イングランド銀行の透明性向上計画を、経済学者はどう見ているのか?

イングランド銀行の透明性向上計画を、経済学者はどう見ているのか?
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イングランド銀行における透明性の慣行と手続きを検証したウォーシュ・レビュー(Warsh, 2014)を受け、同行は金融政策委員会(MPC)会合の構成を変更し、政策決定、内容を拡充した会議議事録、そして(四半期に一度)インフレーション・レポートを同時に公表する計画だ(イングランド銀行、2014年)。

この提案には批判的な反応もある(Goodhart 2015、特に Eichengreen and Geraats 2015を参照)。英国を拠点とする有力なマクロ経済学者を対象とした最新の月例調査で、マクロ経済学センターは、MPC関連文書を同時に公表する案とMPCの手続き変更について、彼らの見解を尋ねた。

背景

2014年12月に同行の回答とともに公表されたウォーシュ・レビューは、透明性が次の4つの戦略的な政策目標をどのように支え得るかを説明している。「健全な政策決定を行うこと、判断を効果的に伝えること、行動への説明責任を確保すること、そして公正かつ正確な歴史的記録を作成すること」。1

ウォーシュ・レビューの提言の一つは、次のとおりである。「同行は会合終了後、実行可能な限り速やかに、政策決定とその根拠を簡潔にまとめた文書を公表すべきである。この要約にはMPCの合意内容を盛り込むべきである。また、政策要約には金融政策委員会の各委員の投票内容を明記すべきである。」2

同行はこの提言に対し、次のように回答した。「ウォーシュ・レビューは、MPCが各政策会合の後、実行可能な限り速やかに詳細な政策声明を公表するよう提言している。MPCは、この措置によって情報発信の効果が高まり、説明責任も強化されることに同意する。金融政策委員会は、この方向でさらに進める余地があると考えている。そこで本日、政策決定と同時に、政策会合の議事録と(該当する月には)インフレーション・レポートを公表する意向を発表する。」3 この変更を実現するため、同行はMPC会合の構成を、連続する2日間から、7日間に分散した3回の会合へと変更することを提案している。

同行は、ウォーシュ・レビューに盛り込まれた他の提案もいくつか受け入れた。この調査は情報公表の時期とMPC会合の構成変更だけに焦点を当てているが、受け入れられた他の提案のうち2つは、調査の質問に関係する。第一に、政策会合の回数を年12回から8回に減らす。4 第二に、公表されるMPC議事録の内容をある程度拡充し、MPC会合初日の「より熟議的な」議論をより正確に反映させる。現行の初日分の議事録は、経済・金融情勢の事実報告に限られている。ウォーシュ・レビューは、最近の経済動向を説明するにあたり、議事録で議論の「核心」をより的確に捉え、「相反する見方に対して金融政策委員会の委員がどの程度の重みを置いたか」をよりよく伝えるよう提言している。

政策発表に何を添えるべきか?

同行の提案では、MPCは各発表日に詳細な政策声明とその根拠を公表する。5 これに、内容を拡充したMPC会合議事録と(該当する月には)インフレーション・レポートの同時公表が伴う。現行のように、それぞれ2週間後、1週間後に公表する方式ではない。考えられる利点の一つは、同時公表により、特定の政策決定がなぜ行われたのかを理解しやすくなることだ。カーニー総裁の言葉を借りれば、「この仕組みによって金融政策の情報発信がより効果的になり、私たちが送る政策シグナルを可能な限り明確にできると考えています」。6 さらに、新たな日程では、議事録やインフレーション・レポートにどのような新情報が含まれるかを市場が推測する必要がなくなる。チャールズ・グッドハート(2015年)も関連する議論を提示し、金融政策に関するニュースが発表される機会を減らすことが望ましい場合があると論じている。

