気候変動は、ビジネスに目に見える形で混乱をもたらしています。海面上昇や極端な気象現象の頻度増加といった、前例のない物理的影響を引き起こしています。同時に、温暖化を抑制し、それに伴う物理的影響を低減しようとする政策や技術の変化も、ビジネスに混乱を生じさせる可能性があります。あらゆる形態の混乱と同様に、気候変動は多様な形でビジネスにリスクと機会を生み出しており、今後もその状況は続くでしょう。
気候変動とビジネスとのこの破壊的な関係は、すでに注目を集めています。これは、パリ協定、気候関連法制の出現、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言、そして最近では、物理的影響に関する認識の高まりと
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「地球温暖化1.5°Cに関する特別報告書」で詳述されたリスクによって促されてきました。
こうした注目を受けて、投資家、規制当局、その他のステークホルダーは企業に対し、気候変動のリスクと機会に対処するための統合的かつ戦略的なアプローチを示すよう求めています。
気候リスクと機会が適切に対処されるようにするうえで重要な要素は、取締役会が、監督する企業の長期的な健全性を守る重要な責務を負っていることです。しかしながら、気候リスクと機会を効果的に管理するためには、取締役会が組織の長期的なレジリエンスのために最善の意思決定を行えるよう、適切なツールを備えている必要があります。
本稿の目的は、取締役会が気候リスクと機会の舵取りを行う上で役立つツールを提案することです。ガバナンス原則は、取締役の気候に関する認識を高め、気候課題を取締役会の構造とプロセスに組み込み、気候変動が企業にもたらすリスクと機会への対応力を向上させることを目的として設計されています。より効果的な気候ガバナンスを可能にする羅針盤を提供することで、本研究は、フォーラムの「責任ある柔軟なリーダーシップのための協定(Compact)」に貢献するとともに、企業において最も影響力のある守り手である取締役会に対し、その取締役会による、また取締役会のための、目的意識を持ったスチュワードシップ(受託者責任)への緊急の行動を呼びかけることを目指しています。