
大規模なサイバー攻撃のリスクは、影響度と発生可能性の両面で、引き続き平均を上回ると考えられている(「Fast Fact Infographic」を参照)。これは、サイバー攻撃の高度化に加え、ハイパーコネクティビティの進展を反映している。インターネットに接続される物理的なモノが増え、健康や金融に関する情報を含む、より多くの機微な個人データが企業のクラウドに保存されるようになっている。米国だけでも、サイバー犯罪による損失はすでに年間1,000億ドルと推定されている。
「モノのインターネット」(IoT)はイノベーションをもたらす一方、新たなリスクも伴う。大規模で多様なデータソースの分析は画期的な知見につながり得るが、プライバシーに関する期待や、個人データの公正かつ適切な利用について疑問も生じさせる。セキュリティリスクも深刻化する。ハッカーから守るべきデバイスが増えるうえ、障害が起きた場合の損失も大きくなる。車の位置データのハッキングは単なるプライバシー侵害だが、車の制御システムのハッキングは生命を脅かす。現在のインターネットインフラは、こうしたセキュリティ上の懸念を想定して開発されたものではない。
IoTは、さまざまな業界のビジネスモデルやエコシステムを大きく変える可能性が高い。イノベーションをもたらす一方で、複数の業界にわたる多くの大手企業が同時に大幅な変革を迫られる見通しは、労働市場の大規模な混乱や金融市場の変動性など、潜在的なシステミックリスクを高める。また、重大な公共安全上の失敗によって、IoTの真の普及が妨げられるおそれもある。
本報告書で取り上げた事例に共通して見られるグローバルリスクの重要な特徴は、相互につながっていることだ。リスクを個別に捉えることはできないと強調しておきたい。リスク間のフィードバックループに加え、リスクが基底にあるトレンドによっても促進されるという事実が、その複雑性を高め、個々のリスクの制御をより困難にしている。ここ数年、伝播の速度と相互連関の強さは増してきた。リスクへの対処の複雑さ、その発生可能性、潜在的な影響を踏まえると、グローバル、地域、国家、地方の各レベルで備えが問われる。
インターネットのガバナンス――統一性と強靭性を備えたネットワークを維持する仕組みの必要性
イノベーションの速さと、インターネットの高度に分散した性質を踏まえると、グローバルなインターネットガバナンスと協力には新たなアプローチが必要だ。インターネットに依存する人が増えるにつれ、そのガバナンスの重要性も高まっている。課題は二種類ある。インターネットを構成するすべてのインフラやデバイスが相互に通信できるようにする技術的な課題と、サイバー犯罪、ネットワーク中立性、プライバシー、表現の自由に対処する包括的な課題だ。
インターネットの技術インフラに関する責任は、Internet Engineering Task Force(IETF)やWorld Wide Web Consortium(W3C)、地域インターネットレジストリ(RIR)、ルートサーバーの運用者、Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)など、複数の組織に分散している。各組織が提案する解決策――政策モデル、標準、仕様、ベストプラクティス――は、自主的な採用や、個別に設けられる慣行、規制、指令、契約、その他の合意を通じて広がっていく。
こうした包括的な課題の解決策を策定・実施するための仕組みは存在しない。そのため各国政府は、自国民のデータやプライバシーに関する懸念に対応する国内措置を制定するよう圧力を感じている。インフラの「ローカライゼーション」を強制する法律は、課題に対処するグローバルな仕組みを定めるために協力するより、短期的には容易な解決策かもしれない。しかし「データ・ナショナリズム」は、インターネットがイノベーションを促し、社会的・経済的価値を創出する基盤となるネットワーク効果を損なうおそれがある。
議論を前進させ、解決策の可能性を見いだし、開かれた、強靭で包摂的なインターネットガバナンスに貢献するため、世界経済フォーラムは複数年にわたる戦略的イニシアチブに乗り出す。官民両セクターのリーダーに、市民社会のリーダーや技術コミュニティを加えて結集し、公平な立場からハイレベルの対話を通じてこれらの課題に取り組む。この取り組みは、Internet Governance Forumや、草の根主導・政府主導のさまざまな取り組みで行われている専門家レベルの議論を補完する。

本記事は、 Zurichとの協力のもと掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Steve Wilsonは、Zurich Insurance CompanyのChief Risk Officer General Insuranceです。
画像:ワルシャワのオフィスで、ノートパソコンを持つ男性にバイナリーコードを投影した様子を描いたイラスト。REUTERS/Kacper Pempel