ただし、一度にこれほど多くの情報を公表すると、理解するのが難しく、市場参加者を混乱させるおそれがある。そうであれば、市場の変動が大きくなる可能性もある。また、公的情報の利点に関する研究は、情報量は多ければ常によいわけではないことを明らかにしている。7 ただし、ここで問われているのは公的情報の量を増やすか減らすかではなく、情報をどのような速さで一般に公表するかである。実際、公表時期の変更は Eichengreen and Geraats(2015年)および Goodhart(2015年)でも論じられており、今回の提案によって政策形成がより効果的になるのかが問われている。

最初の質問は、情報を同時に公表するという提案そのものに焦点を当てている。提案されている情報公表計画では、MPCは政策決定と同時に、政策会合の議事録と(該当する月には)インフレーション・レポートを公表する。この質問への回答にあたり、情報の同時公表にはMPCの日程変更が必要になるという点は考慮しないよう、パネル委員に求めた。

Q1:政策決定、MPC会合の内容を拡充した議事録(投票記録を含む)、および(該当する月には)インフレーション・レポートを同時に公表することで、金融政策の今後の姿勢を推測しやすくなるという意見に賛成ですか?

回答の概要

賛成も反対もしていない回答者と、意見を示さなかった1人を除くと、パネル委員の65%が、MPCの手続きに関するすべての文書を同時に公表すれば、金融政策の今後の姿勢を推測しやすくなるとの意見に賛成または強く賛成している。パネル委員の自己評価による確信度で数値を加重すると、賛成する回答者の割合は71%に上昇する。反対する委員の中に、強く反対する人はいない。

同時公表を支持するパネル委員の中には、MPCの決定発表から関連文書の公表までに遅れがあると、その間、決定を解釈しにくくなり、市場が決定の背景にある理由を推測せざるを得ない期間が生じると論じる人がいる。

クリストファー・ピサリデス卿(LSE)は、同時公表によって「同行がさらに数日間、何かを『隠す』ことがなくなり、その内容をめぐる憶測を招く事態を避けられる」と指摘する。ワドワニ・アセット・マネジメントのスシル・ワドワニ氏(元MPC委員)は、「インフレーション・レポートの記者会見が誤解を招いた事例が何度かありました。レポートを説明する総裁が、委員会内の意見の比重を正確に反映できていなかったためです。議事録が同時に公表されれば、この問題の解決に役立つでしょう」と述べている。

クレディ・スイスのデイム・ケイト・バーカー氏(元MPC委員)は、次のように述べている。「

これまでは、インフレーション・レポートと議事録について、市場がそれぞれ異なる解釈をすることがよくありました。これでそうした事態は避けられます。」ドイツ銀行のジョージ・バックリー氏も関連する議論を示し、「議事録が公表されていないため、1週間前の政策決定に関する委員会の議論や投票について、インフレーション・レポートの記者会見で総裁が現在、詳細に話せないというのは時代錯誤に思えます」と述べている。

情報の同時公表を支持しないパネル委員の中には、情報が過剰に公表されることで、MPCの政策や経済状況を効果的に理解しにくくなる可能性を懸念する人が複数いる。前述のとおり、研究にもこの懸念を裏づける根拠がある。8

オックスフォード大学のマーティン・エリソン氏は、「市場が情報を処理する能力の効率性を最も脅かすものは、『美人投票』の考え方だ」と述べている。この考え方はケインズが最初に提示し、Morris and Shin(2002年)が発展させたものだ。エリソン氏は、「これがイングランド銀行にとって本当に恒常的な問題なのか」疑問を抱いている。

一方、情報が過剰に公表されることを懸念するパネル委員もいる。ヘリオット・ワット大学のデイヴィッド・コブハム氏は、「情報が氾濫すれば、透明性があるように見せかけながら、実際には観察者を情報の中に埋没させてしまう危険が現実にあります」と述べる。一方、グラスゴー大学のリチャード・デニス氏は、「情報の増加によって当初は学習期間が必要になるかもしれませんが、市場参加者は、どの文書やそのどの部分が最も重要かをすぐに見極めるでしょう」と論じている。

