• AIは、気候変動と闘うための「スイス・アーミーナイフ」(機能的なマルチツール)となる可能性を秘めています。
  • AIは、あらゆる機関の排出量を大規模に測定して削減するほか、気候変動に対応する革新的なビジネスモデルを実現。また、気候災害に対する社会のレジリエンスを高めることができます。
  • AIの強みを効果的に活用し、大規模な排出削減を妨げている最も複雑な課題に取り組むことができるかどうかは、グローバルビジネスのリーダーたちにかかっています。

数週間前、何百人もの主要な国際的気候科学者によって、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書が作成されました。その報告書は、アントニオ・グテーレス国連事務総長の言葉を借りると、人間が引き起こす気候危機は「遅らせる余裕も言い訳をする暇もない」ほど進行しているということを、明らかにしました。

さらに、本報告書が発表された週、中国や中欧での大洪水、地中海沿岸での猛烈な森林火災、米国西部での未曾有の干ばつなど、これまで「安全」とされてきた場所で発生した様々な気候災害が世界のニュースの中心となっていました。

気候変動に対して、緊急対応の必要性を認め、科学的根拠に基づいて取り組むことを誓う企業が世界中で急増しています。しかし、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)のデータを分析し、設定された目標に対する進捗状況を包括的に測定する企業のうち、実際に排出削減量を報告した企業はわずか7%にすぎないことが判明しました。

気候変動に対するグローバルな闘いを加速させるためには、可能な限りの解決策を講じ、大胆かつ迅速に行動しなければなりません。

気候変動対策のためのスイス・アーミーナイフ(機能的なマルチツール)

近年のAI(人工知能)の進歩は、画期的な技術革新をもたらしました。今こそ、この進歩を受け入れ、AIの力を最大限に活用して、気候変動との闘いを加速させる時です。このブログでは、気候変動対策におけるAIの有望な活用法を三つ取り上げます。

1)各機関の規模に応じた排出量の測定と削減

2)気候変動対応に貢献する革新的なビジネスモデルの実現

3)気候災害に対する社会のレジリエンス(強靭性)の向上

その意味について、具体的に見てみましょう。

AIはあらゆる機関の排出量を測定し、削減することができる

企業が気候への影響を把握するためには、ベースラインを正確に測定、目標を設定、行動するという三つのステップを踏む必要があります。

往々にして、企業は最初のステップで挫折してしまいます。CDPの最新データによると、自社の排出量を公開している企業のうち、関連するすべてのカテゴリー(サプライチェーンの排出量など)において自社の影響をつぶさに測定している企業は、わずか31%しかありません。その結果、企業は意義のある目標と成功につながるアクションプランに基づいて、前進することができなくなっています。

革新的なAIを活用した解決策は、企業が同じツールで三つのステップに取り組み、組織全体が気候変動への影響に関して最善の判断を下すことを可能にします。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のCO2 AI のような包括的な解決策は、排出量を30%削減させる効果があります。AIを活用した解決策は、従来の手作業によるアプローチとは明らかに異なるものであり、迅速かつ信頼性の高い、粒度の高いベースラインの作成が可能となることで、より高い精度で全排出量を把握することができます。

さらに、AIを活用した強力な予測とシミュレーションにより、リーダーたちは排出量を大規模に削減するための正しい選択を行い、よりインパクトのある形で気候変動対策を推進することができます。ある大手小売企業のケースでは、BCGのCO2 AIにより作成されたインサイトを活用することで、ネットゼロ目標達成に対する確信が高まり、ネットゼロへのタイムラインを10年早めることができました。

AIを活用した意思決定が大規模な排出量削減を可能にするもう一つの好事例は、グーグルがエレクトリシティマップと提携したことです。エレクトリシティマップは、世界中の電力がどれだけクリーンであるかをリアルタイムに示し、国別に過去、現在、そして予測される電力のカーボンフットプリントデータを提供するAIを活用したプラットフォームです。グーグルはこのエレクトリシティマップを活用することで、グリッド内の低炭素電力が供給される時間帯にコンピューティングタスクを合わせることに成功し、その結果、電力消費による二酸化炭素換算排出量(CO2e)を削減しています。

最後に、AIによるプロセスパラメータの最適化は、温室効果ガスの排出量とコストの両方を削減するための潜在的可能性を見出すのに役立ちます。世界的な鉄鋼会社の場合、最先端のAIモデルを採用して炭素集約型の産業オペレーションを効率化することで、二酸化炭素換算排出量の10%およびコストの1%を削減することができます。

AIが気候変動対応に貢献する革新的なビジネスモデルを可能にする

過去数年間、世界の研究は、革新的な炭素削減技術の開発において大きな進歩を遂げてきました。その中には、i)低炭素燃料、ii)人工的なカーボンキャプチャー(二酸化炭素回収)と貯蔵、iii)農業による炭素隔離などがあります。

AIによってこの技術が進み、より大きなインパクトを与え得るかを探るために、農業による炭素隔離について詳しく見てみましょう。

まず、AIに基づく洗練されたアルゴリズムは、既存の炭素隔離行動データから学習し、膨大な農業、気象、地質データベースを分析します。このコスト効率の非常に高いスケーラブルな方法で、最適な土地や土壌の特定を容易にします。

二つ目は、AIによって土壌中の大規模な炭素測定を低コストで行うことができます。これまでこの測定には高いコストがかかっていたことを考えると、農業による炭素隔離を支える金融モデルの実現において、AIは重要なファクターとなります。

三つ目は、AIと衛星画像の併用がもたらす可能性です。例えば、後に炭素証書を販売することを期待して、播種方法の変更に投資している人々に対して、農家がそのプロセスを遵守することを可能にします。このように、農業による炭素隔離の規模を拡大し、世界中に展開するために、AIは非常に重要な役割を果たすことになります。

AIは気候災害に対する社会のレジリエンスを高めることができる

今夏、各地の大災害が証明したように、社会を気候変動に対応させることは大きな課題です。繰り返しになりますが、AIは、多岐にわたる多様性に富む膨大なデータの管理し、生命を救うための考察を行い、レジリエンスを向上させることができます。

例えば、グーグルの「ハイドロネット」ソリューション は、生命に関わるような河川の洪水が発生した場合に、これまでにないリードタイムと精度で、最も重要な脆弱性を特定することができます。このように、インドとバングラデシュの洪水予測の改善に活用されており、危険にさらされている2億5千万人以上の人々を対象としています。

同様に、AIを活用した解決策は、危機の緩和策や有事の際の計画を積極的に立案し、必要に応じて効果的に支援を展開することができます。例えば、BCGのGAMMAチームは、オーストラリアの山火事対策にAIを活用しました。AIは、脆弱な部分を正確に特定し、様々な対策のインパクトを確実に評価しました。

世界の気候変動対応を加速させるAIの可能性は画期的

総合的に見て、AIは世界の気候変動への対応を飛躍的に加速させる可能性を秘めた、他に類を見ない強力なツールです。グローバル企業のリーダーたちは、AIの強みを効果的に活用し、大規模な排出削減を妨げる最も複雑な課題に取り組むことができるようになりました。

私たちBCGは、この新しい分野の発展に積極的に貢献できることを誇りに思うとともに、私たちの強みと能力を最大限に活用して、今後も顧客のネットゼロへのエンドツーエンドの取り組みを支援していきたいと考えています。