中国とブラジルはこのほど、気候変動対策に関する共同声明に署名した。
専門家3人が、これによって持続可能なサプライチェーンでの協力をどう促進できるかを概説する。
両国間のより環境に配慮した貿易関係への道筋を、4つの重要分野が示している。
今年4月、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領が中国を国賓訪問し、数々の二国間協力協定が締結された。その中には、中国・ブラジル戦略的パートナーシップのさらなる強化に関する共同コミュニケおよび気候変動対策に関するブラジル・中国共同声明が含まれる。グローバルサウスの主要2か国間で協力が深まることは、環境保護、気候変動への対応、低炭素経済といった新たな分野における現在の地政学的関係の改善にとって、戦略的に大きな意義を持つ。
中国とブラジルは、それぞれの違法な輸出入を禁じる法律を効果的に執行し、世界の違法伐採と森林破壊の撲滅を共同で支援することを約束した。
これまで中国は、国内の森林保護と持続可能な管理を積極的に推進し、着実な成果を上げてきた。今後、中国とブラジルは、持続可能な農産物貿易システムとグリーン・バリューチェーンを構築することで、ブラジルの熱帯雨林の保護に重要な相乗効果をもたらすだろう。
3人の専門家が、最近のブラジル・中国協力の意味と展望を掘り下げる。
世界のガバナンスの構図を変える
楽観的な兆しを示し、二国間交流を通じて多国間協力を促進することを目指す。
王毅、中国科学院科技戦略諮詢研究院前副院長
中国・ブラジル気候変動共同声明の署名は、前向きな希望の光となった。気候と自然に関する目標を経済の移行と発展に結び付けようとするブラジルの強い意志を示したからだ。さらに、この二国間合意は、より大規模な多国間協力につながる可能性がある。パリ協定に代表される多くの国際的な多国間プロセスは、二国間合意を出発点としている。
ブラジルと中国は、グローバルサウス諸国間の協力を共同で推進するうえで、重要な役割を担っている。
フェルナンド・サンパイオ、ブラジル牛肉輸出業者協会会長
(ABIEC)
ブラジルと中国は、グローバル・ガバナンスにおいて共通の未来を持つ。これまで、貿易や森林破壊、議題の設定や規制の策定を問わず、ゲームのルールは主に先進国が主導してきた。この点で、中国とブラジルを筆頭とする途上国、特にBRICS諸国は、協力して新たな構図を描くことができる。
厳格な基準を設けるのではなく、中国とブラジルは、より協調的なウィンウィンの手法を模索している。さまざまな関係者が優れた実践例や教訓を共有し、グリーン・バリューチェーン構築に向けた最善の道筋を共に設計できる手法だ。グローバル・ガバナンスという協奏の場で、私たちの声を明確に響かせ、大きな影響を生み出す必要がある。
中国とブラジルがグローバルな共通のガバナンスに向けて共同で取り組むことは、他国、特に途上国に知見と経験をもたらすだろう。
曹德栄、中国食品土畜進出口商会会長
(CFNA)
第一に、グリーン移行における協力を強化すれば、中国とブラジルは途上国の中で気候変動対策を主導する存在となる。集団的な取り組みを基盤とし、一方的な行動に反対し、グリーン貿易障壁を抑制する気候協力モデルを構築できる可能性がある。
さらに、BRICS諸国の農業開発は世界に広範な影響を及ぼす。その生産額は世界の農業生産総額の50%超を占め、人口の42%の生計に直接関わっている。こうした背景から、中国とブラジルの農業のグリーン移行は、グリーン・バリューチェーンの構築に貢献する。また、より持続可能で安定した世界の農産物貿易ネットワークを実現することにもつながる。
気候変動に対して、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っているのか?
より環境に配慮した貿易関係を築くには
中国は2009年以降、14年連続でブラジル最大の貿易相手国となっている。2022年、両国間の貿易額は1,714億9,000万ドルに達し、前年比4.9%増となった。中国は間違いなく、ブラジル産の大豆、牛肉、鶏肉、豚肉などの農産物の最大の輸入国である。中国の税関統計によると、2022年に中国が輸入した大豆は9,108万トンで、そのうち5,440万トンがブラジル産となり、総輸入量の約60%を占めた。また、牛肉は269万トンが輸入され、そのうちブラジル産は111万トンで、総量の41%を占めた。

持続可能な貿易システムとグリーン・サプライチェーンを構築するため、王毅、フェルナンド・サンパイオ、曹德栄の3氏は、次の4つの道筋を示した。
1. より良い交流の仕組みを確立する
情報が円滑に流れるようにするには、より良い二国間交流の仕組みが必要だ。公共部門にとっては、制度化された協力の仕組みへの道筋をつくり、政府間の意思疎通と持続可能な協力戦略の策定を促す橋渡しをすることを意味する。企業にとっては、共通の基準一式について合意し、それを指針として、企業間および国境を越えた情報共有の拡大を導くことが求められる。
公共部門と民間部門のこうした連携はすでに進み、成果も現れている。例えば、ビーフ・アライアンスは、トロピカル・フォレスト・アライアンスの支援のもと、食品業界の主要企業と市民社会団体が参加し、違法な森林破壊と土地転換を制限するブラジル産牛肉の輸出基準を定めている。この取り組みは、世界最大級の牛肉貿易関係の一つにシステム全体の変化をもたらし、世界の他の大規模経済にとってもモデルとなる可能性がある。
2. 自然を対象とする革新的な資金調達
資金不足を緩和するため、自然への投資の仕組みを整備すべきだ。多国間開発銀行(MDB)は、自然関連資金を主導するうえで、より重要な役割を果たせる。2021年には、世界に総額817億ドルの気候資金を配分した。だからこそ、MDBは気候と生物多様性への資金供給拡大に全面的に関与すべきだ。
しかし、そこで終わりではない。他のグリーンファイナンスの手段も活用すべきだ。例えば、中国の炭素市場は、ブラジルの違法な森林破壊を食い止める可能性を秘めている。中国企業がブラジルの森林由来のカーボンクレジットを購入するよう促せば、環境の悪化により効果的に対処し、違法な森林破壊の抑制に新たな一歩を踏み出せる。
3. 持続可能な消費需要を喚起する
市場の力を引き出すには、消費者の需要が原動力となるべきだ。これは連鎖反応を生む。環境に配慮した製品を選ぶことは、環境への負荷を直接軽減するだけでなく、企業が事業運営に持続可能な慣行を取り入れるよう促す。
過去5年間で、世界全体で持続可能な製品のオンライン検索が71%増加したが、持続可能性をうたう製品には割増価格が付く。消費者は持続可能な選択の重要性を理解していても、予算の制約から、より安価な従来型製品を購入することが少なくない。したがって、持続可能な製品をより手頃な価格にすることは、依然として重要な課題だ。全体像を完成させるために、まだはめ込む必要があるパズルのピースのようなものだ。
4. 気候と自然の相乗効果を促す
気候変動対策をめぐる議論の中心に、生物多様性を据える時が来ている。人新世の二つの課題である気候変動と生物多様性は、切り離せないほど密接に結び付いている。IPBESとIPCCによると、陸域の正味炭素吸収源の82%は森林に由来する。森林は世界の生物多様性にとって重要な生息地だ。同様に、適切に管理された生物多様性は、気候変動への適応に不可欠な役割を果たす。
2025年にブラジルがアマゾン地域の都市ベレンで国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)を開催するにあたり、気候目標と生物多様性目標の連携が強化され、気候・生物多様性・経済・社会の接点における解決策が生まれることを期待する。