国立経済社会研究所(NIESR)のアンガス・アームストロング氏は、提案された計画の欠点として、「発表と内容を拡充した議事録がインフレーション・レポートを覆い隠し、その結果、分析や議論(および同行へのフィードバック)が減る可能性がある」と論じている。ケント大学のジャジット・チャダ氏は、「包括的な予測であるインフレーション・レポートは、それ自体が精査に値する取り組みであり、政策決定における長期的要因を検討する機会とも考えられる」と強調する。

最後に、パネル委員の中には、同時公表への変更はさほど重要ではないと主張する人も少なくない。ロイヤル・ホロウェイ大学のアンドリュー・マウントフォード氏は、「政策決定の根拠や、政策担当者の判断の背後にある情報・データを、国民と市場が知ることは重要です。そうすることで、誤った推論や分析に異議を唱え、修正できるうえ、将来の決定も予測しやすくなるはずです。長い遅れがあれば透明性は損なわれますが、数週間程度なら問題にはならないでしょう。次の金利決定までには、依然として十分な時間があります」と述べている。

パネル委員の中には、透明性を高めるうえでより効果的な具体策を提案する人もいる。たとえばサイモン・レン=ルイス氏は、「同行が透明性を本気で高めたいなら、米連邦準備制度理事会(FRB)が現在行っているように、金利の予測を作成して公表すべきです」と述べている。

イングランド銀行が提案するMPCの手続き

政策決定、議事録、および(該当する月には)インフレーション・レポートを同時に公表できるよう、同行はMPC会合の手続きを変更することを提案している。最初の質問が情報の同時公表そのものの望ましさだけに焦点を当てているのに対し、2つ目の質問は、提案されている新たなMPC会合日程を伴う場合の同時公表が望ましいかどうかに焦点を当てている。

現在、MPCは毎月のサイクルで会合を開く。このサイクルは金曜日のMPC事前会合から始まり、そこで同行の職員がMPCに説明を行う。その翌週の水曜日と木曜日には、非公開会合が2日連続で開かれる。非公開会合の初日は「より熟議的」、2日目は「より説明的で、意思決定を行う」日とされている。MPCの決定は会合終了後まもなく、木曜日の正午に発表される。

内容を拡充した議事録の作成と、その情報をインフレーション・レポートに反映する作業には時間がかかる。そのため、MPCの熟議や議論から発表までに間隔を置く必要がある。具体的に、同行はMPCの手続き日程を次のように変更することを提案している。第一に、現在は発表前日に行われているMPC会合の熟議部分を、政策決定と関連情報を公表する木曜日の7日前に行う。第二に、現在は発表当日の朝に行われている説明・意思決定部分を2回の会合に分ける。主要な政策討議は発表日の3日前に行い、政策投票そのものは発表前日の夜に実施する。下の表1は、現行と提案後の日程の概要を示している。

表1.現行のMPC手続きと新たな手続きの比較

新たな日程では、MPC会合は政策発表日のちょうど1週間前に始まる。現行の日程では発表前日に始まる。同行は、この変更により関連文書一式を同時に公表できると主張している。一方で、いくつかの不利益も考えられる。MPC会合の構成を連続する2日間から、7日間に分散した3回の会合に変えると、議論(および議事録)の一貫性に影響する可能性がある。MPCの手続きの各段階をより長い期間に分散させれば、実際の情報漏えいや、漏えいがあったとの認識が生じるリスクが高まり、議論を時代遅れにするようなニュースショックが起こる余地も生じる。ただし、そうした事態は頻繁には起こらないとも考えられる。さらに、実際の決定は発表前日の夜に行われるため、原則としてMPC委員は最新の情報に基づいて投票できる。

Q2:政策決定、MPC議事録、および(四半期に一度)インフレーション・レポートを同時に公表するという同行の提案は、MPC会合の構成を連続する2日間から、7日間に分散して開催する手続きへ変更する根拠として十分だという意見に賛成ですか?

