練センターで受講生に教える教官(左) REUTERS/Stringer