回答の概要

2つ目の質問については、パネル委員の意見がより分かれている。賛成も反対もしていない委員と、意見を示さなかった委員1人を除くと、回答者の56%が、文書を同時に提供することで得られる可能性のある利点は、MPCの日程変更を正当化するという意見に反対している。賛成する回答者は44%で、その中に強く賛成する人はいない。自己評価による確信度で加重すると、提案された変更に反対する回答者の割合はわずかに下がって53%となる。

パネル委員は、情報の同時公表を実現するにはMPCの日程をある程度変更せざるを得ないと認めている。回答者のかなりの数が、提案された変更には不利益が伴うと指摘する。これは、情報の同時公表自体に利点があると考える回答者にも、そう考えない回答者にも当てはまる。

前者の中には、新たな日程の不利益があまりに大きいため、もはや文書の同時公表を支持しないパネル委員もいる。具体的には、最初の意見に賛成または強く賛成し、2つ目の意見には反対または強く反対する委員が5人いる。また、最初の意見に賛成し、2つ目の意見には賛成も反対もしない委員が3人いる。

新たな日程には利点もあると論じる回答者もいる。クレディ・スイスのデイム・ケイト・バーカー氏(元MPC委員)は、従来の日程について、「水曜日の議論を振り返ってから投票するまでの時間が、望んでいたより短いことがありました」と述べている。ドイツ銀行のジョージ・バックリー氏は、「会合を1週間にわたって行えば、政策担当者の意識をより広い論点に向け、特定の日の気分に左右された性急な決定を避けるのに役立つ可能性があります。年間の政策会合を減らすことにも、同じ効果があるでしょう」と提案する。

複数の回答者が挙げる不利益の一つは、情報漏えいの可能性だ。ワドワニ・アセット・マネジメントのスシル・ワドワニ氏(元MPC委員)は、「漏えいのリスクを過小評価すべきではありません。7日間にわたり、かなり多くの人が決定の見通しを知ることになります。それは非常に危険です。決定の見通しを知る人には首相や財務相(およびその特別顧問)も含まれることを忘れてはなりません」と述べている。

ウォーリック大学のマイケル・マクマホン氏は、「1993年にFRBの透明性向上を求める動きが強まったのは、金利決定が漏えいした時期の後だった」と指摘する。9 一方、ドイツ銀行のジョージ・バックリー氏は、「漏えいへの懸念に伴う不利益は、正当なものなのか疑問です。インフレーション・レポート自体、同行内のより大規模な職員(MPCより多い人数)がかなりの時間をかけてまとめていますが、それが漏えいしたことはありません」と述べている。

パネル委員が挙げるもう一つの不利益は、MPCの手続き中に得られた新情報が決定に十分反映されない可能性だ。LSEのジャンルカ・ベニーニョ氏は、「MPC会合を7日間に分散させるのはかなり長いように思えます。その間に新情報が入れば、議事録の内容が古くなる可能性があります」と述べている。対照的に、LSEのワウター・デン・ハーン氏は、「MPCの手続きが行われる週に、まったく新しく重要なことが起きる可能性は、それほど高くありません」と考えている。

再び、複数のパネル委員が変更の重要性に疑問を呈している。クレディ・スイスのデイム・ケイト・バーカー氏(元MPC委員)は、「投票と同時にこれらの文書を公表するのは、かなり意欲的な試みです。翌週に公表しても問題はなかったと思います」と述べる。バークベック・カレッジのジョン・ドリフィル氏は、「金融市場は追加情報によって利益が増えると考え、この変更を歓迎するかもしれません。一般の人々や『実体経済』には何の違いもわからないでしょう」と述べている。

この記事は、次の団体との協力により掲載されています。 VoxEU掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持していることを意味しません。

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著者:アンガス・アームストロングは、国立経済社会研究所のマクロ経済研究部門長。
フランチェスコ・カゼッリは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済学教授。ジャジット・チャダは、ケント大学の経済学教授。ワウター・デン・ハーンは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済学教授およびマクロ経済学センター共同所長であり、CEPR研究員。

画像:ロンドンのイングランド銀行向かいにあるアーチの下を歩く歩行者。ロイター/スザンヌ・プランケット(英国 – タグ:ビジネス、犯罪、法律)– RTR4S62H

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